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ニュース 医療介護最新ニュース 2021/03/22

「身近な隣人としての外国人支援」武田裕子先生

介護のみらいラボ編集部コメント

近隣諸国からの外国人介護職・看護師も以前より増え、コロナ禍が落ち着き次第さらに介護現場で大きな戦力となっていくでしょう。しかし、日本国内には制度だけではない外国人に対する壁ともいえる状況が散見されます。
知らない土地に行けば、言葉が通じても心細いもの。言葉が不便ならなおさらです。
職場以外でも今後増えるはずの日本在住外国人のために、やさしい日本語とはどういうものか理解し、話がよくわからなそうな場合はゆっくり単語を言い換えてみるなど、「もし自分だったらこうされたい」を探してみるのもいいかもしれません。
外国人の受け入れ態勢を整えるのは、これからの社会のための安全網ともいえるでしょう。

2年前の3月、イチローが引退を表明しました。会見のなかで「アメリカでは僕は外国人ですから」という言葉があり、私はボストンで臨床研修を開始した時のことを思い出しました。ある時、検査室からかかってきた電話を受けた先輩医師が、「心エコーを依頼したDr.クワックを探している」と周囲に声を掛けました。皆、困惑した表情なので尋ねると、quackという単語に「やぶ医者」という意味があるとのこと。それは自分のことに違いないと即座に思いました。言葉のハンディは自信を失わせます。"クワック"という名前の医師は実際いたと後で分かったのですが、言葉や文化の異なる環境にはとても鍛えられました。

以来、在住外国人がいたら力になりたいと思いながら過ごしています。医療者に「やさしい日本語」を広める取組もその一つです。外国人診療で、英語よりも通じる確率の高い「やさしい日本語」の動画教材を仲間と作成し、YouTubeで無料公開しています(https://www.youtube.com/playlist?list=PLFwRLsRI_gpDgJMNrFIbkZJ13xU-DeWA8)。

その仲間の一人が活動するNPO法人CINGAでは「命を守ることばプロジェクト」を行っています(https://www.cinga.or.jp/1026/)。ここでは、①コロナ陽性になった時の多言語フローチャート(感染判明後の流れを多言語で説明)、②コロナの病状を伝える日本語動画(症状を日本語で表現する教材)、③大事なお知らせ周知プロジェクト(外国人が自治体などから届く封筒を開けずに捨てないように表書きする言葉を多言語で例示、医療機関でも役立つ)という取組です。①と②を周りの外国人に、③を必要とする方にお知らせください。

さらに、外国人の困りごとには地域の「外国人ワンストップ相談センター」が頼りになります。東京都では、3月までは「TOCOS相談センター」が対応し、4月からは「多言語相談ナビ」が始まります(03-6258-1227)。相談先があると知っているだけでも、つらさは変わるものです。

医学部の授業で、日本社会で格差を感じるか尋ねたところ、ある学生が「宅配便の仕分けの夜勤アルバイトをした時、現場に多くのベトナム人がいたけれど、社員の彼らに向けた態度は僕を含めた日本人へのものとは全く違ってとても厳しく、衝撃を受けた」と話してくれました。立場的にも弱い語学留学生や技能実習生の置かれている状況は、コロナ禍のなかでさらに厳しくなっています。志を抱いて、あるいは憧れを持って来日した隣人に、ぜひ情報を届けてください。「外国人」でいることは、あのイチローにとってさえつらいことだったのですから。

武田裕子(順天堂大学大学院医学研究科医学教育学教授)[外国人][コロナ禍][言葉の壁][「やさしい日本語」][命を守ることばプロジェクト]

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出典:Web医事新報

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