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ニュース 医療介護最新ニュース 2021/05/24

#ワクチン接種#副反応#新型コロナウイルス#病院

新型コロナワクチンの副反応にはどういう症状がありますか? その頻度は? 川崎医科大学中野貴司教授解説

介護のみらいラボ編集部コメント

新型コロナウイルスワクチン接種の副反応について、海外臨床試験の分析から、川崎医科大学の中野貴司教授がまとめました。
接種個所の痛みや発熱など良く起こる副反応と期間については、本文中の表1・表2にわかりやすくまとめてあります。
参考文献は本文下部をご覧ください。

Q3 新型コロナワクチンの副反応にはどういう症状がありますか? その頻度は?

執筆:中野貴司(川崎医科大学小児科教授)

(1)副反応とは

新型コロナワクチンに限らず,予防接種後には副反応が出現することがある。"免疫をつける"というワクチン本来の目的と異なる,私たちの身体に不都合な症状がみられた場合,これを「副反応」と呼ぶ(図1)。副反応の多くは軽症で経過し,後遺症を残すことなく治るが,稀に重篤な副反応が起こることもある。

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ワクチンは個体に免疫反応を起こすことが目的であり,また製剤化に際して必要な添加物も含まれている。したがって,免疫反応自体あるいは添加物によって起こる症状をゼロにはできない。新型コロナワクチンに当てはめれば,接種部位の疼痛や発熱は"免疫反応自体に伴う副反応",アナフィラキシーの原因がもしポリエチレングリコール(polyethylene glycol:PEG)であれば"添加物による副反応"と考えられる。
副反応は,その効果とともにすべてのワクチンが持つ宿命でもあるが,できる限りその頻度や程度を低くして安全な予防接種が実施できるように,努力が続けられている。

(2)副反応と有害事象

ワクチン接種後に,たまたま別の原因によって体調不良が出現することがある。これを,予防接種による副反応と区別することが,難しい場合がしばしばある。

たとえば,ワクチンを接種した日の夜に発熱したり蕁麻疹が出たりしたら,「ワクチンが原因では」と考える者は多い。しかし,ワクチンが原因とは限らず,偶発的に感染症に罹患して発熱したり,他の原因で蕁麻疹が出たりしたのかもしれない。

一方,ワクチンを接種して,帰宅途中に車とぶつかってけがをした場合,「ワクチンがけがの原因では」と考える者は少ない。しかし,もしワクチンの副反応でめまいがしてふらふらし,その影響で車とぶつかったのなら,因果関係はある。

接種後に認められた,身体に不都合な出来事を「有害事象」と総称する。その中には「副反応」も含まれるが,ワクチン以外の原因で発生した「有害事象」と明確に区別できない場合も多い(図2)。

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(3)対照群との比較による評価

以上をふまえると,臨床試験においてワクチン接種群と対照群(対照薬として生理食塩水などを接種した群)のそれぞれで発生した有害事象の症状やその頻度を比較することで,当該ワクチンによって発生する可能性のある副反応を評価できる。対照群に比べて,接種群で統計学的に有意に高い頻度で有害事象がみられた場合,ワクチンによる副反応の可能性が高いと言える。新型コロナワクチンについて具体的な成績を以下に示す。

①海外の臨床試験

3種類の新型コロナワクチン(mRNAワクチン:2,ウイルスベクターワクチン:1)の臨床試験の結果3-1)~3)について,発症予防効果と同様に,接種後の有害事象の頻度の概要が日本感染症学会によってまとめられている3-4。詳細は文献3-4をご確認頂きたいが,以下簡単に解説する。1399221837>

接種局所の副反応 (表1)

局所反応では,mRNAワクチン接種後の疼痛の頻度は66~89.9%と高い(対照群では8~19.1%)。ファイザー製mRNAワクチンでは,活動に支障が出る中等度以上の疼痛が,1回目接種後の約30%,2回目接種後の約15%に報告された。また,日常生活を妨げる重度の疼痛が1回目接種後で0.7%,2回目接種後で0.9%報告された3-1)4)。mRNAワクチン接種後の疼痛は,若年者で発現頻度が高い傾向にあったが,アストラゼネカ製ウイルスベクターワクチンではその傾向がより著明であった3-3)4)

なお,接種後の疼痛は接種数時間後から翌日にかけてみられ,1~2日間程度で軽快する場合が大多数である。また,注射時の痛みは,軽微であるという者が多い。
そのほかの局所反応では,mRNAワクチン,ウイルスベクターワクチンともに,疼痛の頻度と比較して,発赤や腫脹の出現頻度は低い。

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 全身性の副反応 (表2)

全身反応である発熱については,海外臨床試験では「38℃以上」を呈した者の情報が収集された。ファイザー製mRNAワクチンでは,1回目接種後は1~4%(対照群は0~1%)だが,2回目の接種後は11~16%(対照群は0%)で,38℃以上の発熱が認められた3-1)4)。なお,高齢者よりも若年者で頻度が高い傾向があった。また,モデルナ製mRNAワクチンも同様の傾向であった3-2)4)。アストラゼネカ製ウイルスベクターワクチンでは,1回目接種後で18~55歳群の24.5%に認められた以外は,発熱の報告がなかった3-3)4)。発熱以外の全身症状としては,倦怠感・頭痛・寒気・筋肉痛・関節痛などが出現している。

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 重篤な有害事象 

入院が必要となったり,生命や後遺症にも関わったりする重篤な(serious)有害事象は,ファイザーの臨床試験では接種群で0.6%,対照群で0.5%,モデルナの臨床試験でも両群で0.6%と差がなかった3-1)2)4)。アストラゼネカの髄膜炎菌ワクチンを対照群とする臨床試験でも,接種群0.7%,対照群0.8%と差がなかった3-4)5)

それぞれの試験における接種群・対照群の登録数は数万例まであるが,現時点では3種類のワクチンとも,重篤な有害事象の出現頻度において対照群との差違は認められていない。

②国内の臨床試験

ファイザー製ワクチン「コミナティ筋注®」のわが国の添付文書に記載された国内第1/2相試験における1回目接種後(表3),2回目接種後(表4)の有害事象を示した3-6


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対象者は160人で,接種群119人,対照群41人であった。海外臨床試験の結果と比較して,接種部位の疼痛,全身反応の疲労,頭痛,筋肉痛,関節痛はほぼ同等であったが,悪寒の頻度がやや高かった。発熱は,海外臨床試験では38℃以上を基準としたが,国内臨床試験では37.5℃以上を対象としたため,1回目接種後が14.3%,2回目接種後が32.8%と,海外に比べて高い頻度であった。発熱者のほぼ半数が37.5〜37.9℃であり3-4)7),38℃以上の発現頻度は海外の結果と大きな差異はないと考えられた。

【文献】

3-1) Polack FP, et al:N Engl J Med. 2020;383(27):2603-15. 

3-2) Baden LR, et al:N Engl J Med. 2021;384(5):403-16.

3-3) Ramasamy MN, et al:Lancet. 2021;396(10267):1979-93.

3-4) 日本感染症学会ワクチン委員会:COVID-19ワクチンに関する提言 第2版(2021年2月26日). [https://www.kansensho.or.jp/uploads/files/guidelines/2102_covid_vaccine_2.pdf]

3-5) Voysey M, et al:Lancet. 2021;397(10269):99-111.

3-6) ファイザー:コミナティ筋注 添付文書 第3版(2021年3月改訂).

3-7) 厚生労働省:第51回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会,令和2年度第11回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催)資料.
[https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000208910_00015.html]

医事新報編集部より:本記事は医療関係者向けに制作しています。本記事に記載されている事項は発行時点における最新情報に基づく著者の見解であり,正確を期するよう,著者・出版社は最善の努力を払っています。しかし,医学・医療は日進月歩であるため,実際に,診断・治療等を行うにあたっては,読者ご自身で細心の注意を払われるようお願いいたします。

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出典:Web医事新報

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