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ニュース 医療介護最新ニュース 2021/07/06

#アレルギー#治療法

牛肉アレルギーと交差反応について 釣木澤尚実平塚市民病院部長 千貫祐子島根大学医学部准教授

介護のみらいラボ編集部コメント

「牛肉アレルギー」の診断と管理、そして最近の知見についての質問に対し、千貫祐子先生(島根大学医学部皮膚科准教授)が解説しています。その特徴として、血液型A型とO型が発症しやすいこと、アレルギー症状の多くが牛肉摂取後3時間以上経過してから現れることが挙げられます。
千貫先生らがマダニ唾液腺中にα-Gal糖鎖の存在を証明し、牛肉アレルギー患者の血清中IgEがマダニ唾液腺のα-Gal含有蛋白質に結合することを証明したことからも、これら一連のアレルギーの感作原因が「マダニ咬傷」であろうことが判明。牛肉アレルギー患者はイヌを飼育しているケースが多いのですが、イヌの散歩の際に草むらでマダニに咬まれている可能性があるそうです。

【質問】
牛肉アレルギーの診断と管理について最近の知見も含めてご教示下さい。
島根大学・千貫祐子先生にご回答をお願いします。

【質問者】釣木澤尚実 平塚市民病院アレルギー内科・呼吸器内科 部長

【回答】
【牛肉アレルギーはマダニ咬傷が原因であり,治癒しうる】

(1)牛肉アレルギーの原因
牛肉アレルギーの主要な原因抗原エピトープは,糖鎖galactose-α-1, 3-galactose(α-Gal)です。牛肉アレルギーの特徴として,血液型A型とO型が発症しやすいこと,アレルギー症状の多くが牛肉摂取後3時間以上経過してから現れることが挙げられます。
牛肉以外でもα-Galを有する哺乳類肉(豚肉,猪肉,鯨肉など)でアレルギーを生じうるのはもちろんですが,交差反応のために抗悪性腫瘍薬のセツキシマブやカレイ魚卵でもアレルギーを生じえます。セツキシマブはIgG1サブクラスのヒト/マウスキメラ型モノクローナル抗体製剤で,マウス由来のFab領域にα-Gal糖鎖が存在するために交差反応が生じます。一方,カレイ魚卵にはα-Gal糖鎖自体は存在しないため,別の糖鎖構造に起因する交差反応によってアレルギーを生じます。
筆者らがマダニ唾液腺中にα-Gal糖鎖の存在を証明し,牛肉アレルギー患者の血清中IgEがマダニ唾液腺のα-Gal含有蛋白質に結合することを証明したことから,これらの一連のアレルギー(α-Gal syndrome)の感作原因が,マダニ咬傷であろうことが判明しました。牛肉アレルギー患者はイヌを飼育していることが多いのですが,イヌの散歩の際に草むらでマダニに咬まれている可能性があります。

(2)診断と対処法
牛肉アレルギーの診断には,血中牛肉特異的IgE検査の実施が有用です。α-Gal特異的IgE検査のほうが感度は良いのですが,現時点で保険適用ではありません。
診断後の対処法としては,感作原因,つまりマダニ咬傷回避の指導を徹底することが重要です。ただし,マダニは咬むと同時に痛みや痒みを感じさせない物質を注入するため,通常はマダニ咬傷には気づきにくいのです。筆者は,国立感染症研究所のホームページからダウンロード可能な「マダニ対策,今できること」1)を患者に手渡した上で,日常生活指導を行っています。そして,この指導がうまくいけば,数年かけて牛肉特異的IgEが減少,消失していき,治癒しうることがわかってきました。
数年前にわが国で発生した「加水分解コムギ含有石鹸の使用による小麦アレルギー多発」事例から,我々臨床医は「経皮感作で始まる食物アレルギーは治りうる」ことを学びました。α-Gal syndromeも同様に経皮感作(マダニ咬傷)から始まるアレルギーであり,感作原因(感作経路)を断つことができれば治りうるのです。

【文献】
1)国立感染症研究所:マダニ対策, 今できること. [https://www.niid.go.jp/niid/images/ent/PDF/190730madanitaisaku.pdf]

【回答者】
千貫祐子 島根大学医学部皮膚科准教授

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出典:Web医事新報

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