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ニュース 介護業界ニュース 2020/12/24

#コロナ#マスク不足#ロジスティクス#PPE#医療資材#介護

コロナ禍で個人防護具など医療資材を安定供給 メドライン・ジャパンのノウハウ

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介護のみらいラボ編集部コメント

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文:中澤仁美 フリーライター 写真:和知明(航空写真除く)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が医療・介護現場に与えた影響の大きさは計り知れません。一方で、そうした「最前線」に各種の医療資材を届け続けたサプライチェーン各社も厳しい闘いに挑んでいました。ここでは、世界中の医療現場を支えるために手術準備キットや個人防護具(PPE)などを供給してきたメドラインの日本法人でグローバルオペレーションを担う伊藤亜希子さんに取材し、COVID-19に伴う混乱初期から現在に至るまでの道のりを伺います。

こちらを笑顔で見る若い女性部長伊藤亜希子さん

【プロフィール】
伊藤亜希子(いとう・あきこ)
メドライン・ジャパン合同会社グローバルオペレーション部 部長
2000年に入社し、サプライチェーンを基礎から学ぶ。需要予測、購買、在庫管理、輸出入、倉庫管理などの経験を積み上げ、製品マスターデータマネジメント及びサプライチェーン、物流センター統括責任者として現在に至る。

マスク不足・大量注文...コロナ混乱初期を柔軟なイレギュラー対応で乗り切った

平時から医療介護資材の安定的な供給に努め、過去の感染症の流行時にも負けずに製品を調達・コントロールしてきたメドライン・グループ。しかし、COVID-19の感染拡大は、同社にとっても高い壁として立ちはだかりました。メドライン・ジャパン合同会社のグローバルオペレーション部で部長を務める伊藤亜希子さんは、「中国での発生当初から『嫌な予感』はありましたが、またたく間に世界中へ拡大してパンデミックとなり、様々な医療資材の供給に影響を及ぼしていったことは、過去に経験したことのない大きなインパクトでした」と話します。

タイ、マレーシア、ベトナムなど、アジア圏を中心に複数の国から物資を調達している同社ですが、その約6割を占めるのは中国です。折しも感染拡大初期において中国は、極めて大勢の人々が連休に入り、故郷などをめざして大移動する春節の時期を迎えていました。

「安定供給を重視する当社では、平均的な需要の約2~3か月分の在庫を常に保有しています。特に春節の連休前は仕入れを多めにしているタイミングだったので、すぐに在庫が底をつくことはありませんでした。ところがその後、中国国内で移動規制が敷かれたため、里帰りしていたスタッフが製造所に帰って来られず、生産量が落ち続けてしまったのです。もちろん、中国以外の地域でも厳しい状況が続きました」(伊藤さん)

こうした影響から、製品の調達が最も厳しくなったのは3~4月ごろ。工場が再開してからも、検査、滅菌、パッケージ化といった工程が交通の分断などによりスムーズに進まず、伊藤さんによれば「全体的にどの製品も2割程度は生産量が落ちた印象」だったということです。

一方で、コロナ禍で受注数が急増し。同社の物流センターでは今年4月の出荷数は平時の2倍を記録しました。

「マスクや検査用手袋といったPPEを中心に、大量の注文が入りました。新規のお客様が急増したことに加えて、既存のお客様も不安な気持ちから多めの購入を希望される傾向が続いたのです。中国では原材料の値上がりが激しく、一部製品では販売価格に転嫁せざるを得なかったのもつらいところでした」(伊藤さん)

上空から見たメドライン・ロジスティクス・ジャパン愛西物流センター(愛知県愛西市)

メドライン・ロジスティクス・ジャパン愛西物流センター(愛知県愛西市)

出荷調整が困難になる中、同社では「既存のお客様の本来的な需要を守る」ことを第一に考え、物流をコントロールしていったといいます。

「過去の実績から、その医療機関における平時の需要を割り出し、限られた在庫量の中で各施設への分配をし、既存のお客様に継続した提供ができるよう力を尽くしました。コロナ禍では出荷調整が必要な品目が多岐にわたり、お客様の事情を加味しつつ、自動調整ではなく人間の判断を入れてコントロールする必要があったことから、大変なマンパワーを要することになりました。加えて、従業員の安全確保の為、全社的な在宅勤務に切替えたタイミングであったこともさらなる困難を極めました。その環境下でなるべくかかるマンパワーを減らす為にカスタマーサービスと物流センター、ITや私達オペレーションが協力し、自動出荷調整システムの採用を実現することができました。」(伊藤さん)

ホワイトボードを指す若い女性

ホワイトボードで説明する伊藤さん

介護・医療資材が代理店を経由する日本特有の流通事情

メドラインのサプライチェーンでは、センターコントロールの機能が置かれた中国の上海拠点が中心となり、全世界の需要を踏まえてグローバル購入を行っています。その上で、各国のバランスを見ながら、それぞれのニーズを満たせるよう協力し合う体制が整えられています。

「ただし、国によって薬事関連法制が異なり、日本は世界的に見ても医療資材に対する要求が厳しいほうだといえます。『日本基準』の品質をクリアした上で必要量を確保できるよう、細かく調整を図っていきました」(伊藤さん)

製品を現場まで届ける流通経路には日本ならではの特殊性があり、それを踏まえて対応する必要があるそうです。

「そもそも『代理店を通してエンドユーザーに製品が届く』という医療資材の流通スタイルは日本独自のもの。メドラインの本社がある米国では、製品は直接メーカーなどから医療機関へ届けることが普通ですね。コロナ禍においては、私たちだけでなく代理店側でも在庫を持っていたことが『保険』として機能し、プラスに働く場面もあったと思います」(伊藤さん)

一方で、自動分配により注文通りの納品が難しい故に二次店や三次店から同社へ直接追加注文が入るケースが相次ぎ、エンドユーザーである医療機関が直接取引を要望するケースもあり、現場では混乱をきたしました。

「医療資材の不足は『手術やケアができない』といった最悪の事態に直結しかねないので、現場欠品は絶対に避けなければなりません。お客様の注文の中でも、そうした緊急性の高いものについては、『特別枠』として別途キープしてある在庫を払い出すなどして対応しました」(伊藤さん)

なお、医療資材の流通に関わるメーカー数社へ、日本政府から定期的かつ詳細なヒアリングの要請があり、そのつどPPEの入荷・出荷数を情報提供していたそうです。

「そうしたやり取りの中で、グローバル企業である当社だからこそできるお手伝いがしたいと考え、海外の状況なども把握できる限りお伝えしていました。CDC(米国疾病予防管理センター)などから発信された最新情報やWHOからの検査用手袋の緊急時の使用推奨案や各製造所拠点の物流情報なども頻繁にお伝えしました。また、政府へ備蓄用の医療用ガウンや手袋、PPE製品などを提供いたしました。(伊藤さん)

机を挟んで同僚と談笑する若い女性

個室での仕事風景

業界の横のつながりを強化してコロナ禍の困難に立ち向かう

現在、医療資材の不足はずいぶん解消されてきましたが、まだ完全回復とはいえない状況です。日本国内でもCOVID-19の再流行も懸念される中、医療・介護施設の担当者はどのように医療資材を調達していけばいいのでしょうか。

「やはり自施設内の需要をいかに正確に読むかがキーポイントになるはずです。『たくさんあるに越したことはない』と考える気持ちは分かりますし、多めに入手できれば安心ではありますが、なかなか難しいのが現状でしょう。こんな状況だからこそ、担当者が『本当に必要な数』を把握しておくことが重要です」(伊藤さん)

また、限りある医療資材を大切に使うことも大切です。同社では平時から医療従事者の教育ツール作成に力を入れており、営業担当者が医療機関で勉強会を開くこともしています。公式ウェブサイトから誰でも無料で閲覧できるコンテンツもあり、コロナ禍では問い合わせが急増。PPEの着脱方法を説明したコンテンツは、ページビュー数が3割ほどアップしたそうです。

伊藤さんは「社内研修などで自由に活用してほしいです」と話した上で、こうした教育コンテンツを利用する意義を教えてくれました。「使用法に認識の違いがあったり我流になっていても、スタッフ間で指摘しづらい環境であることなど少なくありません。『この方法が最新のスタンダードです』と客観的に示すことのできる教材があることで、スタッフの皆さんに受け入れてもらいやすいのではないでしょうか」

現場への安定供給を第一に考え、COVID-19による混乱期を駆け抜けてきた同社。同業他社との連携も、コロナ禍で強まったそうです。

「PPEなどを扱う企業が加盟する職業感染制御研究会やAMDD(米国医療機器・IVD工業会)などを通して横のつながりはもとからありましたが、コロナ禍の状況下で定期的に情報共有し合うなどする中で、より強力に助け合う雰囲気が醸造されていったように思います。営業担当者同士でも現場交流を密にし、万が一どこかで欠品があれば、企業の垣根を越えてでもサポートできるようにしています。とにかく現場の皆さんに製品をお届けし、安心して使っていただくことが一番。私たちは、そうしたかたちで医療・介護従事者の皆さんに寄り添い、支えていきたいと考えています」(伊藤さん)

4人の男女会社員が会議中

自室のデスクで同僚とミーティングすることも

国際感染症センター長 大曲貴夫先生に聞く(3)感染拡大に備える 介護施設でコロナ感染疑いありのときの対応法

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【メドライン・ジャパン合同会社】
東京都文京区小石川1-4-1 住友不動産後楽園ビル15F
北米、ヨーロッパ、アジア、中東を中心に医療関連製品を製造販売するグローバル・ヘルスケア・カンパニー、メドラインの日本法人。「医療従事者が医療に専念できるパートナーとなる」をミッションに掲げ、高品質な製品を提供し続けてきた。グローバルで展開されている製品ラインアップは55万点以上で、世界90か国で使用されている。

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プロフィール

中澤仁美(なかざわひとみ)

ナレッジリング 編集者・ライター

慶應義塾大学環境情報学部を卒業後、中学受験塾の国語科講師などを経て、編集プロダクション・ナレッジリングに参画。
編集者・ライターとして、医療・介護・保育分野の取材やライティングに数多く携わる(保育士資格保持)。