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ニュース 介護業界ニュース 2021/02/01

#国家試験

2021年(令和2年度)第33回介護福祉士国家試験結果速報(筆記)今年の傾向はどうだった?

介護福祉士国家試験は、介護で唯一の国家資格.jpg

介護のみらいラボ編集部コメント

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文:馬淵 敦士(まぶち あつし) 「ベストウェイケアアカデミー」学校長。介護福祉士・社会福祉士・介護支援専門員(ケアマネジャー)。 試験を受ける受験生

介護福祉士国家試験は、介護で唯一の国家資格

※2021年3月26日発表の合格発表記事はこちらです。

第33回介護福祉士国家試験の筆記試験が昨日 1月31日(日)行われました。受験された方はお疲れ様でした。コロナ禍での受験勉強や試験までの道のりは大変であったと思います。

私は大阪府豊中市にあります「かいごのがっこう ベストウェイケアアカデミー」の学校長をしています。介護福祉士受験対策を毎年行っており、本年も多くの学生が受験しました。試験終了後、本試験を実際に受けた学生にヒアリングを実施しました。その感想などを踏まえ、結果速報と振り返りをしたいと思います。

33回介護福祉士国家試験(筆記)で出題された主な内容と問題解説(一部)

試験科目は例年通り、以下の内容で行われました。

午前(110分)

[1]人間の尊厳と自立(2問)
[2]人間関係とコミュニケーション(2問)
[3]社会の理解(12問)
[4]介護の基本(10問)
[5]コミュニケーション技術(8問)
[6]生活支援技術(26問)
[7]介護過程 (8問)

午後(110分)

[8]発達と老化の理解(8問)
[9]認知症の理解(10問)
[10]障害の理解(10問)
[11]こころとからだのしくみ(12問)
[12]医療的ケア(5問)
[13]総合問題(12問)

合格速報としてすべての問題に対する解答は出せませんが、みなさんも気になるところだと思いますので、実際に出題された問題について少し触れていきます。

午前 問題20([4]介護の基本より)

利用者の自立生活支援・重度化防止のための見守り的援助に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 ごみの分別がわからない利用者だったので、その場でごみを分別した。
2 利用者の自宅の冷蔵庫の中が片づいていないので、整理整頓した。
3 トイレ誘導した利用者の尿パッドを、 本人に配慮して無言で取り替えた。
4 服薬時に、薬を飲むように促して、そばで確認した。
5 利用者が居間でテレビを見ているそばで、洗濯物を畳んだ。

解答と解説

予想正解:4

解法 問題20

訪問介護に関する問題で、いわゆる「見守り的援助」に関する出題です。2018年の介護報酬改定で訪問介護における「老計10号」が見直されたことにより、出題されたと考えられます。ただし、問題文の「自立生活支援」「重度化防止」という言葉を正しく捉えれば、正解できる問題ではないかと思います。

午前 問題69([8]発達と老化の理解より)

Aさん(小学4年生、男性)は、思いやりがあり友人も多い。図画工作や音楽が得意で落ち着いて熱心に取り組むが、苦手な科目がある。特に国語の授業のノートを見ると、黒板を書き写そうとしているが、文字の大きさもふぞろいで、部の漢字で左右が入れ替わっているなどの誤りが多く見られ、途中で諦めた様子である。親子関係や家庭生活、身体機能、就学時健康診断などには問題がない。
Aさんに当てはまる状態として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder)
2 愛着障害
3 注意欠陥多動性障害
4 学習障害
5 知的障害

予想正解:4

解法 問題69

発達障害のうち、学習障害の知識についての問題です。発達障害に関する問題は「障害の理解」だけでなく、他領域での出題もみられるため、正しく覚えておくことが重要です。選択肢1・3・5は発達障害の分類となります。

今年の介護福祉士国家試験の新傾向

さて、全体の傾向について少し考察していきましょう。
ここ数年は大きく傾向が変わることはありませんでした。33回の問題をみると、確かに難問と思われるような問題も出題されていましたが、その他の問題を確実に回答することで、合格点を取れる内容となっています。以下、気になった点をいくつかピックアップしていきます。

午前の部

まず、第31回、第32回ともに、[1]人間と尊厳の自立の問題1は事例問題、問題2は用語説明の問題でしたが、第32回は第30回と同様、問題2に事例問題が出題されました。人間と尊厳の自立で出題される2問は難問であることが多かったのですが、事例問題は比較的点数を取りやすいと考えられます。

同じく、例年難問が出題される[4]社会の理解ですが、第32回では、「働き方改革」(問題6)のような、近年話題となる法制度についての言及がありました。第33回では家族の変容(問題5)、2017年度の社会保障給付費(問題8)といった問題出題され、概観すると、「今の日本・これからの日本」に関わる問題が出題される傾向が見られます。

[4]社会の理解内だけで、第33回では2問、第32回では3問、介護保険法に関する問題(事例問題を除く)が、出題されていました。31回試験でも2問出題されており、今後も介護保険法に関する出題の割合が多くなると思われます。

また、今回は障害に関する出題も多かったようです。事例問題として障害者総合支援法のサービスについての出題(問題13)、障害者総合支援法の障害者の定義(問題14)、障害支援区分(問題15)です。また、高齢者虐待防止法も出題されていますが、生活保護法の出題はありませんでした。

アドバンス・ケア・プランニングは人生100年時代として国が力を入れている考え方で、過去には介護支援専門員(ケアマネジャー)の試験にも出題されました。今回も問題58に出題されています。終末期ケア(ターミナルケア)に関する問題は、今後も出題される傾向が続くといえるでしょう。


午後の部

[8]発達と老化の理解では、年齢を問う問題が第32回に続いて出題されました(問題70)。「高齢者は65歳からである」という基準を元に今後も覚えておく必要があります。

[9]認知症の理解では、第32回に数値に関する出題がありましたが、今回は統計数などの出題はありませんでした。しかし、クロイツフェルト・ヤコブ病やレビー小体型認知症についての問題(問題81と問題82)は難問であったように感じます。

[10]障害の理解では、第32回に筋萎縮性側索硬化症やパーキンソン病のホーエン・ヤールの重症度分類など、難病についての言及がありましたが、今回は筋ジストロフィーについて出題されました。難病は1問以上は出題される傾向にあります。

また、例年通り発達障害に関する出題があります。こちらも傾向としてつかむ必要がありますね。また、なぜか脊髄損傷の問題が多かったような印象を受けました。特に、脊髄の損傷部位による残存機能についての出題(問題91・問題123)は、受験生からも「ここまで覚えないといけないのか」という声がでました。出題範囲ではありますが、難問であり、解答できる受験生は少なかったのではないでしょうか。

[12]医療的ケアには第32回同様、今回も、1問、事例問題が含まれていました。他の問題でも、実務者研修で行った演習をイメージし、キーワードを理解しておくことで正解しやすい問題が並んでいました。


外国人の名は新傾向となり得るか?

試験を実際に受けた学生たちから昨年と変わったことがなかったかどうか聞いてみました。すると、「外国人の名前に関する問題が多く出てきた。」という意見が多かったです。

そこで、実際に出題された外国人の数を比較してみました。

33回試験で出題された外国人の数  1人(マズローのみ)
32回試験で出題された外国人の数 12人
 

前回の試験と比較すると、圧倒的に違いますね。外国の制度や外国人の業績などは、覚えていない受験生も多いため、これだけで難易度が高いと感じてしまいがちです。

また、ソーシャルロール・バロリゼーション(問題18)やアドバンス・ケア・プランニング(問題58)など、カタカナ語が多く出題されました。今後外国人の名前が多くでるかというと、個人的にはあまり気にする必要はないと思います。それ以外で正解できる問題を確実に獲得していく方が良いでしょう。

第33回介護福祉士国家試験(筆記)は、難しかった?易しかった?

全体的に見ると、難易度は標準レベルであると考えます。しかし、合格点は各年度によって異なる(第32回は77点、第31回試験は72点)ため、何点とれば安心というものはありません。ただ、ここ5年間の合格点から大きくずれることは無いのでは、と思います。

皆さんが無事、合格されるようお祈りしています!

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