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ニュース 介護業界ニュース 2021/06/03

#LIFE#テクノロジー#ヘルパー#介護施設#介護業界#業務効率化#訪問介護

訪問介護事業所にICT導入、70代ヘルパーも楽になった業務効率改善

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介護のみらいラボ編集部コメント

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文:中澤仁美

SCC大阪 統括マネジャー 五島峰さん

ICTを訪問介護事業所に導入したSCC大阪 統括マネジャー 五島峰さん

介護現場ではスタッフ同士のコミュニケーションが大切ですが、そこに課題を抱えている事業所は少なくありません。特に訪問介護では、新型コロナウイルス感染症の影響で「事業所に立ち寄らず直行直帰」といった勤務形態に切り替えるケースも多く、より情報共有が難しくなっています。そこで注目したいのが、コミュニケーション不足を解消できるデジタルツール「Chatwork」。訪問介護事業などを展開する有限会社SCC大阪でChatworkを導入した経緯とその活用法について、関係者の皆さんに伺いました。

【お話を伺った方】
五島峰(有限会社SCC大阪 統括マネジャー)
芝谷知子(有限会社SCC大阪 介護事業部 管理者)
藤井香苗(Chatwork株式会社 ビジネス本部 事業戦略部 インダストリーチーム)

業務効率化に役立つコミュニケーションツールを求めて

SCC大阪のICT利用について説明する介護事業部 管理者 芝谷知子さん

SCC大阪のICT利用について説明する介護事業部 管理者 芝谷知子さん

有限会社SCC大阪は1992年に整骨院として創業後、「年齢を重ねて通院が難しくなった方の助けになりたい」という思いから2011年に介護事業部を設立。訪問介護事業所「介護ステーション2丁目(大阪府松原市)」を立ち上げ、35人のスタッフ(登録ヘルパー16人を含む)で約110人の利用者に対してサービスを提供しています。統括マネジャーの五島峰さんは、介護事業部を展開するにあたって、ある課題を感じてきたといいます。

「ホームヘルパーが移動する際に、事務所に戻るほどの時間はないけれど、次の訪問先に行くには早すぎる......という微妙な『すき間時間』が発生していることに気付きました。一方で、報告や記録などの業務は、その日の最後に事務所に戻ってから行うため、労働時間の超過が発生しやすい状況でもありました。出先のすき間時間をうまく活用すれば、労働環境が改善されてスタッフが健康的に働くことができ、利用者さんへのより良いケアにもつながるはず。そうした考えにより、2012年ごろからICTの活用を検討し始めました」

ICTの活用により業務効率を改善したい場面は、ほかにもありました。介護事業部で管理者を務める芝谷知子さんは次のように語ります。

「1人の利用者に複数のホームヘルパーが関わることも多い訪問介護では、サービス提供時に気付いたことを関係者といち早く共有することが大切です。『部屋の汚れが目立つようになった』『食事や会話で気になることがあった』といった情報が、次の訪問時に役立つことも多いからです。しかし、かつてはホームヘルパーの報告を受けた事務スタッフが他のホームヘルパーに電話やメールで個別連絡していたため、かなりの手間と時間を要していました」

五島さんたちは目ぼしいコミュニケーションツールをいくつか試してみましたが、なかなか納得できるものが見つからず、暗中模索の時期が続きました。そうしたとき、知り合いの経営者から推薦されたのがChatworkだったのです。まずは無料で使える機能を常勤スタッフで試し、事業所にマッチするサービスであることを確認。その後、2017年11月に有料版へ移行し、登録ヘルパーも含めて全社で一斉導入しました。費用については、自治体のICT導入支援事業補助金を活用することで、事業所負担を最小限に抑えることができました。

入念な準備で70歳代のヘルパーもChatworkを無理なく活用

ICT導入サポートに当たったChatwork社の藤井香苗さん

ICT導入サポートに当たったChatwork社の藤井香苗さん

SCC大阪の登録ヘルパーには60歳代後半から70歳代前半の方も多く、新しいデジタルツールに適応してもらうためには工夫が必要でした。そこで、3人の常勤スタッフがChatwork Academy(研修施設)で研修を受け、2日間ほどかけて使い方を習得。そこから持ち帰った知見をもとに、まずは他の常勤スタッフたちが学び、それから登録ヘルパーへ教えていきました。また、Googleアカウントを付与したスマートフォン端末を用意し、Chatworkの設定を済ませてから全スタッフに貸与しました。

さらに、代表取締役の五島広文さんが登録ヘルパーの一人ひとりと面談を行い、事前にICT導入の意義を説明。「Chatworkを使いこなせなければ仕事を辞めないといけない」と思ってしまっていた方もいたので、その誤解を解きながら、対話を重ねることで不安を解消していきました。こうした丁寧な事前準備が功を奏し、現場にも抵抗なく受け入れてもらえたそうです。

「そもそもChatworkは機能も使い方もシンプルなので、初心者にも分かりやすいのです。想像よりずっと早い段階で、高齢のホームヘルパーも使いこなせるようになりました」(芝谷さん)

実際にホームヘルパーの皆さんが使っている機能は、「グループチャット」が中心です。これは、関係者のみを招待したグループを作成し、文章や絵文字、リアクション機能などでコミュニケーションできるもの。Chatwork社の藤井香苗さんは次のように教えてくれました。

「介護事業所でグループチャットを使用する場合は、まずは利用者さんごとにグループを作成することが多いようです。ほかにも、テーマ(話題)ごとにグループを作っても分かりやすいですが、いきなり数を増やしすぎると『このメッセージはどこに投稿すればいいの?』と悩んでしまう方もいます。グループの設定については、最初の段階でよく考えておく必要があるかと思います」

SCC大阪では、グループチャットを通して利用者さんやご家族の情報を文章で伝えるほか、必要に応じて撮影した画像もやり取りすることで、より正確なコミュニケーションを心がけています。グループごとにチャットをするようになって、それまでは個人的に伝えていた「記録の書き方を○○のように改善してください」といった指摘を他のホームヘルパーにも共有することができ、全体としての学びや気付きにつながる場面が増えたといいます。

現在では、毎週作成するホームヘルパーのシフト表などもグループチャットで共有することで、事業所に立ち寄らなくても勤務時間を把握できるようになりました。さらに、タスク管理機能※を出勤簿や議事録、研修資料等の確認に活用するなど、事務作業の効率化にいっそう力を注いでいます。
※注:やるべきことのリストを作成・編集し、タスク管理が簡単にできる。タスクの締め切り時間を設定できたり、完了した場合はチェックする機能があったりするため、やり忘れが起こりにくい。

ICTによる情報共有や研修、理念浸透が離職率低下につながる

Chatwork導入による仕事環境の変化を、現場のホームヘルパーの皆さんはどう受け止めているのでしょうか。SCC大阪が実施したアンケートからはプラスの反応が多くみられ、確かなメリットを実感しているようです。

【アンケートの声】

「メールでは予定や報告など様々な情報が混在してしまい、必要なものを探すのに時間がかかっていました。Chatworkならグループチャットごとに情報がまとまっているし、キーワード検索もできるので使いやすいです」

「写真も確認しながら、利用者さんの変化を時系列でとらえることができます。また、担当者同士で質問がしやすく、久しぶりにサービスへ入る場合でも安心感があります」

「加算要件に関する指示やサービス提供後の報告などが、円滑に行えるようになりました。事務作業にかかる時間が半分くらいに短縮された印象で、ストレス軽減にもつながっています」

新型コロナウイルス感染症の影響で対面でのコミュニケーションが大きく制限されている昨今ですが、こうした状況下でもChatworkが力を発揮しました。その一例が、ホームヘルパー向けの事業所内研修です。研修内容を動画にまとめて「ヘルパー研修」というグループチャットでURLを共有することで、スムーズにオンライン研修に移行することができました。

また、代表取締役が毎朝、Chatwork経由で全スタッフにメッセージを発信し、先々を見据えたビジョンや、その時々で注意してほしいことなどをタイムリーに伝えています。特に登録ヘルパーたちは代表取締役と会う機会が少ないですが、組織の意思統一を図る上でもChatworkが役立っているのです。

事務作業の負担軽減やコミュニケーションの改善もあり、SCC大阪ではホームヘルパーの離職率が低く保たれています。実際、働いているホームヘルパーの約40%が7年以上勤務しているというから驚きです。

「新しいデジタルツールを導入するためには、実際に使う人たちに「これは便利だ」と実感してもらうことが欠かせないと思います。運用を始めてからも、現場の声を拾いながら設定を改善したり、新たな機能を試したりしながら、全員で使いこなせるよう少しずつ前進していくことを意識しています。ICTの活用は、決して『若い組織しかできない』ことではないのです」(五島さん)

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