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ニュース 介護業界ニュース 2023/09/12

自宅や介護施設でお遍路体験ができる!レクリエーションにもぴったりな「オンライン遍路」とは?

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介護のみらいラボ編集部コメント

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歴史を感じられる旅として、幅広い年代層から人気を集めている四国お遍路。しかし、巡礼には急な斜面や多くの階段を登る必要があり、高齢者や身体が不自由な方には難しい旅といえます。そこで年齢や障がいの有無に関係なく巡礼の旅を楽しんで欲しいとの考えから生まれたのが、全国どこからでもお遍路体験ができる「オンライン遍路」です。お寺の案内や作法に精通した公認先達による案内を受けながら、画面越しに参拝をしたり、お経を読んだりできます。オンライン遍路の特長や、サービスを始めようと思ったきっかけについて、オンライン遍路の運営企業である株式会社CTTの伊丹 顕治氏と、高野山 真言宗の僧侶であり、公認先達の福田 恵峰氏に話を聞いてみました。

1.オンライン遍路の概要

――オンライン遍路の概要や特長を教えてください。

伊丹:実際のお遍路ツアーと同様に、小豆島八十八ヶ所霊場や四国別格二十霊場をオンラインで巡るサービスです。お寺の案内や作法に精通した「公認先達」と呼ばれる者が、お寺の縁起や参拝の作法などを、オンライン会議ツールのZoomを通して丁寧に説明します。またオンラインで映し出されるお寺の風景を眺めるだけでなく、公認先達の案内に合わせて、正式な読経や参拝をすることもできます。

オンライン遍路の特長は大きく3つあります。1つは、1日単位での申し込みが可能なことです。お遍路は実際に車や徒歩で回ると大変多くの時間がかかりますが、オンライン遍路は複数回に分けたスケジュールを組んでおり、1日単位での申し込みも可能です。例えば四国別格二十霊場であれば、隔週日曜日を出発日として、約4ヶ月で20ヶ寺を巡拝し、全8回で結願(全て巡り終えること)するスケジュールとなっています。なおスタートは自由に選べるうえ、コースは常にループしているため、途中から参加しても結願が可能です。

2つ目は、実際に現地の霊場を巡っているかのような臨場感を味わえることです。オンライン遍路の初回申込時には、スムーズにお参りができるよう、霊場会公式マップや参拝用品セット(経本・納札)をお送りしています。この経本はお参りの際に使用するもので、お寺に到着した際には、公認先達の案内に合わせて、経本を見ながらお経を読むことができます。さらに「充実プラン」にお申し込みの方には、納経印(御朱印)をいただく納経帳や、霊場公式結願証もお渡ししています。この納経印は必ず現地へ行かないといただけないものですが、特別な許可(公認)により、オンライン遍路での参拝でもいただけることになりました。オンラインでの霊場巡りで納経印をいただけるのは、恐らく日本初の取り組みだと思います。自宅や介護施設などにいながら、まるで自分の足で四国を巡っているかのような気分を味わってもらえればと思います。

そして3つ目は、先述の通り、公認先達の案内を聞きながら巡礼できることです。何の知識もないままお遍路を始めると、お参りの作法やお経を読むタイミングなどが全く分からないまま参拝をすることになってしまいます。私も最初のお遍路の際は全く知識がなかったので、単なる納経印集めのスタンプラリーのようになってしまいました。やはりお遍路は、お参りの作法やお寺の縁起などを聞きながら巡ることで、より充実した旅となるものです。画面越しではありますが、現地のお寺の風景を見ながら正式な読経や参拝ができる点も、特長の一つだと考えています。

2.参加者さんの傾向

―参加者さんはどのような方が多いですか。

伊丹:一回だけ参加する方もいらっしゃいますが、やはり全ての霊場を回り終えるまで継続して参加される方が多いです。小豆島八十八ヶ所霊場は10回、四国別格二十霊場は8回の全ての回に参加することで結願となります。特に充実プランの場合は納経帳が付いて納経料金もセットに含まれているため、全ての納経印をいただくためにも、全部の回に参加される方は多いですね。参加者さんの年代は30代から60代くらいの方が多く、幅広い世代の方にオンライン遍路を楽しんでいただいています。

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小豆島八十八ヶ所霊場の一つである常光寺

3.サービスを始めたきっかけ

――オンライン遍路を始めようと思ったきっかけは何だったのでしょうか。

伊丹:「ずっとお遍路をしてみたいと思っていたけれど、行きたいと思っているうちに足を悪くして行けなくなってしまった」「興味はあるけれど、時間に余裕がないから行けない」などの話を多くの方から聞いたことがきっかけです。私は30年ほど冠婚葬祭の大手企業に勤めており、催し物で自己紹介をする際に、出身である香川県やお遍路についての話を良くしていました。こうして毎回のようにお遍路についての話題を出すと、「お遍路に興味はあるけれど行けない」と話す方が非常に多いことに気がついたのです。それならば、自宅にいながらお参りできる手段はないかと考え、Zoomを使ったオンライン遍路のサービスを立ち上げることにしました。

4.お遍路はハードルが高い旅

――お遍路に行きたくても行けない方は多いのですね。

伊丹:お遍路は一番贅沢な旅とも言われているほど、お金と時間、体力の3つが揃わないと難しい旅です。新型コロナウイルスの流行が少し落ち着いてから、定年退職を機にお遍路を始める方が増えましたが、やはり金銭面でも体力面でも、一般的に65歳を過ぎると厳しくなるのではと感じています。お遍路は車で回った場合、四国別格二十霊場・小豆島八十八ヶ所霊場は3泊4日程度、四国八十八ヶ所霊場においては、歩きで40〜50日程度の日数がかかることが一般的です。もし北海道や沖縄などの遠距離から来る場合は、それに移動費や移動の時間もかかりますし、実際に四国を巡礼できる方は限られてしまうと思いますね。

福田:お遍路は霊場巡りをする費用や時間がかかるだけでなく、移動のための前泊や後泊も必要となり、トータルするとかなりの費用が発生します。また長期間家を空けることになるため、子育て中の方や介護中の方、ペットを飼っている方にとっては、時間の面でも非常にハードルが高いといえます。身体の面だけでなく、費用や時間の面からもお遍路を諦めてしまう方は多いのではないでしょうか。

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お遍路は身体面でのハードルも高く、高齢になるほどチャレンジしづらくなってしまう

5.サービス提供時に大変だったこと

――オンライン遍路のサービスを提供するにあたり、大変だったことを教えてください。

伊丹:サービスを提供するまでには、大きく2つの壁がありました。1つは、納経印をいただく許可(公認)を得ることです。オンライン参拝で納経印をいただくには霊場会の許可(公認)が必要であり、分かりやすいプロモーションビデオを作成するなど、オンライン遍路の概要説明で一年半ほどの時間を必要としました。幸い最終的には許可(公認)をいただけて、現在は参加者さんに納経帳をお渡しできています。始めは理解を得るのに苦労しましたが、今では多くの方の助けを得てサービスを提供できています。なかには積極的にお寺を案内してくださるご住職や、お話の好きなご住職もいらっしゃり、とてもありがたいです。

もう1つは、電波の問題です。オンライン遍路はサービスを提供するにあたり電波が必要ですが、山間部にありどうしても電波が届かないお寺が1ヶ所だけありました。何か解決策はないかと考えていたところ、お寺の本堂のなかに微かにWi-Fiの電波が飛んでいることに気がついたのです。ご住職に聞くと、それはご住職のご自宅から漏れている電波でした。そのWi-Fiを借りられないかと頼み込み、本堂の内部だけはリアルタイムの映像を映せたのですが、本堂から出ると電波は切れてしまいます。そのため本堂の外観や、そのお寺に至るまでの風景は、事前に撮影した映像を流すことになりました。この電波の問題はその他の場所でも度々発生し、特定の場所で毎回電波が途切れてしまうこともあります。しかし、何度も調べるうちに電波の悪い場所を把握できるようになったため、特別な映像を流したり、事前に用意した周辺の風景の映像を映し出したりして対応しています。

取材・文/タケウチ ノゾミ 編集/イージーゴー

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