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ニュース 介護業界ニュース 2023/10/20

ケアマネジャーの面談業務時間を7割削減可能!孤独感の減少にも役立つ高齢者向け対話AIシステム「MICSUS(ミクサス)」とは?

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介護のみらいラボ編集部コメント

高齢者向け対話AIシステム「MICSUS(ミクサス)」は、ケアマネジャーが行う介護モニタリングの一部を代替できるシステムです。2022年6月から2023年1月に行われた実証実験では、179名の高齢者が、MICSUSが組み込まれたぬいぐるみ型の専用端末やスマートフォンと計900回以上面談。その結果、ケアマネジャーの面談とその記録業務に関する時間を約7割削減することに成功しました。ほかにも、高齢者の孤独感の防止などにも役立つことが判明しています。では、高齢者向け対話AIシステムとは、具体的にはどのようなものなのでしょうか。MICSUSの開発に携わったKDDI株式会社の能登将成氏、山下廣大氏に話を聞いてみました。

――高齢者向け対話AIシステム「MICSUS」の概要を教えてください。

能登:音声や高齢者の表情、ジェスチャーまで読み取れるAIを備えた、マルチモーダル音声対話システムです。「内閣府SIP第2期」という国のプロジェクトの一環で、2018年から2022年までKDDI株式会社、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)、NECソリューションイノベータ株式会社の3社で受託し、株式会社日本総合研究所の協力を経て研究開発しました。

「音声対話システム」なので、一方的に質問するのではなく、高齢者の返答に応じた会話ができることが特徴です。使い方は簡単で、MICSUSが組み込まれたぬいぐるみ型の専用端末やスマートフォンと高齢者が対話をするだけ。「毎日薬を飲んでいますか」といった、従来ケアマネジャーが質問していた内容をMICSUSが聞き、高齢者の健康状態や生活に関する情報を収集します。MICSUSが聞き取った内容は専用ツールにて簡単に確認できるため、ケアマネジャー等の作業負担軽減や、介護モニタリング業務の作業効率向上が見込めます。またMICSUSは雑談機能も備えており、高齢者の健康状態悪化の要因となるコミュニケーション不足の解消も可能です。

山下:2023年現在は、商用化に向けてさらなる機能開発を進めているところです。社会実装に向けては、日々の状況をさらに詳しく聞く見守り機能や、利用者の居住地域の地域活動などを紹介し、高齢者の行動促進につなげる機能の追加などを検討しています。

――雑談機能があるのはすごいですね。具体的にはどのような会話ができるのでしょうか。

能登:雑談機能とは、会話内で出た単語に対し、Webからその単語に関連する情報を検索して、高齢者に提供するものです。MICSUSは、基本的には厚生労働省が定めている介護ケアマネジメント手法に沿った質問をします。そして高齢者からの回答によって、関連した情報をWebから引用して提供します。例えば「最近、1日3食ご飯を食べていますか?」というMICSUSからの質問に対し、「もりもり食べているよ。最近、漬物がおいしくてね」と高齢者が答えたとします。その回答について、「それは良いですね。ネットによると、日本古来の漬物は食物繊維やビタミンをたっぷり含んでいます」といった返事をするなど、高齢者が興味を持ちそうな話題を提供します。

実証実験用のぬいぐるみ型対話端末

実証実験用のぬいぐるみ型対話端末

――Webから収集した情報だと会話の継続が難しそうに感じますが、自然な会話はできるのですか。

能登:一般的なAIシステムの場合は、会話が一方通行になってしまうことも多く見られます。しかしMICSUSの場合は、MICSUSが主導となって会話を進めていくという特徴があります。そのためユーザーが話題を振らなくても、MICSUSが会話をどんどん進めていくのです。MICSUSには人間の表情やうなずき具合から次の質問を決める機能があるため、総合的な状態から、その話題に興味があるかどうかを判断します。

より具体的に言えば、ユーザーである高齢者が特定の話題に興味を持っていると判断した場合は、その話題に関連した話を提供します。一方であまり会話の内容に興味がなさそうだと判断した場合は、雑談から離れ、介護ケアマネジメントの手法に沿った質問に戻っていきます。例えば「食事をしたかどうか」に関する質問から雑談が始まり、その話題が終わった際には、自動的に次の質問である「薬を飲んだかどうか」という質問をします。そして全ての確認事項が終われば、「本日の会話は終了です」とMICSUSが告げ、会話を終えられる仕組みです。

――MICSUSの活用メリットや効果を教えてください。

能登:最大のメリットは、ケアマネジャーの業務軽減ができることです。ケアマネジャーが高齢者の自宅などを訪問して、健康状態や生活状況の変化を確認する介護モニタリング業務は、ケアマネジャー業務全体の4分の1を占めています。一方でMICSUSを活用すれば、MICSUSと高齢者の会話の結果を確認するだけで高齢者の状況を把握できるため、業務負荷の軽減に役立つのではないでしょうか。

また高齢者がMICSUSと会話をするうちに、普段ケアマネジャーが質問している内容以外の情報を収集できる場合もあります。実際にMICSUSの実証実験を行ったところ、「MICSUSのデータに普段高齢者があまり話さない話題についての記録が残っており、今まで気が付かなかった新しい発見ができた」との意見がケアマネジャーより寄せられました。介護ケアマネジメント手法に沿った質問は高齢者の生活に欠かせないものばかりですが、トイレに関する困りごとなど、機械が聞いたほうが話しやすい話題もあるのかもしれません。MICSUSはほかにも、介護の質の向上や、高齢者のコミュニケーション不足の解消など、幅広い場面で役立つシステムだと感じています。

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タケウチ ノゾミ(Nozomi Takeuchi)

ライター・編集者

福岡市在住のフリーライター・編集者。介護、医療、ビジネスを中心に幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は観劇と美術鑑賞、猫を揉むこと。

タケウチ ノゾミの執筆・監修記事

EGGO(イージーゴー)

イージーゴーは東京・九州を拠点にWEBコンテンツ、紙媒体、動画等の企画制作を行う編集制作事務所です。ライターコミュニティ「ライター研究所」も運営しています。

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