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ニュース 介護業界ニュース 2024/04/16

無理なく身体を動かしてみんなで"貯筋"!高知県南国市の高齢者健康推進事業「貯筋運動」の効果

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介護のみらいラボ編集部コメント

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加齢と共に低下する体力。入院や怪我などが原因で、そのまま寝たきりになってしまう高齢者は少なくありません。そんな高齢者の健康体力づくりのため、高知県南国市では高齢者健康推進事業として「貯筋運動」の取り組みを行っています。筋肉を貯める運動とは、一体どのようなトレーニングなのでしょうか。NPO法人 総合型地域スポーツクラブ まほろばクラブ南国の森岡悦子氏と、松村貴彦氏(健康運動指導士)に話を聞いてみました。

1.貯筋運動とは?

――貯筋運動とはどのようなトレーニングなのでしょうか。

森岡:東京大学名誉教授の福永哲夫氏が提唱する、筋力をアップを図り、一日数分で取り組める「自重で筋肉を貯める」筋力トレーニングです。筋力が弱い方も取り組めるほか、特別な道具は使用しないため、場所を選ばずに行えます。加齢で筋力が減少しやすい下肢筋力を鍛える運動が多いことが特徴で、筋肉を貯めることにより、高齢者のQOLの良好な維持を目指しています。

2.貯筋運動の取り組みを始めたきっかけ

――南国市にて貯筋運動を始めることになったきっかけは何だったのでしょうか。

森岡:当NPO法人 総合型地域スポーツクラブ まほろばクラブ南国から、「高齢者の健康寿命を伸ばすための運動教室を開催してはどうか」と南国市へ提案したことがきっかけです。当NPO法人では、団塊の世代が後期高齢者となる2025年問題によって生じる社会保障費の増大や、社会環境の整備等の課題について、地域住民の方々と共にどのように考えていくべきか模索していた際に、福永哲夫氏が提唱する貯筋運動と出会いました。高齢者が住み慣れた環境で生活を続けていくためには、主に下肢筋力の維持が非常に重要です。そこで、「2025年問題の課題解決には、筋力が弱い高齢者でも安全に実施できるトレーニングである貯筋運動の実施が適しているのでは」との考えに至り、まほろばクラブが目指していたものと、南国市の思いが一致したことで即断の開始となりました。対象は加齢により運動の機会が減っている高齢者で、地域の公民館に指導者が出向いて開催することで、健康寿命の延伸を目指しています。

3.南国市における貯筋運動教室の概要

――南国市における貯筋運動教室の概要を教えてください。

森岡:南国市では高齢者健康推進事業として、2017年より貯筋運動教室を実施しています。開催場所は各地域にある公民館で、2024年1月現在は計15ヶ所の教室が開かれています。2017年に貯筋運動をスタートさせた際は2教室のみだったため、この7年間でかなり数が増えました。参加者さんの年齢層は70代後半から80代前半が多く、最高齢は97歳です。南国市の教室全体では、90代の方は5〜6人いらっしゃいますね。教室の開催頻度は月4回ですが、講師のサポートを受けられる指導日は、教室の新規開催から時間が経つごとに少なくなる仕組みです。新規開催から3ヶ月間は毎週、4ヶ月目から6ヶ月目までは隔週、7ヶ月目からは月1回と、少なくなりながらも講師のサポートは続きます。

松村:教室の開催時間は1回90分で、1回の流れは「準備運動(15分)→脳トレ・講師の話(20分)→休憩→貯筋運動(座位・立位プログラム15分)→休憩→貯筋運動(座位・立位プログラムまたはオリジナル運動15〜20分)→休憩→整理体操」といったものが基本です。参加人数は教室によって様々で、少人数であれば5人ほど、多いと20人程度の方が参加されています。運動の内容は貯筋運動をベースに無理なく身体を動かせるものばかりで、なかでも下肢の筋力アップを目標としたものを多く実施しています。

――1回90分というと、かなり身体を動かせそうですね。

森岡:1回90分と聞くと体力の維持が難しそうに感じるかもしれませんが、適度に休憩を入れているほか、健康運動指導士の資格を持つ講師による講話の時間もあるため、ハードではありません。また、運動の内容は講師が参加者さんの体調を見ながら適宜調整しています。平均年齢が70代前半の若い教室では、皆さんかなり積極的に動かれていますね。

松村:教室では毎回身体を動かすだけでなく、健康や運動についての正しい知識もお伝えするようにもしています。準備運動の後には講師が話をする時間があり、例えば寒い時期であれば血圧の話をしたり、栄養の話をしたりするなど、健康に過ごすために知っておきたいことをテーマとしています。近年は動画配信サイトや本などで健康に関する情報を得やすい状況にありますが、皆さん講師の話は毎回頷きながら真剣に聞いてくださっていますね。

講師の指導を受けながら体操に取り組む参加者さん

講師の指導を受けながら体操に取り組む参加者さん

4.参加者さんからの反応は?

――参加者さんからの反応はいかがですか。

森岡:とても前向きに参加してくださる方が多いと感じています。特に印象的だったのは、貯筋運動教室に通い始めたことで、ある80代の女性の歩幅が大幅に伸びたことです。その方は毎日同じ距離を万歩計で測りながらウォーキングしていたのですが、貯筋運動教室に通い始めてから、前と同じ距離を歩いているのにもかかわらず、以前より歩数がかなり減ったそうなのです。万歩計が壊れたのかな?と気にされていたので、「それは歩幅が広がったんですよ。体幹がしっかりしてきて足が前に出ている証拠です」とお伝えすると、大変喜ばれていました。

また整形疾患で手術した方が、病院のカリキュラムでは1ヶ月間リハビリをする予定だったものの、半分のたった2週間で済んだこともあります。その方はリハビリ後も、公民館の3階にある貯筋運動教室まで自分の足で上がってきて、定期的な運動を続けられていました。貯筋運動教室の参加による筋力アップは、高齢者の皆さんにとってかなりモチベーションアップに繋がっていると感じていますね。

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タケウチ ノゾミ(Nozomi Takeuchi)

ライター・編集者

福岡市在住のフリーライター・編集者。介護、医療、ビジネスを中心に幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は観劇と美術鑑賞、猫を揉むこと。

タケウチ ノゾミの執筆・監修記事