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ニュース 介護業界ニュース 2024/04/18

貯筋運動を指導する際の注意点は?高知県南国市の高齢者健康推進事業「貯筋運動」に注目

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介護のみらいラボ編集部コメント

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加齢と共に低下する体力。入院や怪我などが原因で、そのまま寝たきりになってしまう高齢者は少なくありません。そんな高齢者の健康体力づくりのため、高知県南国市では高齢者健康推進事業として「貯筋運動」の取り組みを行っています。高齢者の皆さんが無理なく運動を続けるために、指導者の皆さんはどのようなことに気をつけているのでしょうか。NPO法人 総合型地域スポーツクラブ まほろばクラブ南国の森岡悦子氏と、松村貴彦氏(健康運動指導士)に話を聞いてみました。

1.参加者さんに楽しんでもらうための工夫

――参加者さんに貯筋運動を楽しんでいただくために、気をつけている点があれば教えてください。

森岡:参加者さんとなるべくコミュニケーションを取ることは、常に気をつけています。やはり教室が楽しい場所であると思っていただけることは、継続に繋がる要因となるため、積極的に場を盛り上げるようにしていますね。ずいぶん早い時間に教室に来て、開催前に参加者さんとおしゃべりをしたり、何気ないお声がけをしたりするよう心がけている先生もいます。話すことで体調の確認もできるため、コミュニケーションは欠かせません。

また、コミュニケーションを取るなかで参加者さんから運動のリクエストや要望があった場合は、なるべく反映させるよう心がけています。先日も参加者さんより「失禁に効果がある体操はないの?」という質問があったため、私達コーディネーターが講師の先生にその旨をお伝えしたところ、早速失禁の仕組みや予防体操を取り入れてくれたと大変喜ばれていました。さらに、怪我や疾患をお持ちの方が無理をしているなと感じたら、すぐに休憩を促したり、水分を摂取するように声をかけたりもしています。

――体操の指導において工夫している点はありますか。

森岡:教室の新規開催から最初の半年間で大幅な筋力アップを実感される方が多いため、習慣化に繋がるようなお声がけや、参加者さんそれぞれの個性の把握に努めています。具体的には、体力測定を年に3回行うことで、筋力の維持や上昇を目に見える形で把握してもらえるようにしています。体力測定では握力と、敏捷性を確認するステッピング、椅子から立ち上がり3m先にあるコーンを曲がって歩いて帰ってくるタイムアップアンドゴー(TUG)の3種目を実施しており、なかでもタイムアップアンドゴーは、歩き方や椅子の座り方などの動作も含めて評価しています。新規の教室では初回時(4月)に体力測定を行うのですが、2回目となる8月の測定では、結果が劇的に変わっている方が非常に多いです。例えば今まで30秒かかっていた動作が半分ほどになるなど、ご自分でもびっくりされていますね。最初の半年間は特に運動量が多く、成果が見やすい時期でもあります。結果を自信に繋げ、その後の維持を目指していただければと考えています。

松村:新規開催から2年目以降は、全員で楽しめるレクリエーションを実施していることも工夫している点の1つです。具体的には、ボッチャやモルック、フライングディスクを投げるナインゲッターや玉入れなど、楽しんで身体を動かせるものを行っています。何度か実施するうちに、「今度玉入れがしたい」などの希望が参加者さんから出ることもあり、皆さん開催を楽しみにしてくださっているようです。

多い教室では毎回20人近くが集まる

多い教室では毎回20人近くが集まる

2.「貯筋通帳」で習慣化をサポート

――毎回の運動を記録する「貯筋通帳」なるものもあるそうですね。

森岡:貯筋通帳は、貯筋運動専用の記録帳です。銀行の通帳のような見た目の冊子で、貯筋運動やその他に行った運動を記帳しながら、楽しく貯筋を続けられます。特徴は、名前に「通帳」と入っている通り、運動量を金額で把握できること。例えば「つまさき」や「いす」などのプログラムのうち、一つの種目を一セットやった場合は、通帳の該当部分にチェックを加えて100円を追加します。ただし運動をしないと貯筋額が減ってしまう仕組みとなっており、もし3日連続して貯筋運動を行わなかった場合は500円マイナスになり、さらに3日連続して休んだ場合は、合計1,000円のマイナスとなってしまいます。毎月の目標筋額は1万円で、通帳に記載されている金額分だけ筋肉が貯まったことを分かりやすく把握できるのです。貯金通帳は運動を習慣化していただくために導入していますが、記帳は強制ではありません。ただ、記帳率の高い方は自宅での貯金運動が習慣化しており、定期的な体力測定の数値も維持できていると感じています。

記帳を続けることで、貯めた筋肉を可視化できるようになる

記帳を続けることで、貯めた筋肉を可視化できるようになる

3.今後も多くの方に貯筋運動を継続してもらえたら

――今後の展望をお聞かせください。

森岡:年に3回実施している筋力測定で筋力の維持効果を実感していただき、今後も多くの方に貯筋運動を継続してもらえたらと考えています。南国市では口コミや参加者さんの評判から、貯筋運動にチャレンジしたいという方が増えており、今年の春からもまた2ヶ所新しく教室の開催を予定しています。貯筋運動が高齢者にとって生きがいづくりの場となり、地域全体の健康な街づくりに繋がるよう、今後も普及に取り組んでいきたいです。

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タケウチ ノゾミ(Nozomi Takeuchi)

ライター・編集者

福岡市在住のフリーライター・編集者。介護、医療、ビジネスを中心に幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は観劇と美術鑑賞、猫を揉むこと。

タケウチ ノゾミの執筆・監修記事

EGGO(イージーゴー)

イージーゴーは東京・九州を拠点にWEBコンテンツ、紙媒体、動画等の企画制作を行う編集制作事務所です。ライターコミュニティ「ライター研究所」も運営しています。

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