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ニュース 介護業界ニュース 2023/10/27

高齢者向け対話AIシステム「MICSUS(ミクサス)」の活用方法は?ケアマネジャーの業務負担軽減にも役立つ最先端システムの魅力

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介護のみらいラボ編集部コメント

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高齢者向け対話AIシステム「MICSUS(ミクサス)」は、ケアマネジャーが行う介護モニタリングの一部を代替できるシステムです。2022年6月から2023年1月に行われた実証実験では、179名の高齢者が、MICSUSが組み込まれたぬいぐるみ型の専用端末やスマートフォンと計900回以上面談。その結果、ケアマネジャーの面談とその記録業務に関する時間を約7割削減することに成功しました。ほかにも、高齢者の孤独感の防止などにも役立つことが判明しています。

介護現場の人手不足を解消する画期的なシステムには、一体どのような工夫がなされているのでしょうか。MICSUSの開発に携わったKDDI株式会社の能登将成氏、山下廣大氏に話を聞いてみました。

――開発にあたり特に力を入れた点を教えてください。

能登:一つ挙げるとすれば、利用者である高齢者の皆さんが飽きないようにする点はこだわっていますね。MICSUSはケアマネジャーの業務軽減を目的としたシステムですが、毎日使用するのは高齢者であるため、高齢者がいかに飽きないようにするかを考える必要がありました。介護ケアマネジメント手法に沿った質問だけでなく、雑談を用いた会話ができるようにした点も、飽きを防止するための工夫の一つです。またMICSUSにはマルチモーダルと呼ばれる、映像を使用した情報を踏まえて会話をする機能が備わっています。そのため高齢者の表情を読み取りながら会話をすることも、飽きを防止するための工夫といえるでしょう。口角が上がっているなど、高齢者が嬉しそうな表情をしていたら同じ話題を続ける、不満そうにしていた場合は次の話題に切り替えるなど、とにかく高齢者に寄り添った対話ができるように工夫しています。

――開発時に大変だったことはありますか。

能登:新型コロナウイルスの影響を受けたことです。ちょうどコロナ禍の研究開発となったため、特に実証実験への影響は大きかったですね。実証実験を予定していた施設でウイルスに罹患した方が出て実験が延期になるなど、開発当初は想定していなかったことが次々と起こりました。しかしトラブルに遭遇した一方で、新型コロナウイルスの流行は介護現場の考えを大きく変える一つのきっかけになったのではないかと考えています。直接人と会うことが難しい状況において、MICSUSのような対話AIによって高齢者の様子を確認するニーズは大きく高まったと感じています。昨年も全国各地の介護事業所にて実証実験を行い、計179名の高齢者の皆さんにご協力いただきました。MICSUSのような最新の対話AIツールに対する注目や関心は、新型コロナウイルスの流行をきっかけに、より高まっていくのではないでしょうか。

検討中のMICSUSの商用化イメージ

検討中のMICSUSの商用化イメージ

――実証実験に参加された高齢者やケアマネジャーからの反応はいかがでしたか。

能登:高齢者の方からは、MICSUSと話すことは頭の体操になるとのご意見をいただきました。MICSUSは「昨日の夕ご飯には何を食べましたか」「トイレには行きましたか」など行動についての質問をすることが多いですが、このような質問には過去を振り返って回答する必要があるため、意外と頭を使います。「日々の何気ない行動に注意して取り組むようになった」などのご意見もいただき、高齢者にとっては、コミュニケーション不足の解消以上の効果があることを実感しました。

またケアマネジャーの方からは、高齢者の行動変容につながった事例があると聞き、大変興味深く感じています。今回の実証実験に参加してくださった高齢者のなかには、薬をお茶で飲んでいた方がいたそうです。ある日MICSUSが「薬は何で飲んでいますか」と質問した際に、その方は「お茶で飲んでいます」と回答しました。すると、MICSUSはWebの情報を参考にして、「薬は水か白湯で飲んだほうが良いですよ」と促したのです。その後、その方は薬を水以外で飲まなくなったとのことでした。このようにMICSUSとの会話は、高齢者の健康維持にもつながる部分があると感じています。

――今後の展望を教えてください。

山下:今後は、MICSUS対話を利用できるAIプラットフォームサービスを考えています。介護事業所に業務支援ソフトを提供している事業者や、デバイスを提供している事業者をパートナーとして、各サービスにMICSUSを連携させるイメージです。例えば業務支援ソフトを提供している事業者であれば、MICSUSと高齢者の対話を通じて、データ収集やニーズの把握を行い、そのデータ分析の結果を業務支援ソフトに反映するといった連携を想定しています。将来的には、利用先を高齢者の方に限定せずに、より幅広い年代の方に広めていきたいと考えています。

また、シャープ株式会社が開発・販売しているスマートロボットのロボホンとの提携を予定しており、2023年度中に実証実験を行いたいと考えています。興味を持っていただいている介護事業者さんになるべく早く活用してもらえるように、これからも開発を進めていく予定です。

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タケウチ ノゾミ(Nozomi Takeuchi)

ライター・編集者

福岡市在住のフリーライター・編集者。介護、医療、ビジネスを中心に幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は観劇と美術鑑賞、猫を揉むこと。

タケウチ ノゾミの執筆・監修記事

EGGO(イージーゴー)

イージーゴーは東京・九州を拠点にWEBコンテンツ、紙媒体、動画等の企画制作を行う編集制作事務所です。ライターコミュニティ「ライター研究所」も運営しています。

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