小学生が高齢者の見守りをする「チームオレンジ・こさのジュニア」とは?|岩手県釜石市にある小佐野小学校が行う認知症サポートの取り組み
岩手県釜石市にある小佐野小学校では、5年生41人による「チームオレンジ・こさのジュニア」を2023年2月に設立しました。この「チームオレンジ・こさのジュニア」とは、全国初となる児童主体の認知症高齢者の見守りチームです。小学生が高齢者の見守りをすることになったきっかけについて、小佐野地区生活応援センターの所長 三浦慎輔氏と、釜石市社会福祉協議会の生活支援コーディネーター 東梅和輝氏に話を聞いてみました。
――「チームオレンジ・こさのジュニア」の概要を教えてください。
三浦:釜石市内にある小佐野小学校の5年生と6年生によるチームです。現在は5年生のみのチームとなっていますが、6年生に進級後も活動は継続する予定です。小学校の授業の一環として「認知症サポーター養成講座」と「ステップアップ講座」を受講後、任命式やバッチの贈呈を経て、チームオレンジ・こさのジュニアとして活動を開始しました。基本的な活動内容は、高齢者の見守りです。ランドセル等の持ち物にバッチを着用し、登下校中や休日に気になる高齢者を見かけた場合は、交番や学校、小佐野地区生活応援センター(小佐野公民館)に知らせます。例えば、登下校中に毎日のように見かけていた高齢者の姿が突然見えなくなったり、不自然な行動をしている高齢者がいたりした場合は、身近な大人に連絡することで、トラブルや事故を防止します。
――「チームオレンジ・こさのジュニア」を結成することになった経緯を教えてください。
三浦:児童の皆さんにも、チームオレンジの活動に関わってもらえないかと考えたことがきっかけです。小佐野地区では2022年、認知症の方やそのご家族を支援する団体である「チームオレンジ・こさの」が結成されました。また小佐野小学校の近くには、特別養護老人ホーム「アミーガはまゆり」があり、その施設の協力を得ながら、毎年小学4年生が「認知症サポーター養成講座」を受講していたという背景がありました。
この「チームオレンジ・こさの」の結成がきっかけとなり、当時の小学校の校長と小佐野地区生活応援センターの所長が協議を行い、認知症の方とそのご家族を支え合う活動を広めるために、小学校でも何かできないかという話になったのです。こうして大人も子どもも関係なく、認知症の方をサポートする活動を広めたいという思いから、「チームオレンジ・こさのジュニア」が結成されることになりました。
児童はランドセル等にバッジをつけて活動を行う
――認知症サポーター養成講座とは、どのようなことを学習する講座なのですか。
三浦:認知症サポーター養成講座とは、DVDの視聴や講義の受講により、認知症の症状や種類、予防方法、認知症の方と接する際の心構えなどを学ぶ講座です。小学校の近くにある社会福祉法人に所属する、「キャラバン・メイト」と呼ばれる専属講師の方をお呼びして、毎年講座を開催しています。先程もご紹介した通り、小佐野小学校では毎年4年生が受講していますね。
――小学校で認知症サポーター養成講座を開催するのは珍しいのではないでしょうか。
東梅:やはり、小佐野小学校に隣接する社会福祉法人の存在が大きかったと思います。該当施設では、「地域の子どもたちのために」という思いで、10年以上前から小佐野小学校の児童と施設入居者との交流や、認知症サポーター養成講座の開催などの取り組みを続けていると伺っています。こうした長年の取り組みもあり、小佐野地区での「チームオレンジ・こさの」の結成を機に、子どもたちも学習したことを活かせる取り組みにできればとの考えから、今回のジュニアの結成に至っています。
小学校にて認定証の交付を受ける児童
――児童の皆さんはステップアップ講座も受講されているそうですね。
三浦:ステップアップ講座は、その名の通り、認知症サポーター養成講座よりも実践的な内容を学べる講座です。地域で活躍できる認知症サポーターとして活動するため、市内の認知症支援に関する事例や報告を聞いたうえで、自分たちがどのような活動をできるのか考え、実践につなげることを目的としています。
同講座では、子どもたちが認知症についてより理解しやすいように、日常生活の中で遭遇しそうな事例を踏まえて寸劇を作り、実演しています。例えば、家が分からなくなってしまったお年寄りが帰れなくて困っている場面や、コンビニでの買い物にもたつくような場面を設定し、そのような場面に遭遇した際の対応方法について、寸劇を通して考えてもらっています。
東梅:寸劇には、「チームオレンジ・こさの」の関係者だけでなく、小学校の先生にもご協力いただいています。やはり普段から接している先生が入った方が、子どもたちの食いつきや理解の速さが違うと感じていますね。そして同講座では単に寸劇を行うだけでなく、寸劇を途中で一旦止めて、その場に応じた対応方法を子ども達の何人かで話し合ってもらっています。この話し合いは子どもたちなりに答えを出すことを重視しているため、答えに対する評価はありません。ただ話し合いが終わった後には、「このような対応をするともっと丁寧だよね」「こう声をかけたら良いのでは」など、全員で意見を共有し合えるような時間を作るようにしています。
取材・文/タケウチ ノゾミ 編集/イージーゴー
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