小学生が高齢者の見守りを始めた効果は?岩手県釜石市にある小佐野小学校が行う「チームオレンジ・こさのジュニア」の活動
岩手県釜石市にある小佐野小学校では、5年生41人による「チームオレンジ・こさのジュニア」を2023年2月に設立しました。この「チームオレンジ・こさのジュニア」とは、全国初となる児童主体の認知症高齢者の見守りチームです。小学生による高齢者の見守りは少し難しそうですが、児童の皆さんはどのような点に気をつけて活動しているのでしょうか。チームの活動に対する児童からの反応や今後の展望について、小佐野地区生活応援センターの所長 三浦慎輔氏と、釜石市社会福祉協議会の東梅和輝氏に話を聞いてみました。
――「チームオレンジ・こさのジュニア」の活動について、児童の皆さんからの反応はいかがですか。
東梅:子どもたちに話を聞くと、以前から登下校中に「あの人大丈夫かな」と思うようなことがあったそうです。また、「高齢者に声をかけたら怒られるのではないか」と不安になっていた子もいたようでした。子どもたちだけの力で問題を解決することは難しいですが、日常生活における発見は、非常に重要な役割を果たすことがあると思います。小佐野地区は一人暮らしの高齢者の割合が非常に高い地域であることからも、ジュニアの活動が地域の力になればと感じています。
三浦:「チームオレンジ・こさのジュニア」の結成後、少し様子がおかしい高齢者の方を下校中に見かけた児童が、公民館に通報したという事例がありました。その方は幸い大事に至るような状態ではなかったのですが、子どもたちが見守りの意識を持って行動してくれたことについては、非常に嬉しく感じています。「チームオレンジ・こさのジュニア」はまだ活動を開始したばかりで、児童と地域の高齢者が接点を持つ機会は今のところありません。そのため、今後は地域の高齢者と子どもたちが交流する機会も作っていきたいと考えています。
――児童の皆さんに認知症のサポートや高齢者との接し方について教える際に、気をつけていることはありますか。
三浦:困っている高齢者の方への声のかけ方や、対応に困った際に周囲の大人に知らせる方法については、重点的に教えるようにしています。特に声のかけ方については、相手の気持ちを思いやって話しかけることや、正面から笑顔で優しく、ゆっくりとした口調で声をかけることを伝えていますね。
ステップアップ講座を受講した子どもたちの中には、声をかけて怒られたらどうしよう、どうやって声をかければ良いのだろうと心配する子もいました。そのため、「子どもから優しく声をかけられたり、笑顔であいさつされたりして嫌な気分になる人はいないと思う」といった話をしたうえで、ためらわずに声をかけられるよう、寸劇を活用して声かけの方法を学べるようにしています。
高齢者の見守りについて意見を発表する児童
――同じく認知症に関する講義の際に、大変だったことや、あまりうまくいかなかったことがあれば教えてください。
東梅:まだ取り組みを始めたばかりで現時点では特にありませんが、学年ごとに特色が異なるため、同様の活動が同じようにできるのか、という点は少し気になっています。この「チームオレンジ・こさのジュニア」の取り組みは、今後も5年生と6年生を対象として続けていく予定です。しかし活動を継続するにあたり、地域の方に声をかけるような活動があまり得意ではない学年が出てくるのではと考えています。今年から「チームオレンジ・こさのジュニア」の取り組みを始めた5年生は、かなり積極的な子が多い学年と先生方から伺っていて、実際に報告事案もありましたが、次年度以降も同じように活動できるのかと心配する気持ちはあります。ただ、子ども達には「自分ができることをやれば良いんだよ」と伝えようとは考えていますね。
子どもたちは前向きに活動に取り組んでいる
――「チームオレンジ・こさのジュニア」に関して、今後の展望をお聞かせください。
東梅:「チームオレンジ・こさの」と、児童主体のジュニアが交流する時間を設けたいと考えています。大人が中心となった「チームオレンジ・こさの」では、下校時のスクールガイドと重複しているメンバーが多いため、児童の見守りと合わせて高齢者の見守りを行っています。そのため普段から子どもたちと接する機会が多い状況ではありますが、認知症についてゲームなどを通じながら交流する機会を持ちたいです。
三浦:子どもも大人も分け隔てなく、お互いに見守り合い、支え合える町を目指し、これからも「チームオレンジ・こさのジュニア」の活動を支援していきたいです。ジュニアの活動や講座の受講を通じて、地元に愛着を持つ子が1人でも多くなることを期待しています。
取材・文/タケウチ ノゾミ 編集/イージーゴー
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