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ニュース 介護業界ニュース 2024/02/01

懐かしい思い出を語り合って認知症を予防!滋賀県甲賀市の市民グループ「山内エコクラブ」における地域回想法の取り組み

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介護のみらいラボ編集部コメント

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滋賀県甲賀市にある市民グループ「山内エコクラブ」では、2009年から地域回想法に取り組んでいます。地域回想法とは、身近な地域で昔の懐かしい思い出を語り合いながら、脳を活性化し情緒を安定させる手法です。地域の高齢者の皆さんは、一体どのように地域回想法に取り組んでいるのでしょうか。概要や取り組み方について、山内エコクラブの代表を務める竜王真紀氏に話を聞いてみました。

1.山内エコクラブはどんな団体?

――「山内エコクラブ」の紹介をお願いいたします。

甲賀市土山町山内にて、2009年に誕生した市民団体です。山内は自然が美しい中山間地域ですが、過疎化が進み、保育所や小学校も閉校が間近となっていた頃、この地域で改めて人や文化、自然などの身近な地域資源を見出したいと思い、子どもと大人が一緒になって地域の宝探しを始めることにしたのです。当団体では、特にお年寄りの記憶を活用した地域回想法と子どもたちによる環境保全活動に力を入れており、地域に住む一人ひとりが役割と生きがいを持ち、元気に暮らせる環境づくりを目指して活動しています。

2.地域回想法とは?

――地域回想法とは、具体的にはどのような取り組みなのでしょうか。

そもそも回想法とは、過去の物を見ながら経験や思い出を語り合う心理療法のことです。過去の出来事を話すことで精神的な安定が得られるほか、脳の活性化も期待できるため、認知症のリハビリにも活用されています。山内エコクラブでは「地域回想法」という名で活動を行っており、「その地域ならでは」を大切にしながら、昔懐かしい民具や農具などを見たり触れたりして、思い出や昔の地域の様子を語ってもらっています。また、その思い出や昔の地域の様子について次の世代である子どもたちに伝えることで、若者における高齢者の見方が変わる効果も期待できると感じています。

3.地域回想法を始めたきっかけ

――地域回想法を始めたきっかけを教えてください。

高齢者の知恵や経験を次の世代に伝えていきたいと思ったことがきっかけです。昔の人は、人と人との絆や環境、物などをとても大切にして生活していました。そのような生活をしていた高齢者の知恵はすばらしいものが多く、次世代に伝えていくべき内容ばかりです。そこで、高齢者の知恵を生かした街づくりがしたいと感じ、そのためには高齢者の知恵を次の世代に伝えていく機会を設ける必要があるのではと考えました。高齢者の話を聞くのは子どもたちにとって良い刺激となるほか、高齢者の皆さんにとっても、若い世代と交流するきっかけになります。地域回想法は、高齢者と若い世代の両方にメリットを与えられる取り組みだと考えています。

昔のおもちゃや生活用品を見ながら思い出を語り合うことも

昔のおもちゃや生活用品を見ながら思い出を語り合うことも

4.高齢者の地域回想法への取り組み方

――高齢者の皆さんは、どのように地域回想法に取り組んでいるのでしょうか。

当団体は甲賀市歴史文化財課と協働で地域回想法を実施しており、地域の資料館である「甲賀市甲南ふれあいの館」所蔵の民具を用いています。その民具を見たり触れたりしながら、4〜5人のグループで、昔について40分程度語り合うという流れです。使用する民具はそろばんやけん玉、わらじなど、日常生活に欠かせないものからおもちゃまで、さまざまなアイテムが揃います。これまでに、地域の人々が集まる公民館をはじめ、高齢者サロンやグループホームなどでも実施してきました。一回の参加者数は15人から30人程度で、主に60代後半から70代の方にご参加いただいています。

5.参加者さんからの反応は?

――参加者さんからの反応はいかがですか。

懐かしい民具を前にすることで、当時の思い出が一気に蘇ってくる方が多いと感じています。ただ昔を懐かしむだけでなく、「そういえば小学校の時の運動会で、こんな足袋を履いて走ったよなぁ」「農耕が身近だったから、勉強よりも家の手伝いをしないと怒られた」など、その民具を使っていた頃の様子がはっきりと思い出されるようです。地域回想法は、記憶の中に埋まってしまっていた大切な思い出を蘇らせる効果もあるのではないでしょうか。

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タケウチ ノゾミ(Nozomi Takeuchi)

ライター・編集者

福岡市在住のフリーライター・編集者。介護、医療、ビジネスを中心に幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は観劇と美術鑑賞、猫を揉むこと。

タケウチ ノゾミの執筆・監修記事

EGGO(イージーゴー)

イージーゴーは東京・九州を拠点にWEBコンテンツ、紙媒体、動画等の企画制作を行う編集制作事務所です。ライターコミュニティ「ライター研究所」も運営しています。

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