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ニュース 介護業界ニュース 2024/02/13

民具を前に懐かしい思い出を語り合うメリットは?滋賀県甲賀市の市民グループ「山内エコクラブ」の地域回想法の取り組み

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介護のみらいラボ編集部コメント

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滋賀県甲賀市にある市民グループ「山内エコクラブ」では、2009年から地域回想法に取り組んでいます。地域回想法とは、身近な地域で昔の懐かしい思い出を語り合いながら、脳を活性化し情緒を安定させる手法です。昔のことを思い出して語り合うことには、どのような良い影響があるのでしょうか。地域回想法のメリットや心身への影響について、山内エコクラブの代表を務める竜王真紀氏に話を聞いてみました。

1.地域回想法のメリット

――地域回想法の取り組みによって感じられるメリットについて教えてください。

単に楽しい時間を過ごせるだけでなく、地域に愛着を持てることは大きなメリットではないでしょうか。当団体では、単なる回想法ではなく「地域回想法」を行うことで、地元である山内に関する話題を主に語り合ってもらっています。自分たちが生まれ育った地域について語り合うと、地域に対する愛着が生まれるだけでなく、同じ土地で過ごした人同士の連帯感も再生されているように感じています。

また、高齢者の活躍の場ができることもメリットの1つです。地域回想法では、ただ単に高齢者同士が話し合うだけでなく、その話の内容を若い世代に伝えるようにしています。すると、普段は何かを教える機会のない高齢者に「先生」という新たな役割が生まれ、高齢者の生きがいにもなります。「昔の話を聞かせてください」とお願いしたばかりの頃は、「こんな話でいいの?」と戸惑っている方も多く見られましたが、子どもたちの反応が面白くて、今では色々な話をしてくださるようになりました。

2.子どもたちは現代とは異なる生活の様子に興味津々

――高齢者の話を聞いた子どもたちからの反応はいかがですか。

子どもたちは、現代とは異なる生活の様子に興味津々です。特に水や自然などの限られた資源を活かした生活についてのお話は、普段の生活における無駄を振り返る良いきっかけになったようでした。また、魚の減少などの川の様子の変化をはじめとした環境についてのお話も、自然の重要性を感じる貴重な機会となっています。地域回想法を通して、昔の知恵や自然のありがたみを感じてもらえたら嬉しいです。

地域回想法は昔のことを若い世代に伝える交流の場にもなっている

地域回想法は昔のことを若い世代に伝える交流の場にもなっている

3.地域回想法を維持するうえで気を付けていること

――地域回想法を継続するうえで、気をつけていることはありますか。

どのような意見が出ても、話を否定しないことです。地域回想法を行う際にはボランティアスタッフが運営を担当しているのですが、スタッフは常に聞き役に徹するようにして、とにかく和やかな雰囲気で進行するように気をつけています。やはり年を取ってから評価されたり、否定されたりすることに対しては、あまり良い気分にならない方が多いと考えています。スタッフを含め全員に楽しんでいただけるよう、嫌な気分になる方が出ないようにすることは気をつけていますね。

4.地域回想法による心身への影響

――2023年には、地域回想法による心身への影響について実証実験を実施したそうですね。結果はいかがでしたか。

この実証実験は、地域回想法を行う前と後の脈拍と血圧、心理状態を比較する実験です。博物館見学を健康増進や疾病予防に活用する「博物館浴」という活動を提唱している、九州産業大学の緒方泉教授によって行われました。民具に触れて語り合う前後の脈拍や血圧、心理状態を比較すると、脈拍が低下したほか、心理状態では怒りや抑うつなどの数値が低下し、活力が上昇する結果となりました。

参加者が地域回想法に取り組んでいる様子を見ていると、笑い合う機会も多く、お喋りを通して新しい友人ができるなど、皆さん非常にリラックスしています。今回、実験を通して地域回想法のリラックス効果が証明できたことは、非常に嬉しく感じています。

5.地域回想法を続けていき、より発展させていく

――今後の展望をお聞かせください。

これからも地域回想法を続けていき、より発展させていく予定です。例えば、昔使っていた「箱膳」という民具がありますが、これは昭和20年代頃の座卓がなかった時代に、お膳として一人ひとりが使っていた食事のアイテムです。この箱膳を、山内エコクラブでは50個程度復元しました。そして、この箱膳を用いて箱膳昼食を作り、来訪者のためのエコツーリズムを行っています。2023年も3組の受け入れを行い、箱膳の意味を学びながら田舎の良さを感じていただきました。

今後の課題としては、現在50代や60代の方が70〜80歳になった際には、現在地域回想法で使用している民具や農具は使えないことが挙げられると感じています。電化製品の登場など、時代と共に使用する道具は変化するものです。そのため、今後は市民の皆さんにも協力を求め、捨てる予定の昔の生活用具やおもちゃがあれば、回収し、地域回想法に活用していきたいと考えています。

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タケウチ ノゾミ(Nozomi Takeuchi)

ライター・編集者

福岡市在住のフリーライター・編集者。介護、医療、ビジネスを中心に幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は観劇と美術鑑賞、猫を揉むこと。

タケウチ ノゾミの執筆・監修記事

EGGO(イージーゴー)

イージーゴーは東京・九州を拠点にWEBコンテンツ、紙媒体、動画等の企画制作を行う編集制作事務所です。ライターコミュニティ「ライター研究所」も運営しています。

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