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ニュース 介護業界ニュース 2024/02/23

「トントンボイス相撲」が生まれたきっかけは?喉のリハビリにもなる"ゆるスポーツ"の魅力

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介護のみらいラボ編集部コメント

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力士を模した紙人形を台に載せ、指でトントン振動させて遊ぶ紙相撲。そんな幅広い世代に親しまれている紙相撲を、指ではなく声の振動によって紙人形が動くように工夫されたのが「トントンボイス相撲」です。喉のリハビリにもなる新しい紙相撲は、一体どのようなきっかけで生まれたのでしょうか。一般社団法人 世界ゆるスポーツ協会の大瀧篤氏に話を聞いてみました。

――「トントンボイス相撲」の開発のきっかけを教えてください。

高齢者の皆さんに、「嚥下能力に関するリハビリをもっと楽しんで取り組んで欲しい」と思ったことがきっかけです。以前、とある介護施設の経営者の方より、「嚥下能力の向上のために、高齢者が楽しく声を出せる方法はないか」と相談を受けました。本の音読や歌唱などのリハビリなども存在するものの、本に興味がない方や、歌うことが苦手な方は苦痛に感じることもあるそうです。そこで、施設の高齢者の皆さんが興味を持っているお相撲と、声を出す要素を組み合わせ、最終的にトントンと声を出すことで勝敗を競うトントンボイス相撲ができあがりました。

――開発時に大変だったことや工夫したことはありますか。

大きく2つあります。1つは、土俵の素材についてです。トントンボイス相撲は、プレイヤーの声をマイクで拾い、その声を土俵内部の機械に伝えて動かしています。その際、土俵の素材があまりツルツルし過ぎていると、紙人形力士が滑りすぎてしまい、思ったように動かせません。開発段階では、太鼓の表面のような革やカーテンのような布などさまざまな素材を試し、最も程よい揺れ具合のものを探すのに苦労しました。

もう1つは、紙相撲力士の大きさや形です。紙相撲制作を40年以上続けてこられた全国紙相撲倶楽部さんのご協力により、クオリティの高い紙相撲力士での勝負を実現することができました。皆さんが前のめりになる力士のサイズ感なども試行錯誤を繰り返し、ベストを追求して現在の紙相撲力士になっています。リアルな相撲のような技が繰り出されるので、毎回とても盛り上がりますね。

細かな部分までこだわって作られた紙相撲力士

細かな部分までこだわって作られた紙相撲力士

――その他、高齢者の皆さんにおすすめしたいゆるスポーツはありますか。

腕の上下運動のリハビリになる「打ち投げ花火」です。このスポーツは、「花火が好きだけれど、外出できないから見に行けない」という高齢者の方からの声を参考に開発しました。ヘリウムが入っている風船を用意し、天井に映し出された的に向かって風船を打ち上げると、大きな花火がドーンと上がる仕組みです。センサーとプロジェクションの組み合わせで実現しています。以前、介護施設内で大会を開いた際には、時間を忘れて投げ続けている方もいらっしゃいました。

また腕の水平の動きのリハビリになる「こたつホッケー」や、表情筋を鍛えられる「ARゆるスポーツ」も高齢者におすすめです。「こたつホッケー」は、こたつにプロジェクターでみかんを投影し、そのデジタルみかんをお茶が入った湯呑で飛ばし合うスポーツです。湯呑には本物のお茶が入っていて、早く動かしお茶がこぼれると「ペナルTEA」となり、相手にポイントが入ってしまいます。お茶の量は年齢が高いほど少なくなるため、若い人とお年寄りでも良い勝負になる仕組みとなっています。

「ARゆるスポーツ」はその名の通りARフィルターを使ったスポーツで、顔さえ画面に映れば誰でも楽しめることが特徴です。30秒間で最も多く眉毛を上下できた人が勝ちの「まゆげリフティング」や、口を開けたり、すぼめたりして画面上の風船を一番早く割った人が勝ちの「チューチューバルーン」など、どれも座ってできるものばかりです。ゆるスポーツを通して、楽しく身体を動かしていただけたら嬉しいです。

――今後の展望をお聞かせください。

やっとリアルで人が集まれるようになってきたので、もっとイベントを増やしていきたいと考えています。ゆるスポーツは、これまで実際にプレイしている人の反応を見ながら進化を続けてきました。例えば中心部分に大きな穴が空いているラケットで卓球をする「ブラックホール卓球」という競技があるのですが、最初はラケットの穴にボールが通ってしまった際はただただ失点にしていました。しかし、ある時誰かが、穴にボールが通った際に「ナイスホール」と言って笑ったことをきっかけにルールとして採用され、今では「ナイスホール」の声掛けは最も重要なルールになったのです。失点したのに褒められるというなんともユニークな卓球に進化しました。

このように一般の方からヒントをもらうことは多いため、プレイヤーである高齢者の方や介護スタッフの方と直接話せる機会をもっと増やしていきたいと考えています。また、トントンボイス相撲は家庭でも楽しめるおもちゃとして発売されているほか、国境を超えて、台湾や香港、アメリカ、エストニアなどの国々でもプレイされています。いつかトントンボイス相撲の世界大会を開くのも面白いのではないでしょうか。

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タケウチ ノゾミ(Nozomi Takeuchi)

ライター・編集者

福岡市在住のフリーライター・編集者。介護、医療、ビジネスを中心に幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は観劇と美術鑑賞、猫を揉むこと。

タケウチ ノゾミの執筆・監修記事

EGGO(イージーゴー)

イージーゴーは東京・九州を拠点にWEBコンテンツ、紙媒体、動画等の企画制作を行う編集制作事務所です。ライターコミュニティ「ライター研究所」も運営しています。

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