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ニュース 介護業界ニュース 2024/03/21

「見守り」と「支え合い」を両立させる音声配信・視聴機能を搭載したアプリの魅力

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介護のみらいラボ編集部コメント

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認知症の代表的な症状として知られる「記憶障害」や「見当識障害」により、近年ますます増加しているのが高齢者の迷子です。高齢者向けのGPS機器の性能も進化し続けていますが、確実な対策がないのが実情です。そんな社会課題に対して、互助とICTという視点からアプローチするのが「みまもりあいアプリ」です。アプリの現状と今後の可能性とは......? 発案者である「みまもりあいプロジェクト(一般社団法人セーフティネットリンケージ)」代表の高原達也氏にお話を聞いてみました。

1.「居場所支援」機能とは?

――「みまもりあいアプリ」に2023年から実装された「居場所支援」機能について教えてください。

「声」を活用して高齢者に新しい居場所を提供する機能で、認知症のご本人や認知症に携わる方々をつなぐ福祉SNS・ラジオ「ケアチャンネル」と、多世代でつくり上げる「地域チャンネル」の2種類があります。

2つのチャンネルに共通する目的は、必要とする情報(当事者・ご家族・支援団体・福祉関係者が経験してきた声<体験・ノウハウ・知恵>)を音声を活用して集め、共有し合えるプラットフォームを提供して、大切な「受容期間・備える期間」を支えるとともに包括的ケアマネジメント(社会のつながりの再生・生活支援等)をサポートし、高齢者のQOLを改善し、孤独孤立を防止することです。福祉と地域をマッチングさせることで新しい居場所づくりをサポートします。

認知症の課題の1つとして「第三者に障害が見えない」ことから生じる「関係性の障害」があり、当事者は「人に迷惑をかけたくない思い・自尊心による抵抗・受容がうまくできない」ことから、社会生活や地域と疎遠が生じやすく、また、自分自身がその先に何が起きるのかわからない不安・葛藤・混乱の中で、長く孤独・孤立した状態に陥る危険があります。特に79歳以下で認知症と診断された方々はまだまだお元気ですし、周囲から支援の必要性が理解されにくく孤立しがちです。しかしアプリは個人情報の登録が不要で情報連携(配信情報を受け取る・音声番組を聞く等)できる仕組みになっているのでほど良い距離感を保てます。

なお当機能は、経済産業省が実施する「認知症共生社会に向けた製品・ サービスの効果検証事業」にも採択されています。

――具体的に、「ケアチャンネル」と「地域チャンネル」では何を提供しているのでしょうか。

「ケアチャンネル」では、視聴者には個人情報非登録の状態で自分のペースで番組を視聴できる環境を、情報の発信者には誹謗中傷されない、いいねボタンや再生回数の表示がない環境を提供します。また発信者の判断によっては、番組登録者と直接SNSで交流(アンケート・チャットなど)することも可能です。

視聴者は同じ悩みを抱えながら生活している認知症の方とそのご家族、専門職や学生などの声を、身分を明かさず「覗き見」ならぬ「覗き聴き」できるので、自分が欲しかった情報や居場所にめぐり会うチャンスが拡大します。

経産省支援事業で実施した大阪大学×認知症疾患医療センターとの効果検証事業(スマホ所有の当事者とご家族:約60人に案内)では、研究モニター参加希望98%、研究モニター参加84%、継続視聴の希望87%の結果を得ました。また、研究に参加頂いた当事者とご家族の中から4名の方が「名前と顔がでない声だけであれば、自分の体験談を話しても良い」とおっしゃってくれました。

実際に発信するとすっきりとした気持ちになって頂けたようで、QOLを高める効果もあるように感じました。発信する側にとっては、聞く人を制限することができるので、誰にも言えない、相談するまでもない感情を独り言として発信し、ストレス解消効果も期待できます。事実、声にするだけで満足、心の整理ができるという方もいらっしゃるでしょう。施設の従業員の方には、ぜひ利用者さんにアプリのダウンロードをおすすめする、あるいはダウンロードをお手伝いしてほしいです。

ケアチャンネル

ケアチャンネル

一方、「地域チャンネル」は、大学生や高校生、支援団体など若い世代が中心になり、地域の情報を「声」で視聴者に提供し、行動を促します。たとえば、高齢者のお散歩支援としてウォークラリーや音声ガイド付きのスタンプラリーなどを企画・実行しています。若い世代の情報発信者も楽しく参加するうちに、いつの間にか高齢者の見守り隊になっていて、地域に貢献している仕組みです。自治体や商店街などとも協働で取り組んでいるので、地域の活性化にもつながっています。

2.「みまもりあいアプリ」利用者からの反応は?

――「みまもりあいアプリ」利用者からの反応はいかがですか。

ベースの「みまもりあい(GPS配信・捜索依頼)」機能については、ご家族や施設からは「ライトに捜索ができるからありがたい」といった声が寄せられます。というのも、認知症の方や子どもが迷子になる度に警察に通報するのは気がひけるもの。当アプリを利用すればコトを大げさにしなくても済みます。また、ご家族だけではなく地域を巻き込んで捜索できるので、体力的・精神的・時間的な負担の軽減にもなると感謝されます。

一方、協力者の皆さんからは、気軽に人助けができるのが良いという言葉を頂きます。また協力者全員に発見連絡通知(見つかったことのお知らせと御礼)が配信される仕組みで、次回も協力しようという気持ちにさせてくれるという感想も頂いています。実際に保護したケースでも、直接ご家族に連絡することができる仕組みがあるので、発見者の負担も軽減できます。

施設関係者からは、強い味方ができたという声も。利用者さんがいなくなった際にスタッフみんなで探しまわり、誰かが保護したという発見連絡通知を受けることで、一斉にスタッフが戻って来ることができたそうです。一番良く聞くのは、施設関係者だけで探すのではなくて、地域の互助の力も借りることができる、備えることができるという声です。地域と施設がアプリを通じて連携するきっかけにもなったという声も頂いています。

――認知症の方も利用できる「居場所支援」機能については

同じ境遇の「仲間」の声を聴いたり、あるいはご自身が情報を発信することで、「1人ではない」「仲間がいる」と感じていただけているようです。音声ガイド付きスタンプラリー等の地域での取り組みは外出のきっかけにもなりますし、声を聴いてそれをきっかけに地域の団体・店舗の方と顔と顔を合わせて交流できるので出会いのきっかけになるとも。

また、声を届ける機能は命の現場でも重要な役割を担っています。これは現実にあったことなのですが、介護施設で患者さんがお亡くなりになる時に、介護士が患者さんの「最期の言葉」を音声で残していました。特にコロナ禍は家族のお見舞いも人数が限定されていたこともあり、遠方のご家族ならなおさら看取りの瞬間に立ち会えないことも。アプリの音声配信機能を利用することで、人と人とが距離や時間を越えてつながりました。また、こうしたアクションは、施設への入所を検討しているご家庭にとって施設の取り組みを知る材料になります。「声」には嘘がないので施設の実態を把握できます。

3.多言語展開により介護時のコミュニケーションを円滑にしたい

――今後の展望についてお聞かせください。

現在、当アプリは日本語に限定されていますが2024年度に多言語展開を計画しています。今後介護施設にも外国人のスタッフが増えると予想されます。そんな時に患者さんとスタッフの間に立ちはだかるのが言葉の壁です。それでも話すだけならジェスチャーもあるし意思疎通はなんとかなるかもしれません。しかし読み書きではどうでしょうか。日本語の読み書きにはひらがな・カタカナ・漢字の3種類があります。また、どのような業界にも専門用語がありますが、介護業界にも、たとえば「床ずれ」など独特の専門用語があります。アプリを通じて日本語を母国語に翻訳できたら、さらにコミュニケーションが円滑になると考えました。

ポイントは、翻訳と言ってもインバウンド翻訳ではなくビジネス翻訳を導入する点です。現在の翻訳無料アプリは文字制限もあり長文対応はしていません。特に介護用語は専門性が高く、ニュアンスがとても繊細なので短文の翻訳では高齢者のニーズを汲み取れません。そんな現状に当アプリに搭載予定のビジネス翻訳機能でお手伝いできないか模索中です。ぜひ私たちの活動にご期待頂ければと思います。

取材・文/松丸まきこ 編集/イージーゴー

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出典:取材・文/松丸まきこ 編集/イージーゴー

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イージーゴーは東京・九州を拠点にWEBコンテンツ、紙媒体、動画等の企画制作を行う編集制作事務所です。ライターコミュニティ「ライター研究所」も運営しています。

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