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ニュース 介護業界ニュース 2024/07/26

高齢者の誤嚥予防にも役立つ"声ヨガ"とは?日本声ヨガ協会による健康寿命延伸の取り組み

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介護のみらいラボ編集部コメント

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高齢者になるとコミュニケーションを取る機会が減ったり、筋力が低下したりすることで、気管に飲食物が入る「誤嚥(ごえん)」を起こしやすくなります。このような誤嚥の防止に役立つのが、声に関わる筋肉を動かし、声を出しやすくする"声ヨガ"です。健康寿命の延伸にも効果的な声ヨガとは、一体どのようなヨガなのでしょうか。一般社団法人 日本声ヨガ協会理事の岩見知香氏に、活動内容や声ヨガの効果について聞いてみました。

1.日本声ヨガ協会とは?

――日本声ヨガ協会の概要や活動内容を教えてください。

「声で心を整える」をコンセプトとして、声ヨガ教室の開催や指導者の育成などを実施している団体です。活動内容は大きく3つあります。

1つ目が健康寿命の延伸です。声ヨガ協会ではシニアの介護予防に取り組んでおり、なかでも高齢者に多い誤嚥・認知症・うつ予防に注力しています。健康寿命の延伸を目的とした介護予防講座も開催していて、介護施設や公民館などで出張教室を行うこともあります。

2つ目は、健康経営の支援です。声ヨガは呼吸・瞑想・発声の3つをベースとしているのですが、そのうちの一つである瞑想を中心として、従業員のみなさんの心を整える方法や、仕事へのモチベーションの高め方などをお伝えしています。

3つ目は、声ヨガを社会に広げていくための人材の育成です。その他にも、「喉トレ健康かるた」をはじめとした健康コンテンツの企画・販売も実施しています。

2.声ヨガとは?

――そもそも、声ヨガとはどのようなヨガなのでしょうか。

声ヨガとは、交流と社会的健康を促進するコミュニケーションのヨガです。呼吸・瞑想・発声の3つをベースとして、コミュニケーションのツールである声を磨くためのエクササイズを実施します。「心と身体をほぐしながら声を出しやすくするヨガ」と捉えていただくと、イメージしやすいかもしれません。

声ヨガの特徴は、年齢や性別を問わず、誰でも簡単に取り組めることです。ヨガと聞くと、マットや難しいポーズを想像する方も多いかもしれません。しかし、声ヨガでは喉周りの筋肉や上半身を中心に動かすため、マットは必要なく、椅子に座ったままの状態でも取り組めます。さらに、エクササイズはどの動きも複雑ではなく、日常生活に取り入れやすいものばかりです。今までヨガをやったことがない方や、あまり運動の習慣がない方も、楽しんで身体を動かせるのではないでしょうか。

岩見氏(写真左)と、身体の不調を抱えていたものの、声ヨガによって元気を取り戻したお母さん(写真右)

岩見氏(写真左)と、身体の不調を抱えていたものの、声ヨガによって元気を取り戻したお母さん(写真右)

3.高齢者向けの活動を始めたきっかけ

――高齢者向けの活動を始めたきっかけを教えてください。

声ヨガのエクササイズについて、多くのシニアの方に興味を持っていただけたことがきっかけです。声ヨガでは主に若い世代の方に向けて教室を実施してきたのですが、予想に反して、たくさんのシニアの方に教室へご参加いただいたのです。そこで参加の理由を聞いてみると、「若々しい表情でいたい」「年をとってもおいしいご飯を食べられる状態でいたい」などが多く、声ヨガの活動は健康寿命の延伸に深く関わってくるのではないかと感じました。

高齢になると口元の筋肉が衰えてくるほか、舌をはじめとした口に関連する機能も低下する傾向にありますが、声ヨガで喉周りの筋肉や上半身の筋肉を動かし、声が出やすい状態を保てば、誤嚥予防や嚥下機能を鍛えることにも繋がります。また、声ヨガには複雑な動きもないため、まさに高齢者にぴったりのヨガなのではとの思いから、高齢者向けの活動を始めるに至りました。

4.声ヨガ教室のエクササイズの内容

――高齢者向けの声ヨガ教室では、どのようなエクササイズを行うのですか。

高齢者向けの教室では、主に認知症予防・誤嚥予防・うつ予防の3つの教室を実施しています。「ヨガと認知症予防はあまり関係がないのでは?」と感じるかもしれませんが、声ヨガではデュアルタスクに取り組んでいただくことで、脳トレに繋げています。

具体的なエクササイズとしては、肩甲骨回しと発声を同時に行うなどが挙げられます。肩甲骨をぐるぐると回しながら、口角を上げて「カラカラカラカラ」と言うことで、脳の活性化を狙うエクササイズです。

声ヨガのエクササイズは同時に2〜3つのことに取り組んでいただくものが多いため、声を出しやすくするだけでなく、認知症予防効果も期待できるのです。他にも、うつ予防の教室では、エクササイズにマインドフルネス瞑想を取り入れています。

声ヨガ協会主催のイベントにてエクササイズに取り組む参加者さん

声ヨガ協会主催のイベントにてエクササイズに取り組む参加者さん

5.高齢者向け教室の開催時に気をつけていること

――高齢者向け教室の開催時に気をつけていることはありますか。

教室は1回60分程度と少し長いので、とにかく参加者さんの様子を見ながら、皆さんの体調に合わせて実施することを心がけています。声ヨガは一般的なヨガとは異なり、声を常に出しながら行うため、水分補給の声かけや休憩を定期的に挟むことも意識していますね。休憩の時間には、「〇〇さんは前回よりも腕が上がるようになりましたね」「皆さん今日はとても声が出ていますね」などと声をかけながら、参加者さんと積極的なコミュニケーションを取るようにもしています。

また、月に1回など定期的な開催が決まっている教室では、毎回宿題を出すことも意識している点の一つです。宿題が出ると記憶に残りやすくなるほか、やらなければという気持ちからエクササイズを継続しやすくなると感じています。声ヨガはどれも取り組みやすいエクササイズばかりなので、ご飯の前に口の中を動かして唾液を出したり、テレビを見る前に背中の曲げ伸ばしをしたりするなど、日常生活に簡単に取り入れられます。宿題が習慣化のきっかけになれば嬉しいです。

6.参加者さんからの反応は?

――高齢者向け教室は介護施設でも開催されているそうですね。参加者さんからの反応はいかがですか。

皆さんとても真剣に、そして楽しんで声ヨガに取り組んでくださっています。最初は思うように身体を動かせない方もいらっしゃいますが、回数を重ねるうちにどんどん上手になっていかれる方が多いです。実際に参加者さんからも、「声ヨガに取り組んでみたら呼吸が楽になり驚いています」「楽しくエクササイズに取り組めました」などの感想が寄せられていて、とても嬉しく感じています。これからもさまざまな場所で教室を開催することで、より多くの方に声ヨガに取り組んでいただき、高齢者の健康寿命の延伸に役立つ活動を継続していきたいと考えています。

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タケウチ ノゾミ(Nozomi Takeuchi)

ライター・編集者

福岡市在住のフリーライター・編集者。介護、医療、ビジネスを中心に幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は観劇と美術鑑賞、猫を揉むこと。

タケウチ ノゾミの執筆・監修記事

EGGO(イージーゴー)

イージーゴーは東京・九州を拠点にWEBコンテンツ、紙媒体、動画等の企画制作を行う編集制作事務所です。ライターコミュニティ「ライター研究所」も運営しています。

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