利用者さん全員が楽しめるレクリエーションを考えるコツは?レクの参加率を上げる方法も紹介
介護施設に欠かせないレクリエーション。ただ、毎日実施しているうちにバリエーションが尽きてしまい、「頑張ってはいるけれど、なかなか良い案が思いつかない」「なんだかマンネリ化してきてしまった」などでお悩みの方も多いのではないでしょうか。集団でのレクを考える際のコツについて、介護エンターテイナー・作業療法士として活動する石田竜生氏に話を聞いてみました。
1.利用者さん全員が楽しめるレクリエーションを考えることは不可能
――利用者さん全員が楽しめるレクを考えるために、意識すべきことを教えてください。
残念ながら、利用者さん全員が楽しめるレクリエーションを考えることは不可能だと考えています。その理由は、利用者さんの年齢や障がいの度合い、その方の好みなどによっても、楽しめるかどうかは変わってくるためです。例えば日本で人気のスポーツに野球が挙げられますが、野球に興味がない方もたくさんいらっしゃいますよね。このように、興味や楽しさの基準は人それぞれです。そのため、「楽しませること」にフォーカスを当てるのではなく、「このレクをすると利用者さんにとってどのようなメリットがあるのか」を常に考えてみてください。
2.目的を持ってレクを実施するよう心がけて
――とはいえ、「楽しんで欲しい」という気持ちを諦めきれないこともあると思います。
もちろん、利用者さんに楽しんでいただけることが一番ですよね。このような場合は、「楽しむ」という行為について、レクの場面だけを切り取って考えるのではなく、時間軸をずらして考えることをおすすめします。例えばあるレクを実施したところ、利用者のAさんがつまらなさそうにしていたとします。しかし、このレクで足を動かすことは、3ヶ月後のAさんの歩く喜びに変わっているかもしれません。レクは機能回復のために行っているため、現在のAさんにとってはあまり楽しくないように見えることでも、将来の楽しさや喜びに繋がっている可能性は非常に高いといえます。その場の反応だけを見て判断せず、目的を持ってレクを実施するようにしましょう。
3.つかみの後は動機づけを行い参加率アップ
――たしかに、機能回復のために実施していることを忘れないようにしたいですね。施設ではレクへの参加を拒否する参加者さんもいらっしゃいますが、参加率を上げるためのコツはありますか。
最も重要なのは、レクの実施前に「つかみと動機づけ」を行い、その場の空気をよくすることです。それぞれについて説明すると、つかみとは、利用者さんの気持ちをこちら側に向けることです。
皆さんのなかにも、「○時になったのでラジオ体操をしましょう」と声をかけたものの、あまり参加してもらえなかった、といった経験をしたことがある方も多いのではないでしょうか。このように、利用者さんの意識がバラバラの状態でいきなり体操を始めても、興味を持っていただけないことがほとんどです。そのため、体操を始める前に、最近の出来事や季節に関する小話をして、意識を職員側に持ってくることが重要です。
そして、つかみの後は動機づけを行いましょう。動機づけとは、その名の通り、体操やレクをする目的を共有することです。「この体操をすると、脚の筋肉が鍛えられて転びづらくなりますよ」といったように、体操やレクによって得られる効果を説明してみてください。すると、「それならやってみようかな」という気持ちになり、参加率の上昇に繋がりやすくなりますよ。
――施設によっては、利用者さんに説明を理解してもらうことが難しい場合もあるかと思います。その場合は、どのような対応が効果的でしょうか。
同様に、空気づくりが重要だと考えています。私は全国各地の施設で体操教室を実施しており、その際は必ず、「つかみと動機づけ」によって空気づくりをしています。すると、今までウトウトしていた方が、突然隣の方の真似をして動いてくださるようになったり、スタッフさんから「Aさんはいつも表情が硬いのですが、今日は久しぶりに笑顔を見ました」という感想をもらったりと、その場の雰囲気によって、参加率や楽しんでいただける度合いが大きく変わると感じています。身体がうまく動かない方でも、周囲の方が楽しそうにしている様子を見ることで、ある程度のリラックス効果を得られるのではないでしょうか。
4.日常生活の場面を取り入れた説明でレクの目的を理解してもらう
――その他に、利用者さんへレクの目的を説明する際のポイントはありますか。
日常生活の場面を用いた説明をすることです。例えば「この体操をすると腕が動きやすくなりますよ」という説明よりも、「お風呂で背中を洗う時に苦労していませんか。この体操をすると、腕が動きやすくなって背中を楽に洗えますよ」と言う方が、役立つ場面を具体的にイメージできるのではないでしょうか。日常生活の場面を取り入れた説明をすると、利用者さんに体操やレクの目的を理解していただきやすくなるため、ぜひ取り入れてみてください。
5.「考えたものが利用者さんの役に立って欲しい」と気持ちを込めて
――レクに悩む全国の介護職員さんに向けてメッセージをお願いします。
毎日レクを考えている職員さんのなかには、「頑張って利用者さんを楽しませなくては」「考えたレクがうまくいかなかったらどうしよう」といったプレッシャーを感じている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、このように力が入りすぎると、利用者さんとの間に壁ができてしまい、思ったようにレクを進められないケースも多いように感じています。余計な力を入れずに、「考えたものが利用者さんの役に立って欲しい」との気持ちを込めて一生懸命取り組めば、自然と壁が取り払われ、よりスムーズにレクを進められますよ。
また、YouTubeの動画を参考にすることもおすすめです。最近はレクに関する動画を投稿している方もたくさんいるので、利用者さんにはYouTubeの動画の通りに体操をしていただき、職員さんはサポートに回って盛り上げるなどの方法も効果的だと感じています。私自身も「介護エンターテイメント脳トレ介護予防研究所」というYouTubeチャンネルにて、さまざまな体操の動画を投稿しているので、参考にしていただけたら嬉しいです。レクの内容を考えることに時間を割くのではなく、既存のアイディアを活用しながら、より良い空気づくりを目指してみてください。
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介護のみらいラボ編集部コメント
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