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ニュース 介護業界ニュース 2021/11/26

業務非効率な現場を介護情報連携プラットフォーム「SCOP」が救う!

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介護のみらいラボ編集部コメント

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文:中澤仁美

ミーティングをする男女3人

善光会ミーティングにて。写真左から遠藤さん、佐藤さん、和田さん。

介護分野の需要がますます旺盛になる一方、介護現場では業務効率の低さが指摘され、スタッフの離職率が高止まりしています。こうした現状は多方面からのアプローチで改善していく必要がありますが、IT導入は一つの大きな武器になり得ます。ここでは、業界初となる機能を備えた介護情報連携プラットフォームSCOPの開発や普及に携わっている方々に、開発にかけた思いや導入の成果について伺いました。

【お話を伺った方】
佐藤拡史(社会福祉法人善光会サンタフェ総合研究所 兼 事業戦略室)
遠藤丈文(社会福祉法人善光会サンタフェ総合研究所 兼 事業戦略室 兼 総務)
和田真央(社会福祉法人善光会特養フロース東糀谷 ユニットリーダー)

SCOP(smart care operating platform)とは?
「最も使いやすく」「最も安く」をめざし、善光会サンタフェ総合研究所がAMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)から採択を受けて開発をした介護情報連携プラットフォーム。他社システムとの連携を可能にし、情報を一元管理できる点が業界初となる。現在、SCOP HomeとSCOP Nowという2つのサービスを提供している。

・SCOP Home
現場のニーズから生まれた介護記録向けのiPadアプリ(科学的介護情報システムLIFEにも対応)。携帯用のIT端末を使えばリアルタイムで簡単に記録作業を行うことができ、スタッフ間の情報共有や連携もタイムリーに行うことができる。

・SCOP Now
転倒・転落予防の見守りや排泄予測といった介護現場で利用されるセンサー機器等の情報を集約し、現場の状況やアラート情報などを一元管理できるiPhoneアプリ。現場スタッフが必要とする情報をすぐに確認・活用できる。

ITを導入すれば介護現場はがらりと変わる

こちらを向いて微笑む遠藤さん

誰もが使いこなせるアプリを作りたいという遠藤さん

――SCOPを開発することになった経緯を教えてください。

遠藤:介護記録の作成が二重三重の負担になって現場を圧迫しており、どうにか改善したいと思ったことがきっかけです。多くの現場では、まだ携帯用のデジタル端末が普及しておらず、「いったん紙にメモした内容を、後であらためてパソコン入力する」という効率の悪い状況が続いています。

こうした環境では、受け持ちの利用者数が多ければ多いほど、メモする内容が多くなって混乱しやすくなり、記録の入力漏れや入力ミスにつながる可能性が高まります。また、時間が経過すればするほど記憶が不鮮明になっていくので、思い返すのに時間がかかります。他の業務をすべて終わらせてからメモを見返して記録していくのであれば、時間がかかって残業が発生してしまう懸念もあります。テクノロジーの力を活用すればこれらの記録問題を改善できると信じ、システム開発に乗り出しました。

――SCOPの特徴やこだわりを教えてください。

遠藤:介護スタッフの年齢や国籍は幅広く、ITや言語に不慣れな方もいるので、誰もが使いこなせるようにさまざまなアイデアを詰め込みました。例えば、とにかく使いやすさを重視し、初めて触れる方でも分かりやすい画面設計にしています。具体的には、必要な情報を一画面に集約して閲覧できるようにし、画面を切り替える必要を最小限に抑えました。簡単な内容であれば端末のタップ入力でササッと記録できますし、定型文などを組み合わせてより詳しい内容にすることも可能です。利用者さんに対応しながらリアルタイムで操作すれば、「バイタルサイン測定→食事量の観察→睡眠状況の確認」といった業務の流れに沿って正確な情報を記録することもできます。

開発にあたっては、現場の声を十分に取り入れるため、各階層(施設長・副施設長、フロアリーダー、ユニットリーダー、一般スタッフ)ごとにヒアリングを徹底的に行いました。その結果、「管理者は全体の情報を一目で把握したい」「スタッフは利用者さん一人ひとりの情報を確認したい」というように、階層ごとのニーズが浮き彫りになりました。また、「体調不良などで入浴の予定を変更する利用者さんが出た場合、全体の調整が必要になることも多いため、全員の入浴スケジュールを一画面で見られるようにしてほしい」という現場ならではの意見も出ました。これらを踏まえて仕様の改善を繰り返し、現場が満足できるシステムに仕上げていったのです。

――こだわり抜いた製品でありながら低価格で提供していますね。その理由は?

遠藤:介護保険制度の中で運営するという事業の特性上、IT化に割ける予算は限られているのが実情です。しかし、一般的にITを導入するためには大きなコストがかかり、それが介護現場の発展を阻害する要因となっています。こうした状況を打破するためには、低価格のシステムを提供し、広く普及させていくしかないと考えたからです。

佐藤:相場に比べて約1/10~1/5の価格に設定しています。どの事業所からも「安すぎる」と驚かれるので、そのつど開発背景や私たちの思いを丁寧にお伝えしています。

業務改善やチーム連携があってこそ質の高いサービスを提供できる

男女スタッフと話すユニットリーダーの女性、和田さん

介護スタッフに声をかける和田さん

――SCOPを使ってみてスタッフの皆さんの反応はどうでしたか。

和田:タップ入力での記録はとても快適です。記録時間が短縮できる分、利用者さんと接する時間がしっかりと確保できています。私が学生だったころ、実習はすべて紙での記録だったので書く作業にとても時間がかかり、絶えず記録の負担が付きまとっていました。そのため、食事介助や排泄介助といった介護者としてのメイン業務でさえ、ひたすらこなすだけになりがちで、やりがいや充実感から遠ざかっていました。今はSCOPを活用することで、「やりたい介護」が存分にできていると感じています。

また、関係者とタイムリーに情報共有したり連携したりできるメリットを肌で感じています。事故発生などの緊急時であっても、現場の介護職が看護師と連携することで対処や処置の方法に関するアドバイスをすぐにもらうことができます。緊急時であればなおさら、スムーズに対応することで利用者さんに安心と満足を提供できるはずです。

佐藤:全国に系列施設を持つクライアントは、申送り機能に大変満足されていました。現地に足を運ばなくても、申送り内容を見るだけでその施設の状況を把握でき、問題があれば早期発見・早期対応が可能になります。また、事故発生時など情報を素早く見返したいときにも真価を発揮しています。デジタル情報をたどって当時の状況や利用者さんの体調変化を確認できるので、速やかに対策を議論することができると好評です。

並んで歩く男女、佐藤さんと和田さん

タブレットの画面を見る佐藤さんと和田さん

――スタッフ間の日常的なコミュニケーションにも変化があったのではないでしょうか。

和田:確かに、スタッフ間のチームワークが良くなっているように感じます。一般的に、同じ現場にいても職種により立場や考え方が違えば認識のずれが生じ、コンフリクト(意見の相違による衝突)につながることがあります。しかし、SCOPを通して時間的・空間的制約を超えたやり取りができることで、自然とお互いの思いや要望を共有しやすくなったことが良い影響となって表れたのだと思います。

遠藤:タイムリーな情報共有は、コロナ禍においてますます重要になりました。例えば、重要性・緊急性が高い発熱に関する情報はスタッフ全員が一様に把握すべきですし、発生時だけではなくその後の経過も含めてそのつど共有していく必要があります。そうしてシステムを介して連携を深めていくことで、チームワークがどんどん活性化し、お互いの信頼関係が強くなっていきます。チーム一丸となって生産性を高めることができれば、結果的に質の高い介護サービスを提供することができるでしょう。SCOPを使ってみて、ぜひこのことを実感していただきたいと思っています。

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プロフィール

中澤仁美(なかざわひとみ)

ナレッジリング 編集者・ライター

慶應義塾大学環境情報学部を卒業後、中学受験塾の国語科講師などを経て、編集プロダクション・ナレッジリングに参画。
編集者・ライターとして、医療・介護・保育分野の取材やライティングに数多く携わる(保育士資格保持)。