【今日は何の日?】5月11日=川崎さいか屋でルノワール作『少女』が盗難 (1962年) / 雑学ネタ帳

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ちょうど60年前の1962(昭和37)年。国鉄と京浜急行の川崎駅(京浜川崎駅)そばにある百貨店「さいか屋」(2015年に閉店)にて、ルノワール作の絵画「少女」(時価約1,000万円相当)が何者かによって盗まれました。
事件が起きたのはさいか屋7階の催し場にて、5月5日から開催中の「西洋美術展」でのこと。所蔵家から貸し出されたピカソやマネスなどの油絵やデッサン画など61点が展示されていました。この日の夜、会場奥に展示されていた藤山愛一郎さん(当時・経済企画庁長官)所蔵のルノワール作品「少女」が消えていることに警備員が気がつき、直ちに所轄の川崎署へと届け出ました。
35(昭和10)年頃、東京にてこの絵を入手した藤山さんは書斎に飾り、いつも癒されていたそうです。それだけにショックは大きく、無事に戻ったら、この絵を国立西洋美術館に寄贈することを約束しつつ、犯人に返却を求めました。
約2か月が過ぎた7月2日のこと。東京駅八重洲口に停車中のトラック荷台で、新聞紙にくるまれた状態で「少女」は発見。胸を撫でおろした藤山さんは、宣言通りにこの絵を国立西洋美術館へと寄贈したのでした。
ところが騒動はこれで終わりませんでした。寄贈された絵は何と滝川太郎さんという画家の贋作だったことが判明。のちの調査で滝川さんはこれまで200作以上のルノワール作品を精巧に贋作していたことが明らかになったのです。
いくら寄贈されても、贋作とあっては国立西洋美術館側も展示するわけにはいかず、以降60年に渡って「滝川製ルノワール作品」は展示されることなく、封印されたままとなっています。
もし、あの時、催事に絵を貸し出さなかったら......。盗難されなかったら......。歴史にifは禁物とはいえ、滝川製ルノワール作品がそのまま平和に藤山さん宅の書斎に飾られ続けていたことを考えると、真贋の意味とは? 絵画の存在価値とは? と、さまざまな問題を投げかける事件ともなりました。
そんな事件の舞台となったさいか屋の跡地は現在、パルコの商業施設「川崎ZERO GATE」となっています。
参照:昭和37年5月12日付の読売新聞夕刊
文 / 高木圭介
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介護のみらいラボ編集部コメント
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