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【今日は何の日?】11月29日=完成直前に主演俳優が事故死!松竹映画『大願成就』が公開(1959年)/ 雑学ネタ帳
《画像はイメージです》
64年前の1959(昭和34)年。主演俳優の事故死で完成が危ぶまれていた松竹映画『大願成就』(生駒千里監督)が、この日に公開となりました。
事故は11月3日の夜10時40分ごろに発生。松竹所属の俳優・高橋貞二さん(当時33歳)が運転する乗用車が横浜駅前(横浜市西区)で、走行中の横浜市電(中央市場発・浦舟町行)と衝突。顔面を痛打した高橋さんは付近の病院へと運ばれましたが、夜11時20分ごろに死去。神奈川県警戸部警察署の調べによりますと、事故原因は飲酒運転していた高橋さんが、前の車を追い越そうとして市電の軌道へと入ってしまい、電車と正面衝突したものと見られています。
当時、高橋さんはサラリーマン映画『大願成就』を撮影中。あと3分の1のシーンの撮影を残したままの事故死だったため、松竹側も大慌てとなります。未撮影部分でもっとも重要なシーンは、ヒロインの桑野みゆきさんが高橋さんに愛の告白をするシーンでした。
このピンチを救ったのは、高橋さんと松竹入社の同期にあたる佐田啓二さん(当時32歳)でした。俳優の中井貴恵さん、中井貴一さんのお父さんです。佐田さんはこの時、『人間の条件 第四部 戦雲篇』の撮影に追われており、寝る間もないスケジュールでしたが、「高橋君の最後の作品が中途で挫折するのは何としても残念で、もしこの作品を世に出すために自分の微力を捧げることができたら、故人も喜んでくれるでしょう」と急きょ追加出演が決定。
佐田さんは桑野さんの兄という役柄で出演し、肝心な愛の告白場面も、桑野さんが兄に「愛の告白をした」ことを報告し、指導を仰ぐというシーンへと変更。この辻褄合わせによって、高橋さんが生前に撮影済みだったシーンをすべて活かせることとなり映画は完成。公開へと至りました。
文字通りの「友情出演」を果たし、松竹のピンチを救った佐田さんでしたが、5年後(64年)の夏、高橋さんと同じく自動車事故によって、人気絶頂のまま37歳の若さで帰らぬ人となってしまうとは、なんとも運命の皮肉です......。
参照 : 昭和34年11月7日付の毎日新聞夕刊
文 / 高木圭介
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