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すごい介護 介護のみらい 2020/08/27

#スウェーデン#舞浜倶楽部#新浦安フォーラム#有料老人ホーム#横河麻弥子#介護施設

福祉先進国、スウェーデンのケアを取り入れた「親孝行のお手伝い」 介護付有料老人ホーム 舞浜倶楽部 新浦安フォーラム

文:介護のみらいラボ編集部 sugoikaigo_20200827_1_01.jpg

瀟洒な西洋館のような舞浜倶楽部新浦安フォーラム

音楽を使ったブンネメソッド、人と人の触れ合いを重視したタクティールケアなど福祉大国スウェーデン式の介護を取り入れ、研修や講演を通じて日本全国に紹介している有料老人ホーム舞浜倶楽部 新浦安フォーラム。そのコンセプトや介護について、舞浜倶楽部代表取締役グスタフ・ストランデルさんと、ブンネ・ジャパンの日本代表でありグスタフさんのパートナーでもある公子さんに話を伺いました。

新浦安フォーラムは、定員81名、居室76室の介護付有料老人ホーム。そのうち5室が夫婦で住める二人部屋です。新浦安駅から歩いて行ける便利な立地ながら、境川のほとりに位置し、広々とした敷地に中庭もある3階建てのホームです。
全室個室の内部は通路に通りの名前がついており、小さな町がイメージされています。

人員配置はご利用者3人につきスタッフ2名。看護職員が24時間常駐し、クリニックも併設されています。平成21年(2009年)の開設以来、理想の介護を目指して工夫を重ねてきたと社長のストランデルさんは語ります。

笑顔のスーツ姿の男性

舞浜倶楽部社長 グスタフ・ストランデルさん

スウェーデン人のストランデル社長は、なぜ日本で介護施設社長となったのか

社長のストランデルさんはスウェーデン人。若き日に交換留学生として早稲田大学高等学院や、北海道東海大学で学んだこともある親日家で、初めは剣道を学ぶために来日しました。
在日スウェーデン大使館で研修生をしたのち、ストックホルム大学を卒業。スウェーデン福祉研究所所長やスウェーデン・クオリティケアAB顧問を経て、2009年に舞浜倶楽部総支配人、2012年に代表取締役社長となりました。

視野を広く保つため、異業種との交流を積極的に行っており、友人に頼まれてNHKの大河ドラマ「いだてん」に出演したこともあるほどです。
パートナーの公子さんと二人三脚で一企業の枠を超え介護業界全体をより良くしようと活動をしています。
しかしなぜ、ストランデルさんは日本で介護施設を運営しようと思ったのでしょうか。
それは20年ほど前、日本で多くの介護施設を視察して回り始めたころに見た、衝撃の光景がきっかけでした。

スウェーデンの高齢化が始まったのはなんと1890年。そのころ高齢化率が7%でした。しかしその後高齢化が進んで14%になるまで約100年。その間にじっくりと準備ができたのです。それに比べて日本社会の高齢化は急速で、1970年に高齢化率が7%になった後1994年には一気に進んで14%。そして最新の2019年総務省統計では65歳以上の高齢者は日本全人口の28.4%、超高齢社会です。

ストランデル社長が日本の介護施設を訪ねた時、多くの施設は画一的で無味乾燥な大部屋にベッドが並べられ、仕切りはカーテンだけ。そこで褥瘡だらけのお年寄りが痛みを耐えつつ、することもなくただベッドに横たわる姿を目にしました。
まるで50年昔のスウェーデンのような姿に、ストランデル社長が
「人生の最後が不幸なら、その人の人生自体が不幸なものになってしまう。絶対にこの状況を変えたい」
そう思ったことが、舞浜倶楽部を生み出す契機となりました。

ご利用者のため、安心できる工夫が凝らされた新浦安フォーラム

木材を使い落ち着いた色合いの介護施設廊下。紙の貼っていない障子のような引き戸は開いている

落ち着いた色合いでまとめられたうぐいす張りの廊下

舞浜倶楽部 新浦安フォーラムは、積極的に認知症のご利用者を受け入れています。そのため、随所にそういったご利用者が安心できる工夫が凝らされています。
一部の廊下は、歩いている実感が得られるよう、踏むと音が鳴るうぐいす張り。要所要所の壁にははっきりした色を塗り、施設内のどこを歩いているのかわかりやすくなっていました。

ドアの横が青と黄色に塗られた事務室

ご利用者にわかりやすい色で塗られた壁の前で訪問者に施設を説明する公子さん

ご利用者同士が適度な距離を保ちつつ顔見知りとなれるよう、6~13の居室グループをひとつの街として「そらの街」「汐の街」などの名前を付け、街ごとにユニットケアを行っているのも工夫のひとつと言えるでしょう。

見学してショックを受けた古い形式の施設と違い、居室は個室か夫婦部屋。ケアもご利用者それぞれの個性をできるだけ尊重しようとしています。
講演会や勉強会が行われる大ホールがあり、施設内のユニットリビングには床暖房が入れられ冬も快適とのこと。
中庭の離れ家はイベント時に使われ、特別な家族の集まりの際に使用することもできます。

舞浜倶楽部の誇るブンネメソッドとタクティールケア

緑が見える窓際で楽器を手に持ち説明する女性

ブンネ・ジャパン代表執行役員、公子さん

舞浜倶楽部は様々なスウェーデンケアを日本に紹介してきましたが、その中でも特徴的なのがブンネメソッド。公子さんが代表執行役員を務めるブンネ・ジャパンは、音楽を使ったケアを推奨し、研修も行っています。

いくつか種類がありますが、細長いギターのような木製の専用の楽器は、まったく楽器演奏を習ったことのない方でも簡単に美しい音色を奏でることができます。
「自ら操作して音楽を創造することで、ご入居者は生活に喜びや楽しみを感じることができます。実際、うつうつとしていたご入居者がブンネの楽器で音楽を楽しめるようになり、見違えるほど明るくなった例は多数あります」 (公子さん)

実際に体験したところ、三段階のギアのような部分をリズムに合わせて傾け、ピックでかき鳴らすだけで、練習なしでも驚くほど多彩な音を楽しむことができました。

5つの細長いギターに似た木製のカラフルな楽器がテーブルの上に並んでいる

いくつか種類があるブンネメソッドの楽器は見た目もカラフル

タクティールケアは、タッチケアのひとつ。舞浜倶楽部はNHKの「おはよう日本」でタクティールケアの取材先として取り上げられました。
マッサージをしたり、穏やかな会話をしながら背中や手足をさすることによって「安心と信頼のホルモン」とも呼ばれるオキシトシンが分泌され、ご利用者の心を穏やかにする効果が期待されているのですが、新浦安フォーラムではそれ以外の効果もありました。

なんとタクティールケアを施設で実践するようになったところ、ケアを行っている側の介護職員の離職率も下がったというのです。
人と人との触れ合いは、いつの時代でもお互いの不安を鎮め、信頼や幸福感をもたらすのではないでしょうか。

笑顔のスウェーデン人男性と日本人女性

グスタフさんとパートナーの公子さん

ご利用者の笑顔は、あたたかでおいしい食事から

食事のお膳。奥に味噌汁、手前にうな重

土用の丑の日が近い時期のスペシャルメニュー。本物のウナギやつるむらさきのおひたし、だし巻き卵、香の物に味噌汁が付く

新浦安フォーラムの毎日の食事は、和食で名が知られる「なだ万」で修業した調理師がメニューを統括、5人ほどのメンバーが施設内のキッチンで食材を調理し、あたたかく栄養バランスの考えられた食事が提供されています。
調理センターからの配送ではないため、ご利用者の状態に合わせてきめ細かくミキサー食・刻み食から常食まで、形を変えて提供することができるとのこと。
「おいしい食事こそ幸せの源」をコンセプトに、日々のメニューが考案されています。

また、年に一回ある、人気の有料イベントが「ノーベル晩餐会」。その名の通りノーベル賞授賞式の時のディナーメニューを新浦安フォーラムのシェフたちが再現したもので、参加希望のご利用者はドレスアップしてラウンジに集まり、豪華ディナーを楽しみます。

以前ストランデル社長の故国の郷土料理、ザリガニを使った「ザリガニディナー」なども企画したものの、そちらはいまひとつ人気が出ずにやめたとのこと、ご利用者の喜ぶ食事は、何回もの試行錯誤を経て生まれているようです。

上から目線では達成できない、理想の介護をめざす

ローテーブルを囲んで笑顔の3人の男性

取引先企業の担当と談笑するストランデル社長

舞浜倶楽部 新浦安フォーラムは、ご利用者にとっても職員にとっても、上から目線で行動を決めつけない、開かれた場所を目指していると語るストランデル社長。その試みは現在の新浦安フォーラムの運営にも表れています。

市当局者と共同の介護施設視察など浦安市との連携や、近隣の介護施設同士の会議を通した情報交換。地域社会に根付きつつ、幅広い人材を求めるため、学校との提携や外部アドバイザーとの意見交換。舞浜倶楽部の理念に共感し協働できる職員を探すため、人材紹介会社との交流も進めています。

ご利用者の幸福を考えるなら、介護現場の職員の工夫や意見が欠かせません。トップダウンだけにせず、より良い意見をどんどん取り入れてきたからこそ、舞浜倶楽部は発展してきたと言えるでしょう。
「報道は悪い介護施設や、行政の悪い点ばかりを取り上げがちです。私たちは、日本の医療介護行政の優れた点や、良い介護施設について、もっと知ってほしいです」(ストランデル社長)

近年日本に受け入れられるようになったEPA(経済協力連携)による外国人介護士についても伺ったところ、日本国籍でも外国国籍でも、職員に求めるものは同じとのことでした。
最も重要なのは舞浜倶楽部の理念に賛同し、真心のこもった介護をすることだと言うストランデル社長から、取材の最後に介護職のみなさんにメッセージをいただきました。

「Becoming professional in Japan, it will enable you to work anywhere. Really, you can work in Europe, America...... but if you choose to stay here and keep on working in Japan, that will make us very happy.
(日本で介護のプロになるということは、同時にあなたが世界のどこでも働けるようになるということです。ええ、ヨーロッパ、アメリカ、どこでも。しかし、あなたがここに留まり日本で仕事をし続けるというのなら、それは我々にとってとても幸いなことです。)」

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