すごい介護 介護のみらい 2020/09/10

開発者と役員に聞く!Chatwork×CareViewerのAI介護記録コラボが変える、これからの介護業界とICT

文:中澤仁美(編集者・ライター)
開放感のあるオフィスで働く複数の男女 開放感のあるオフィスで働く複数の男女

Chatwork株式会社の東京オフィスと、日本KAIGOソフト株式会社のCareViewerアプリ

2020年5月、AIケアプラン・介護記録ソフト“CareViewer”(日本KAIGOソフト株式会社)とビジネスチャットツール“Chatwork”(Chatwork株式会社)が情報連携強化を実現したとの発表がありました。そこで、「介護業界を変えたい!」という熱意から生まれた本コラボレーションの背景と、ICT化が介護現場にもたらすメリットについて、日本KAIGOソフト代表の中元秀昭さん・Chatwork執行役員福田升二さんをはじめとする両社の関係者にインタビューしました。

コロナ禍でも「利用者と家族をつなぐ」ために

日本KAIGOソフトが開発・販売するCareViewerは、介護記録をデジタルで作成したり、ケアプランの原案をAI(人工知能)で自動生成したりできる介護ソフトです。2019年にはChatwork社が提供するビジネスチャットツールChatworkと連携し、介護記録をグループチャットへ即時共有できるようにするなど、スタッフ向けの機能を強化してきました。

今回、両社が連携強化へ踏み切ったきっかけは、新型コロナウイルスでした。介護事業所で面会制限が行われたことで、利用者さんのご家族からは「状況が分からず不安」という声が多く聞かれ、ご家族と会えなくなった利用者さんの認知機能やADLの低下も懸念されるようになったのです。また、サービス担当者会議なども実施しづらくなり、記録や情報共有に難しさを感じるスタッフが少なくありませんでした。

こうした状況を打開すべくCareViewerで実装されたのが、グループチャット数の拡大。従来の「1事業所につき1室まで」という制限を取り払い、利用者さんや目的ごとに複数のグループチャットを作れるようになりました。管理者権限がないメンバーでもグループチャットを作れるようにしたことで、より自由度が高まったこともポイントです。

また、CareViewerで記録された写真も、各グループルームで共有できるようになりました。これにより、文字だけでは伝え切れなかったリアルな利用者さんの姿を、簡単にご家族や他職種へ伝えることができます。もともとChatworkにはビデオ/音声通話機能「Chatwork Live」があるので、これらを上手に使い分けることで、コロナ禍にあっても利用者さんとご家族の心をつなぐことが可能に。介護に関わる人すべてのコミュニケーションを促進する、新たなサービスとして注目が集まっています。

介護業界への問題意識から生まれたコラボレーション

そもそも両社が連携に踏み切った背景には、それぞれが感じていた介護業界への問題意識がありました。Chatwork社の執行役員である福田升二さんは、「281,000社以上(2020年8月末日時点)の会社様に当社のサービスを導入いただいていますが、このうち医療・介護業界の占める割合は低くありません。日本の社会を支える基盤ともいえる業界ですが、非効率的なコミュニケーションのために問題が起こっている現場が多いようです。それが結果的に、業界の人材不足にもつながっているのではないでしょうか」と話します。

看板の前に立つ背広の男性

Chatwork株式会社で執行役員CSO兼事業推進本部長を務める福田升二さん。

実際に日本KAIGOソフトへ声をかけたのは、Chatwork社で営業などを担当する廣瀬和桂さんでした。「多くの介護事業所から、『記録や事務処理に時間がかかりすぎる』『情報が膨大でリアルタイムでの共有が難しい』という相談を受けていました。センシティブな個人情報を扱う業界ですから、SNSなどで連絡を取り合うのはできるだけ避けたいとChatworkをご検討いただくわけですが、当社のサービスだけでは介護業界ならではの部分の業務効率化までかなえることは難しいと判断。そこで、お付き合いのあった日本KAIGOソフトさんに、一緒に何かできないかと相談させていただいたのです」(廣瀬さん)。

微笑むグレーの背広の若い男性

Chatwork株式会社で事業推進本部セールス部アカウントセールス第1チームに所属する廣瀬和桂さん。

この話を受けた日本KAIGOソフトの取締役兼CTOである福原亮さんは、「うちのサービスにベストマッチだ!」と確信したといいます。「もともとCareViewerは、介護現場のペーパーレス化を主眼に開発されたソフト。日々の記録をデジタル化するだけでなく、引き継ぎや申し送りといった様々な場面で情報共有しやすくなれば、スタッフ間のコミュニケーションが大幅に改善されるはずです。しかし、そうしたツールを一から開発するのは簡単ではありません。ならば、すでに広く普及・定着しているChatworkと連携させていただき、新たな展開をしていくことが最善の道だと考えました」(福原さん)。

デスクで説明している紺の背広の男性

日本KAIGOソフト株式会社で取締役兼CTOを務める福原亮さん。

「介護記録のための時間」を大幅に短縮する効果も

画面を前にオンライン会議をする三人の男女

日本KAIGOソフトのリアル+オンライン会議風景

こうした経緯でCareViewerにChatworkの機能が搭載され、より魅力が高まったわけですが、実際の現場ではどのように活用されているのでしょうか。福原さんは、「PCのウェブブラウザ経由では、主にケアマネジメント管理(利用者情報の初期登録、アセスメント表やケアプランの作成、モニタリング情報の更新など)を行う事業所が多いです。一方、現場の介護スタッフが日常的な記録を付ける場面では、専用アプリをダウンロードしたスマートフォンやタブレットを活用するケースが多いですね」と話します。

記録用の画面では、「食事」「排泄」「移動」などの項目ごとに、詳しい内容をタブで選択したり、チェックを入れたりして作業を進めていきます。入力補助機能が充実しており、記録業務の大幅なスピードアップが望めるでしょう。登録された内容は時系列に沿って一覧表示され、施設内における利用者の一日の動きが一目で分かるようになっています。写真も保存できるため、食事やレクリエーションを楽しむ利用者さんの様子などをビジュアル的にも記録できることもポイント。こうした記録内容や写真を、グループチャットからご家族や他職種へ共有するわけです。

日本KAIGOソフトのグループ会社が運営するグループホーム「満快のふる郷 さくら東苗穂」で介護職員として働く柴田悠理さんは、CareViewerについて次のように語ってくれました。「従来は、8時間ある勤務時間のうち、1時間~1時間半程度を記録のために割く必要がありました。CareViewerでの記録に切り替えて驚いたのは、紙への記入と違って視線を落とさずに済み、場所も選ばないので、他の業務の合間にサッと入力できる場面が増えたこと。終業間際に一日の出来事を思い出しながら必死に文章を考える……という苦労がなくなりました。記録に要する時間は平均20分程度まで短縮され、入力項目が少ないときには数分で終わることさえあります」。

スマートフォンを見るエプロン姿の若い男性

満快のふる郷 さくら東苗穂で、CareViewerを活用しながら働いている介護職員の柴田悠理さん。

Chatworkの機能を用いたオンライン面会や写真・データ共有について、利用者さんやご家族からも好評の声が届いているそう。「最初は不慣れなビデオ通話に不安そうだったご家族も、利用者さんと会話するうちに打ち解けた表情になっていきます。『直接は会えなくても、こうして話したり様子を教えてもらえたりすることで、大きな安心感を得られました』といった感想が多く、好意的に受け止めていただいています」(柴田さん)。

介護現場の声を収集し、スピーディーに反映できる開発環境

介護現場では、幅広い年齢層のスタッフが活躍しています。ITリテラシーの差も大きいことから、誰にとっても使いやすいサービスを作り上げるためには、現場の声を収集・反映することが欠かせません。CareViewerの開発を担当した欧陽兪さんは、「介護スタッフの意見を受けて様々な改良を施してきましたが、アプリ版のタッチ領域の拡大もその一つ。動き回りながら入力するケースが多いので、特に年齢を重ねたスタッフは細かな作業が難しいことが分かりました。当初と比べて指でタッチしたときに反応するエリアを3倍程度に拡大したところ、以前より使いやすくなったと好評でした」と話します。

ノートパソコンに手をのせ、笑顔の若い女性

日本KAIGOソフト株式会社でCareViewerの開発に従事する台湾出身の欧陽兪(オウヨウユ)さん。

実は、日本KAIGOソフトとグループホーム「満快のふる郷 さくら東苗穂」は同じ建物内にあり、開発現場と介護現場の間でスピーディーな情報交換を可能にしています。「扉一枚を隔てた場所で、自分が携わったCareViewerを活用して介護スタッフの皆さんが働いている。こうした環境だからこそ、リアルな困り事や要望を受け止め、すぐ開発に生かすことができるのだと思います」(欧さん)。

また、さくらCSホールディングス株式会社(日本KAIGOソフトの母体)は海外事業にも積極的。ミャンマー政府と連携して設立した介護職業訓練校で人材育成に取り組み、外国人技能実習生として国内の介護事業所でも受け入れています。まだ日本語に不慣れな介護スタッフもいますが、CareViewerを使うことでスムーズに記録を付けられているそうです。「外国語対応(中国語、英語、タイ語、ベトナム語、ミャンマー語)のインターフェイスなので、言葉の面でのハードルは低いはず。日本語を打ち込む必要があるときは、音声入力を上手に活用しているようです」(柴田さん)。

ペーパーレスで実現する「スマートな」介護業界

それぞれの異なる専門性を生かしながら、新しいサービスを提案し続ける両社。Chatwork社の福田さんは、「日本の中小企業におけるデジタル化を推進することが、私たちの使命。巨大産業でありながらICT化がなかなか進まない医療・介護分野は、優先的に取り組むべき領域の一つだと認識しています。『とにかくChatworkを使ってください!』で終わらせるのではなく、介護業界への理解を深めて、『この課題はChatworkの機能をこう使えば解決できます』と具体的な提案ができるレベルまで踏み込む必要があると感じています」と話します。

「最終的には紙ベースの記録をなくすことで、介護現場のあり方を変えたいのです」と熱い思いを語ってくれたのは、日本KAIGOソフトの代表を務める中元秀昭さん。「毎日、長い時間と労力を費やして記録をするけれど、それを見返す機会はめったにない……。これが介護記録の現状ではないでしょうか。ペーパーレス化で記録時間が短縮されれば、利用者さんと向き合うことに力を注げます。また、必要に応じて情報を取り出すことも簡単になり、介護スタッフの『英知』が詰まった記録をフル活用できます。記録用紙を保存するスペースも不要になるし、ひいてはCO2の削減にもつながるし、いいことづくめなのです」(中元さん)。ゆくゆくは「ポケットにスマートフォンが1台あればOK」という現場環境を生み出したいそうです。ICTの力で介護業界が本当に「スマート」になる時代は、すぐそこまで来ているのかもしれません。

黒革張り応接椅子に座り説明する背広の中年男性

日本KAIGOソフト株式会社の代表である中元秀昭さん。母体となるさくらCSホールディングス株式会社でも代表取締役を務めている。

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