日常生活自立度(寝たきり度)とは?詳しい評価基準と内容について解説
文/山本史子(介護福祉士)文:山本史子(やまもとふみこ)/介護福祉士兼ライター
介護認定を受ける際には、厚生労働省が定めた判定基準である「日常生活自立度」をもとに実施します。この記事では、日常生活自立度の種類と詳しい判定内容について解説します。日常生活自立度を正しく理解して、今後のケアに役立ててください。
1.日常生活自立度(寝たきり度)とは
「日常生活自立度(寝たきり度)」とは、高齢者や認知症のある方に対して、介護員や医師がどのような対応が適切なのかを判断する基準となるものです。最もランクが高いのが、いわゆる「寝たきり」の状態にあたります。介護認定の際には、調査員が自宅に訪問し、本人や家族に日常生活自立度のチェック項目に沿って聞き取り調査を実施します。
日常生活自立度とADLとの違い
ADLとは、日常生活動作のことで食事や着替え・排せつや入浴など、日常生活に必要な基本的動作のことです。こうした動作が可能かどうかは、日常生活自立度と同様、介護認定を受ける際に必要になる項目です。運動ADLの13項目、認知ADLの5項目から構成され、合計点の大きさで、どれくらいの介助が必要か判断する基準となります。
2.日常生活自立度(寝たきり度)の種類
日常生活自立度には「障がい高齢者」と「認知症高齢者」の2種類の判定方法があります。障がい高齢者に対しては、4つのランク、認知症高齢者に対しては9つのランクに分かれています。
障がい高齢者の4つのランクと、3区分
障がい高齢者には4つのランクがありますが、それぞれ「生活自立」「準寝たきり」「寝たきり」の3つに区分されています。寝たきりの区分では、2つのランクに分けられているため、細かい違いをおさえておきましょう。
具体的な、障がい高齢者の日常生活自立度の区分とランクは以下のとおりです。
区分 | ランク | 条件 |
---|---|---|
生活自立 | ランクJ |
何らかの障がい等を有するが、日常生活はほぼ自立しており独力で外出する。 1. 交通機関等を利用して外出する 2. 隣近所へなら外出する |
準寝たきり | ランクA |
屋内での生活は概ね自立しているが、介助なしでは外出しない。 1. 介助により外出し、日中はほとんどベッドから離れて生活をしている 2. 外出の頻度が少なく、日中も寝たり起きたりの生活をしている |
寝たきり | ランクB |
屋内での生活は何らかの介助を要し、日中もベッド上での生活が主体であるが、座位を保つ 1. 車いすに移乗し、食事、排せつはベッドから離れて行う 2. 介助により車いすに移乗する |
ランクC |
1日中ベッド上で過ごし、排せつ、食事、着替において介助を要する 1. 自力で寝返りをうつ 2. 自力では寝返りもうてない |
さらに、ランクごとに、状態に合わせてそれぞれ2つのランク分けが行われます。詳しく見てみましょう。
●ランクJ
ランクJは、自宅以外の生活において、交通機関を使って外出できるかどうかで判断します。さらに状態によって、J1とJ2に分かれます。J1は、日常生活で電車やバスを利用して1人で遠方まで出かけられる方が該当し、J2は、近所の買い物や訪問など、自宅周辺なら1人で出かけられる方が該当します。
●ランクA
ランクAは、自宅での生活がどの程度自立しているかどうかで判断します。A1 では、日中は離床しており、食事や排せつは自立しています。また、介護者がいれば比較的多く外出できるレベルです。A2は、寝たり起きたりしているものの、日中の離床時間が長く、介護者がいても外出頻度が少ない方が該当します。
●ランクB
ランクBは「寝たきり」に分類され、自力で座れるかどうかで判断します。食事や排せつ・着替えなどの一部介助を必要とし、日中はベッドで過ごす時間が長い方が該当します。
B1は、介助なしで車いすに移乗可能で、食事や排せつはベッドから離れて行えるレベルです。B2は、車いすの移乗に介助が必要、かつ食事や排せつに関しても支援が必要な方が該当します。
●ランクC
ランクCも「寝たきり」に分類され、昼夜問わずベッド上で過ごす方が該当します。排せつや食事・着替えなど、全面的に介助が必要となるため、ランクBより障がいの程度が重くなります。ランクCでは、自力で寝返りがうてるかどうかで判断します。C1は、常時ベッド上で過ごすものの、自力で寝返りがうてる場合、C2は、寝返りをうつことなく常時臥床している方が該当します。
障がい高齢者の判定は、補助具や自助具を使用した状態でも構いません。また、高齢者は日によって状態が異なり、一日の中でも朝と夜の時間帯や体調によってできることが変わる場合もあるでしょう。そのため、家族や本人から、過去一週間によく見られる状態をうまく聞き取ることが大切です。
また、日常生活自立度は、調査員が客観的・短時間で判定できることを目的としています。障がいのない健常高齢者には該当しないため、注意が必要です。
認知症高齢者の9つのランク
認知症高齢者の日常生活自立度は、9つにランク分けされ、どのくらい介護が必要になるかの判断基準となります。
認知症高齢者に対しては、症状や行動から判断し、例えば、火の不始末は「ひどい物忘れ」に分類し「幻聴・幻視」「暴言・暴行」「不潔行為」「異食行動」などの行動は、特記記事として記載します。
ランク | 判断基準 | 見られる症状・行動の例 |
---|---|---|
Ⅰ | 何らかの認知症を有するが、日常生活は家庭内及び社会的にほぼ自立している。 | |
Ⅱ | 日常生活に支障を来たすような症状・行動や意思疎通の困難さが多少見られても、誰かが注意していれば自立できる。 | |
Ⅱa | 家庭外で上記Ⅱの状態が見られる。 | たびたび道に迷う、買い物や事務、金銭管理などそれまでできたことにミスが目立つ等 |
Ⅱb | 家庭内でも上記Ⅱの状態が見られる。 | 服薬管理ができない、電話の応対や訪問者との対応など一人で留守番ができないなど |
Ⅲ | 日常生活に支障を来たすような症状・行動や意思疎通の困難さが見られ、介護を必要とする。 | |
Ⅲa | 日中を中心として上記Ⅲの状態が見られる。 |
着替え、食事、排便、排尿が上手にできない、時間がかかる。 やたらに物を口に入れる、物を拾い集める、徘徊、失禁、大声、奇声をあげる、火の不始末、不潔行為、性的異常行為等 |
Ⅲb | 夜間を中心として上記Ⅲの状態が見られる。 | ランクⅢaに同じ |
Ⅳ | 日常生活に支障を来たすような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られ、常に介護を必要とする。 | ランクⅢaに同じ |
M | 著しい精神症状や問題行動あるいは重篤な身体疾患が見られ、専門医療を必要とする。 | せん妄、妄想、興奮、自傷・他害等の精神症状に起因する問題行動が継続する状態等 |
さらに詳細なランクの状態は以下のとおりです。
●ランクⅠ
自宅での生活や近所付き合いなど、ほぼ自立している状態。一人暮らしが可能です。
●ランクⅡ
家庭外において日常生活に支障があるものの、家族と同居しているなど、誰かが注意していれば自立した生活が送れる方が該当します。
さらに、ランクⅡaは、行き慣れた場所でも道に迷ったり買い物や金銭管理ができなくなったり、今までできていたことができないなどの症状がみられます。家庭内でも意思疎通が難しくなるとⅡbに該当します。服薬管理ができなくなったり、電話や訪問者の対応が難しくなったりするなど、1人で留守番をするのが難しくなります。
●ランクⅢ
日常生活において意思疎通や行動に支障をきたし、介護が必要になるかどうかで判断します。ⅢaとⅢbは、夜間にランクⅢの症状が見られるかどうかで異なります。
Ⅲaは日中において食事や排せつなど介助が必要、または自力でできても時間がかかる方が該当します。徘徊や火の不始末、ものを拾って口に入れてしまうのなどの行為が見られる場合もⅢaに該当します。Ⅲbは、Ⅲaの症状が、夜間にも見られる場合に該当します。日中だけでなく、夜間の介助が必要となり介護負担は大きくなるでしょう。
●ランクⅣ
ランクⅢと同様の症状が頻繁にみられ、常に介護が必要かどうかで判断します。
●ランクM
ランクMは、せん妄や妄想などの精神症状や自傷・他傷行為など問題行動が継続的にみられます。専門的な医療が必要になる可能性が高いため、早めに受診するとよいでしょう。
3.介護認定を受ける流れ
介護サービスを受けるためには、市町村の介護課で相談し、介護認定を受けなければなりません。認定を受けるには、介護課で相談後、認定調査を受ける日を決め、聞き取り調査等を実施します。その後、主治医意見書を依頼し、調査票と一緒に市町村の介護課へ提出します。コンピュータによる一次審査を受け、その後、介護認定調査審査会で審査・判定が行われ、ランクに合わせた介護サービスが利用できるようになります。
4.まとめ:日常介護自立度(寝たきり度)は介護を受ける際の評価基準になる
日常生活自立度(寝たきり度)は、主治医意見書や介護認定を受けるときに必要です。日常生活自立度は、厚生労働省が決めた基準に沿って判定しており、高齢者の寝たきり度と認知症の症状と行動のレベルで判断します。これらの指標を参考にし、今後介護サービスを提供する際に、どのようなケアが必要になるが理解することが大切です。
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