居宅サービスとは?12種類の概要と居宅介護との違いも
構成・文/介護のみらいラボ編集部 監修/渡辺有紀介護職のみなさんが、後悔しないキャリアを選択するためには、介護保険サービスの種類を正しく把握しておく必要があります。しかし、介護職に就いて間もない方や、現在介護職を目指している方のなかには、介護保険サービスの種類に関する知識が浅く、「どんな働き方が自分に合っているのか、まだわからない」という方もいるでしょう。
当記事では、介護保険サービスの1つである「居宅サービス」を取り上げて、提供する支援の内容や介護職の役割などを解説していきます。自分に合う職場を見極めたい方は、ぜひ参考にしてください。
1.居宅サービスとは?
居宅サービス(居宅介護サービス)とは、要支援・要介護認定を受けた後も自宅などで生活する方を対象とした、介護保険サービスの総称です。居宅サービスを受けるためには、各市区町村の窓口で申請した上で要介護度の判定を受け、介護サービス計画書(ケアプラン)を作成してもらう必要があります。
以下は、居宅サービスに含まれる介護保険サービスの一覧です。
・訪問介護
・訪問入浴介護
・訪問看護
・訪問リハビリテーション
・居宅療養管理指導
・通所介護
・通所リハビリテーション
・短期入所生活介護
・短期入所療養介護
・特定施設入居者生活介護
・福祉用具貸与
・特定福祉用具販売
厚生労働省のデータによると、2021年時点で約5,475万人の方が居宅サービスを利用し、住み慣れた地域での生活を維持しています。
(出典:厚生労働省「令和3年度介護給付費等実態統計の概況」)
居宅介護と居宅サービス(訪問介護)の違い
居宅サービスにおける訪問介護は、しばしば居宅介護と混同されますが、制度の仕組みや主な対象者が異なります。居宅介護と訪問介護との違いは、表の通りです。
居宅介護 | 居宅サービス(訪問介護) | |
---|---|---|
制度 | 障害者総合支援法にもとづく障害福祉サービス | 介護保険法にもとづく訪問系の介護保険サービス |
主な対象者 | 障害支援区分1以上の方 | 要支援・要介護認定を受けた方 |
65歳以上で要支援・要介護認定を受けた方には、原則として介護保険サービスが優先されるルールとなっています。ただし、高齢者、障害者の両方を支援する「共生型サービス」が生まれたため、居宅介護を利用していた方が65歳以上になっても、同じ事業所を利用できるケースがあります。
2.居宅サービス12種類を4つのタイプ別に紹介
居宅サービス12種類はタイプによって、訪問系サービス、通所系サービス、短期入所系サービス、その他のサービスに分類できます。以下では、居宅サービスで提供するサービスの内容をタイプ別に紹介します。
訪問系サービス
訪問系サービスとは、要介護・要支援者の居宅(自宅や軽費老人ホーム・有料老人ホームなどの居室)を訪問して提供するサービスの総称です。具体的には、訪問介護、訪問看護など5種類の介護保険サービスが、訪問系サービスに分類されます。
・訪問介護
訪問介護とは、介護福祉士やホームヘルパーが利用者さんの居宅を訪問して、必要な支援を提供するサービスです。主な支援として、食事や入浴、排泄といった「身体介護」、調理や掃除、洗濯などの「生活援助」、移動する際の通院等乗降介助などが挙げられます。
・訪問入浴介護
訪問入浴介護は、寝たきり等の理由で、自宅の浴槽で入浴するのが困難な在宅の要介護者に対して、浴槽を自宅に持ち込み、入浴の介助を行うサービスです。介護職員2名と看護師1名の3名で行うことが一般的です。訪問入浴介護の主な目的は、心身のリラックスにつなげ、身体を清潔にして感染を予防することなどです。
・訪問看護
訪問看護とは、看護師、理学療法士、歯科医師などが居宅を訪問し、療養上の世話や診療の補助を行うサービスです。訪問看護の対象者は、居宅で生活する「要介護」と認定された人です。ただし、病状が安定しており、主治医が必要と認めた場合に限定されます。
・訪問リハビリテーション
訪問リハビリテーションとは、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などの専門職が居宅を訪問し、心身機能の維持回復や、日常生活の自立を支援するためのリハビリテーションを行うサービスです。訪問リハビリテーションの対象者についても、病状が安定しており、主治医によって必要性が認められた場合に限定されます。
・居宅療養管理指導
居宅療養管理指導とは、病院や診療所、薬局の医師、歯科医師、薬剤師などが通院できない状況にある利用者さんの居宅を訪問し、療養上の指導や管理を行うサービスです。居宅療養管理指導で得た情報を居宅支援事業所に提供し、ケアプランの作成・見直しに生かす場合もあります。
通所系サービス
日帰りで施設に通い、要望に応じた支援を受けるサービスが、通所系サービスです。
・通所介護
通所介護とは、老人デイサービスセンターなどで提供される入浴、食事、排泄などの介護、そのほかの日常生活を送るうえで必要となるサービスや機能訓練です。利用者は老人デイサービスセンターを訪れてこれらのサービスを受けます。通所介護では書道、リズム体操などのレクリエーションを提供することも多く、心身機能の維持や高齢者の孤立感解消の役割も担っています。
・通所リハビリテーション
通所リハビリテーションとは、介護老人保健施設、病院や診療所で提供される、利用者さんの心身機能の維持回復、日常生活の自立を助けることを目的とするリハビリテーションです。通所リハビリテーションでは、利用者さんの状態に応じて機能訓練(歩行、立ち上がりなどの訓練)、生活動作訓練(食事、排泄などの訓練)などを提供します。通所リハビリテーションの対象者は、居宅で生活する「要介護」と認定された人です。ただし、病状が安定しており、主治医が必要と認めた場合に限定されます。
短期入所系サービス
短期入所系サービスとは、居宅で生活する利用者さんが一時的に指定の介護施設に入所し、介護・看護などを受けられるサービスです。ただし、短期入所系サービスの連続利用日数は、30日に制限されています。
・短期入所生活介護
短期入所生活介護とは、ご家族の病気などで一時的に在宅介護が難しくなった利用者さんが、特別養護老人ホームをはじめとする施設に短期入所できるサービスです。利用者さんの心身機能維持と、利用者家族の身体的・精神的な負担軽減を目的としています。短期入所生活介護では、入浴、排泄、食事といった介護サービスや、機能訓練などが提供されます。
・短期入所療養介護
短期入所療養介護とは、医療的ケアを含む支援を必要とする利用者さんが、一時的に老人保健施設や、療養病床のある医療施設などに入所できるサービスです。短期入所療養介護では、身体介護や生活援助、機能訓練に加えて、医療ケアも提供されます。
その他のサービス
特定施設入居者生活介護、福祉用具貸与、特定福祉用具販売、住宅改修費支給は、「訪問」「通所」「短期入所」に当てはまりませんが、居宅サービスの1つとして扱われます。
・特定施設入居者生活介護
特定施設入居者生活介護とは、特定施設に入居する利用者さんに、入浴、排泄、食事などの介護、洗濯や掃除などの家事、生活に関する相談、助言などを提供するサービスです。ただし、特定施設入居者生活介護で提供する支援の内容は、施設が定めた計画にもとづきます。
・福祉用具貸与
福祉用具貸与とは、利用者さんの日常生活の便宜を図るための用具や、機能訓練に必要な用具をレンタルするサービスです。福祉用具貸与の対象は、以下の通りとなります。
・車いす(付属品含む)
・特殊寝台(付属品含む)
・床ずれ防止用具
・体位変換器
・手すり
・スロープ
・歩行器
・歩行補助つえ
・認知症老人徘徊感知機器
・移動用リフト(つり具の部分を除く)
・自動排泄処理装置
(出典:厚生労働省「各介護サービスについて」)
・特定福祉用具販売
福祉用具貸与とは、貸与になじまない性質の福祉用具を購入する場合に、利用限度額の範囲で費用の補助を受けられるサービスです。特定福祉用具販売の対象は、以下の通りとなります。
・腰掛便座
・自動排泄処理装置の交換可能部
・入浴補助用具(入浴用いす、浴槽用手すり、浴槽内いす、入浴台、浴室内すのこ、浴槽内すのこ、入浴用介助ベルト)
・簡易浴槽
・移動用リフトのつり具の部分
(出典:厚生労働省「各介護サービスについて」)
・住宅改修費支給
住宅改修費支給とは、高齢者が自宅に手すりを取り付けるなどの住宅改修を行う際、かかった金額の9割相当額が、償還払いで支給されるサービスです。住宅改修費支給は20万円が限度となっており、申請には住宅改修が必要な理由書、領収書などが必要となります。以下は、対象になる住宅改修の具体例です。
(1)手すりの取り付け
(2)段差の解消
(3)滑りの防止および移動の円滑化等のための床または通路面の材料の変更
(4)引き戸などへの扉の取り替え
(5)洋式便器などへの便器の取り替え
(6)その他、前各号の住宅改修に付帯して必要となる住宅改修
(出典:厚生労働省「各介護サービスについて」)
3.居宅サービスで活躍する介護職の種類
居宅サービスの職場では、利用者さんのストレスを極力軽減するため、常に思いやりを持って接することが要求されます。そのため、高齢者の気持ちに寄り添った支援を提供できる方や、相手に合わせて行動することが得意な方は、居宅サービスで活躍できるでしょう。
居宅サービスで重宝されるスキルや技能は、職場によって異なりますが、以下の資格を取得しておくと、職場の選択肢が広がるでしょう。
居宅サービスで生かせる資格
・介護職員初任者研修
・介護支援専門員(ケアマネジャー)
・介護福祉士
・レクリエーション介護士
・福祉用具専門相談員
・栄養士 など
介護職員初任者研修は、介護職として働く上での入門資格にあたります。ケアプランや訪問介護計画書の作成など、より上位の仕事を担当したい方は、介護支援専門員(ケアマネジャー)や介護福祉士の取得を目指しましょう。
なお、居宅サービスを提供する一部の職場は、無資格・未経験の人材も受け入れています。いち早く実務スキルを磨きたい方は、無資格・未経験可の職場で介護職として働きつつ、必要な資格取得を目指すのもよいでしょう。
まとめ
居宅サービスとは、介護保険法にもとづいて要支援・要介護認定を受けた方に提供される介護保険サービスの1つです。居宅サービスは12種類に分類でき、利用するサービスによって、提供される支援が異なります。
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※当記事は2022年9月時点の情報をもとに作成しています
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