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仕事・スキル 介護士の常識 2023/05/02

介護業界におけるスーパービジョンとは?目的・種類・実施のポイント

構成・文/介護のみらいラボ編集部 監修/渡辺有紀 thumbnail.jpg

スーパービジョンは、医療や福祉などの現場で行われている教育方法です。介護職員が提供するサービスの質やスキル、トラブル対処能力を向上させる効果が期待できることから、近年は、介護業界でもスーパービジョンを取り入れる施設が増えています。しかし、介護職のなかには「スーパービジョンという言葉を耳にしたことはあるけれど、その詳細までは分からない」という方も多いのではないでしょうか。

この記事では、スーパービジョンの概要や目的、5種類の実践方法の特徴について解説します。実践方法ごとのメリットやデメリット、実施時のポイントも紹介しているので、スムーズかつ効果的な人材育成に興味のある方は、ぜひご一読ください。

1.スーパービジョンとは?

スーパービジョンとは、施設長や管理職にある指導者(スーパーバイザー)が、指導対象者(スーパーバイジー)に行う教育・指導・援助の方法を指す言葉です。

施設で働き始めたばかりの新人職員には、教育担当者がつけられるのが一般的です。そして新人職員は、仕事で分からないことや困ったことがあれば、教育担当者に聞いたり、相談したりしながら成長を目指します。一方、教育担当者は、新人職員に「大丈夫?」「困っていることはない?」などの声をかけながら、仕事の理解や成長をサポートします。

簡単に言えば、こうした一連の流れがスーパービジョンにあたります。介護業界では、主に下記の役職者がスーパーバイザーを担当します。

● 施設長
● 管理者
● リーダー
● 教育担当者
● 主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)
● 外部研修講師(コンサルタント)


スーパーバイザーの具体的な役割は、新人職員やサポートを必要とする人が抱えている、仕事上あるいは職場環境上の問題・課題に対して指導したり、アドバイスを送ったり、精神面でフォローしたりすることです。また、新人職員の初期教育・育成に加え、施設全体の経営に携わるスーパーバイザーも存在します。

一方、介護業界では、主に下記の方たちがスーパーバイジーと呼ばれる立場になります。

● 新人職員
● 異動などで仕事の内容に変更があった方
● フォローが必要と判断された職員


働き始めたばかりの新人職員や、これまでとは異なる業務を担当することになった方は、何かしらのフォローを必要としています。そうした指導・教育を受ける立場の人をスーパーバイジーと呼びます。

スーパービジョンの目的

介護現場でスーパービジョンを行う目的は、施設全体におけるサービスの質や技術、およびトラブルへの対処能力を向上させることにあります。

スーパーバイジーに求められる能力や技術は、働く施設の種類や担当する利用者さんの状況によって異なります。それらをスーパーパイジーが単独で身につけ、磨いていくのは、ハードルが高いと言わざるを得ません。

しかし、豊富な知識・経験を持ったスーパーバイザーが適切な指導をすれば、多忙となりがちな介護現場でも、スーパーバイジーの学びと成長が見込めます。施設の目的や利用者さんの要望に合ったサービスを提供するためには、スーパーバイザーによるサポートが欠かせないのです。

また、スーパーバイジーの心理面をケアすることで、挫折や早期離職の可能性を下げることも、スーパービジョンの重要な目的の1つと言えるでしょう。

2.スーパービジョンの種類と特徴

スーパービジョンの実施方法は、主に下記の5種類があります。

● 個人スーパービジョン
● グループスーパービジョン
● ピアスーパービジョン
● ライブスーパービジョン
● セルフスーパービジョン


ここでは、スーパービジョンの種類と特徴を解説します。

スーパービジョンを実施する際は、下記の特徴を踏まえ、施設の人員や目的に合った方法を複数組み合わせることで、幅広い効果が期待できます。

個人スーパービジョン

個人スーパービジョンでは、スーパーバイザーとスーパーバイジーが1対1で面談を行います。

個人スーパービジョンには、下記のようなメリットとデメリットがあります。

【個人スーパービジョンのメリット】

● 一人ひとりの問題に関してじっくりと取り組める
● 面談形式のため、深い相談がしやすい
● スーパーバイザーとスーパーバイジーの関係性を深めやすい


【個人スーパービジョンのデメリット】

● スーパーバイザーに技量が求められる
● 信頼関係が成立していなければ問題解決に至らない


グループスーパービジョン

グループスーパービジョンでは、1人のスーパーバイザーと複数人のスーパーバイジーが、研修や会議といった形式でスーパービジョンを行います。

グループスーパービジョンには、下記のようなメリットとデメリットがあります。

【グループスーパービジョンのメリット】

● 多様な価値観を共有できる
● 多角的な視点から物事を考えやすい
● スーパーバイジー同士の理解を深められる


【グループスーパービジョンのデメリット】

● 参加者に利害関係があると発言が抑制される恐れがある
● 深い悩みを相談しにくい


ピアスーパービジョン

ピアスーパービジョンでは、上下関係や利害関係が生じない同僚同士でスーパービジョンを行います。

ピアスーパービジョンには、下記のようなメリットとデメリットがあります。

【ピアスーパービジョンのメリット】

● 気兼ねなく意見を交わせる
● スーパーバイジー同士の理解と結束が深められる


【ピアスーパービジョンのデメリット】

● 経験に基づいた指導やアドバイスがしにくい
● 視点や意見が偏りがちになる


ライブスーパービジョン

ライブスーパービジョンでは、スーパーバイザーがスーパーバイジーの業務に付き添い、仕事を見守りながら指導・アドバイスを行います。

ライブスーパービジョンには、下記のようなメリットとデメリットがあります。

【ライブスーパービジョンのメリット】

● 個別の事案に対し実践的な指導が受けられる
● 質問や疑問が生じた際にその場で答えてもらえる


【ライブスーパービジョンのデメリット】

● スーパーバイジーが委縮しやすい
● スーパーバイジーが緊張し、ミスが発生しやすい


セルフスーパービジョン

セルフスーパービジョンとは、スーパーバイジーが自らの仕事や行動を振り返ることで学びを得る方法のこと。トラブルが発生した際、「何が起きたか」「自分自身がどのように行動したか」「そのときにどのように考え、どんな気持ちになったか」「どのような結果になったか」を冷静に振り返ります。自らがスーパーバイザー側の視点を持ち、出来事を客観的に分析し、自己評価や自己点検を行うのが特徴です。

セルフスーパービジョンには、下記のようなメリットとデメリットがあります。

【セルフスーパービジョンのメリット】

● 実施する時間や場所を自由に選べる
● セルフコントロール力が身に付く


【セルフスーパービジョンのデメリット】

● 広い視野や多角的な視点を持ちにくい
● 自己擁護に終始する場合がある


3.スーパービジョンの実施方法

スーパービジョンは下記のような流れで進めるのが一般的です。

(1)事前準備
まずは、スーパーバイジーに現在の状況や課題について自己診断してもらいます。ここでは「今、何に悩んでいるか」「何が課題だと感じているか」を明確にすることが重要です。

(2)実施
スーパービジョンでは、数カ月おきに下記のステップを繰り返しながら、スーパーバイジーの成長を促します。

● 課題の聞き取り
(1)の事前準備でスーパーバイジーに行ってもらった自己診断をもとに、スーパーバイジーに現状や課題を話してもらいましょう。

● 課題の協議
スーパーバイジーが抱える課題について、解決方法を協議します。スーパーバイザーは適切なアドバイスやヒントを提示しつつ、スーパーバイジー自身が解決策に気づける方向へと誘導することが大切です。

● 見守り・助言・振り返り
課題の協議によって導き出された解決策に対して、スーパーバイジーがどのように取り組んでいるのか、その過程を観察し、必要に応じて指導を行います。

(3)総評
1年を区切りとし、スーパービジョンによってスーパーバイジーに起きた変化や成長を確認しましょう。1年の総評をスーパーバイジーに伝えるとともに、翌年に実施するスーパービジョンの準備を始めます。

4.スーパービジョンを行う際のポイント

スーパービジョンを効果的に行うには、スーパーバイザーとスーパーバイジーの信頼関係が重要です。また、スーパービジョンを行う目的は、スーパーバイジーの成長をサポートするだけでなく、それによってより良いサービスを提供することにあります。この点をしっかり認識しておくと、スーパーバイザー、スーパーバイジーともに、意欲的にスーパービジョンに取り組めるでしょう。

スーパービジョンを円滑に機能させるには、ほかにもさまざまなコツがあります。スーパーバイザー、スーパーバイジーそれぞれが意識するべきポイントを下記にまとめておくので、ぜひ参考にしてください。

【スーパーバイザー】

● 相談・質問しやすい環境を作る
● スーパーバイジーの未熟さを許容し、受け入れる姿勢を見せる
● スーパーバイジーを中心に物事を考える
● 説得するのではなく、納得させることを意識する
● 成長した部分を認め、褒めることを忘れない
● 自分の価値観を押しつけない
● 論破しようとしない
● 威圧的・高圧的な態度を取らない


【スーパーバイジー】

● 困っていることや悩んでいることは率直に打ち明ける
● 受けたアドバイスや助言は素直に聞き入れる
● 納得できないことをそのまま放置しない
● スーパーバイザーへの感謝を言葉で伝える


まとめ

スーパービジョンの実施方法は主に5種類あります。それぞれのメリットとデメリットを把握し、複数の方法を組み合わせて実施すると、より幅広い効果が期待できるでしょう。加えて、施設が提供するサービスの質の底上げにもつながります。

「介護のみらいラボ」では、介護・福祉現場で起こりがちな課題や悩みの事例と、その対処方法を多数紹介しています。スーパービジョンを実施する際の参考になる内容も含まれていますので、ぜひ「介護のみらいラボ」をご活用ください。

※当記事は2022年7月時点の情報をもとに作成しています

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渡辺有紀(Yuki Watanabe)

社会福祉士・精神保健福祉士/ライター

1978年生まれ。大学卒業後、アパレル、商業ライターを経験。結婚出産を経て資格取得後、福祉業界へと転身する。社会福祉協議会の地域包括支援センター社会福祉士、CSWを経て、現在はフリーランスソーシャルワーカーとして活動中。SSW、認定NPO法人相談員など複数の相談援助業務に携わる。

渡辺有紀の執筆・監修記事

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