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仕事・スキル 介護士の常識 2023/05/10

プリセプター制度とは?介護業界で注目されている理由やメリットを解説!

構成・文/介護のみらいラボ編集部 監修/渡辺有紀 thumbnail.jpg

近年、介護業界では、新人研修などにプリセプター制度を導入する事業所が増えています。プリセプター制度とは、簡単に言うと「先輩が新人スタッフに対してマンツーマンで指導・教育を行う制度」のこと。2010年に新人看護職員に対する臨床研修の実施が努力義務化されたことで、看護業界では広く実施されています。

とはいえ、介護業界におけるプリセプター制度はまだ歴史が浅いため、「内容が分かりづらい」と感じている方も多いのではないでしょうか。また、これから働く施設がプリセプター制度を取り入れている場合、「どういったことをするのか」「どんなメリットがあるのか」などを把握しておきたい方もいるでしょう。

当記事では、プリセプター制度の内容や、介護業界で注目されている理由について解説します。プリセプター制度の目的やメリットを正しく理解したい方や、今後導入を検討している事業所の方はぜひご一読ください。

1.プリセプター制度とは?介護業界で注目されている理由も

プリセプター制度とは、指導者である先輩職員(プリセプター)が、新入職員や経験の浅い職員(プリセプティ)に対しマンツーマンで指導する研修制度のことです。新人職員は、担当の先輩から細やかな指導を受けることで、仕事の覚えが早くなるほか、正確な技術を習得しやすくなります。

前述したように、プリセプター制度は看護業界の新人研修で多く取り入れられてきました。しかし、近年は介護業界でも、介護職員の職場定着や能力向上を図るために、プリセプター制度を取り入れる施設・事業所が増えています。

以下では、プリセプター制度の目的や役割について解説します。

プリセプター制度の目的

プリセプター制度の主な目的は、職員の離職率を下げて、職場への定着を促すことです。厚生労働省の「介護労働の現状」によると、介護業界では人手不足と離職率の高さが目立っており、新人職員の約65%が勤務年数3年未満で離職するなど、職場への定着率が非常に低いのが実情です。

(出典:厚生労働省「介護労働の現状」

プリセプター制度のマンツーマン指導は、技術の継承だけでなくメンバー同士の信頼関係の構築にも役立ちます。また、プリセプター制度ではメンタルケアも同時に行えるため、慣れない環境で精神的な負担や不安を抱えている新人職員を、フォロー・バックアップする効果も期待できるでしょう。

プリセプター制度における2つの役割

プリセプター制度においては、教育する側の「プリセプター」と教育される側の「プリセプティ(プリセプティー)」の2つの役割が存在します。以下では、プリセプターの詳細について解説します。

プリセプターに特別な資格は必要なく、介護士として必要な知識や技術を取得し、教育的指導が可能な方がその役割を担います。なお、プリセプターは勤務年数5~7年のキャリアを持つ介護職員が担当することが推奨されています。

次に、プリセプターに求められる5つの能力を紹介します。

プリセプターに求められる5つの能力
・新人職員に教育的に関わる能力
・新人職員と適切な関係性を構築できるコミュニケーション能力
・新人職員の状況を把握した上で課題について向き合い、ともに問題を解決する能力
・新人職員ごとに必要な達成目標やプログラムを立てる能力
・新人職員の業務に対する適性・ポテンシャルなどを評価する能力

プリセプターはプリセプティに対し、積極的にコミュニケーションを取りながら研修を行いましょう。また、人によって仕事を覚える速さが異なるため、会話を通じて理解度を確認しつつ、適宜研修内容を調整することも必要です。

新人職員に寄り添い、ともに問題を解決することを意識しながら、丁寧な指導を心がけましょう。

プリセプター制度の種類

プリセプター制度には3つの種類があります。

OJT(On the Job Training) 実務を通じて知識や技術を教育する
OFF-JT(OFF the Job Training) 座学や研修などのセミナーを通じて広い視野や考え方を教育する
SDS(Self Development System) 職員の自主的な勉強を支援する自己啓発援助制度

実務を通じてスキルを習得できるOJTと、広い視野を持ち、作業の本質を学べるOFF-JTを組み合わせることでバランスの良い教育が可能です。また、自己啓発を支援するSDSでは、自習をするためのスペースや、テキストの購入費、資格取得費用の免除などを事業所側で用意することで、意欲はあるものの時間的・経済的余裕のない場合でも安心して自己研鑽の機会を持つことができます。

プリセプターは、それぞれの役割を理解した上で、必要な指導方法を組み合わせながら、研修を実施しましょう。

2.プリセプター制度のメリット

続いては、プリセプター制度を採用した際に、プリセプターとプリセプティに生じるメリットを紹介します。

プリセプターに生じるメリットは以下の3点です。

プリセプターに生じるメリット

・教育を通じて自らのスキルアップが見込める
・自らの持つ技術を客観視できる
・新人職員の定着が図れれば、施設のアピールポイントにもなる


プリセプター制度はマンツーマンで実施するため、指導者には技術だけでなく業務に対する理解度の高さも求められます。そのためプリセプター側も、指導するなかで自身の技術・知識を再確認する必要があるでしょう。

また、プリセプティへの教育を通じて双方の能力向上が期待できるため、結果として組織の成長につながります。

プリセプティに生じるメリットは以下の3点です。

プリセプティに生じるメリット

・実技を目の前で確認できるため、具体的な仕事内容が覚えやすい
・自分にあったペースで教育を受けられる
・分からないことがあればその場で質問できる


プリセプティは実技を通じて全体の流れを把握できるため、比較的早く仕事を覚えられるでしょう。また、双方で進捗状況を確認しながら研修を行えば、個人のペースにあわせた指導が可能になります。

マンツーマンで密にコミュニケーションを取り合うため、お互いの信頼関係が構築しやすいことも、メリットの一つと言えます。

3.介護現場でプリセプター制度はどのように運用される?

介護現場(介護職)におけるプリセプター制度の教育期間は、およそ6~12カ月です。教育内容は時期によって変化しますが、12カ月と想定した場合、以下のようなステップを踏むのが一般的です。

0~2カ月 実際に仕事内容を見せながら、作業の意味や理由を教える
プリセプターがプリセプティに付きっきりで指導する期間です。プリセプターは実際の業務を見せつつ、作業の意味や理由を伝えましょう。

3~5カ月 仕事の優先順位の付け方を教え、仕事の効率化を意識させる
仕事を覚え始めたプリセプティは、徐々に受け持つ作業量が増えます。プリセプターは仕事の優先順位の付け方を教え、効率よく仕事を回せるようにアドバイスしましょう。

6~8カ月 現状を把握し、プリセプティとともに問題解決を図る
プリセプティが基本的な業務の習得を終える時期です。プリセプターは面談の際にプリセプティの業務の習得度合いをチェックし、個人に合わせた指導方法に切り替えましょう。また、プリセプティが苦手な作業や悩みを抱えている場合は、積極的に質問や相談に応じて、不安要素を解消するようにしてください。

9~12か月 技術や知識の習得状況を確認し、独り立ちさせる
多くのプリセプティは自立し、指導頻度は減少します。プリセプターはプリセプティと一緒に教育漏れがないか再度確認しましょう。また、1年間の評価を行い、成長した部分は積極的にほめるようにしてください。ここでは、「一人前になった」という自信を持たせることが大切です。

4.プリセプター制度における注意点

最後に、プリセプター制度を実施する際の注意点を、プリセプター側とプリセプティ側に分けて解説します。

以下はプリセプター側の注意点です。

●プリセプター側の注意点

・職場全体でフォローしてもらう
・フィードバックを欠かさない
・他のプリセプティと比べて評価をしない


プリセプターを担当する介護職員は、通常業務と新人教育を同時進行するため、どうしても日々の業務負担が大きくなってしまいます。負担を軽くするためにも、他の職員にサポートやフォローを依頼するなど、職場全体で協力してもらいましょう。

また、実務を行った際は、必ず結果についてのフィードバックを行ってください。フィードバックは、プリセプティの学びや気付きにつながる大事な時間です。できたことはきちんと評価し、できなかったことについては、「どうすればできるのか?」を一緒に考えていきましょう。

以下はプリセプティ側の注意点です。

●プリセプティ側の注意点

・積極的な姿勢で研修を受ける
・質問や悩みがある場合は遠慮せずに相談する


プリセプティの方は、積極的な姿勢で研修に臨みましょう。研修中は、「早く仕事を覚えなければ」「先輩に迷惑をかけないようにしなければ」と思う場面もあると思いますが、遠慮は禁物です。質問や悩みをきちんと伝えることで、プリセプター側も指導やフォローがしやすくなるため、遠慮なく頼るようにしましょう。

なお、プリセプターとプリセプティの相性が合わない場合、双方にデメリットを与える恐れがあります。職場側は、定期的にプリセプター、プリセプティとの面談を実施し、互いが悩みを抱え込まないような体制作りを心がけましょう。

まとめ

プリセプター制度とは、指導者(プリセプター)が新人職員(プリセプティ)に対しマンツーマンで教育する方法です。実務を通じて教育を実施するため、プリセプティは具体的な業務の流れをつかみやすく、仕事を早く覚えやすいという利点があります。

ただし、プリセプターは通常業務と新人教育を同時進行することになるため、どうしても負担が大きくなってしまいます。職場全体で実務の分担やフォローを行い、「みんなで新人職員を育成する」という意識を持つようにしましょう。

「介護のみらいラボ」では、介護の現場で活躍する方に有益な情報を多数掲載しています。職場でのお悩み解決法から人材育成情報まで、幅広い情報を取り扱っているため、介護に関する知識を増やしたい方は、ぜひご覧ください。

※当記事は2022年7月時点の情報をもとに作成しています

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渡辺有紀(Yuki Watanabe)

社会福祉士・精神保健福祉士/ライター

1978年生まれ。大学卒業後、アパレル、商業ライターを経験。結婚出産を経て資格取得後、福祉業界へと転身する。社会福祉協議会の地域包括支援センター社会福祉士、CSWを経て、現在はフリーランスソーシャルワーカーとして活動中。SSW、認定NPO法人相談員など複数の相談援助業務に携わる。

渡辺有紀の執筆・監修記事

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