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仕事・スキル 介護士の常識 2023/05/20

バーセルインデックスとは?メリット・デメリットや評価方法も!

構成・文/介護のみらいラボ編集部 監修/赤羽克子 thumbnail.jpg

介護報酬改定で新設された「ADL維持等加算」では、介護施設利用者の日常生活動作が一定水準を超えることで、事業所が評価されるようになりました。そして、こうした日常生活動作を評価する方法として使われているのが「バーセルインデックス」です。

近年は、リハビリの実施計画書などで目にする機会も増えていると思いますが、なかには「名称は知っているけれど、具体的な評価方法まではわからない」という方もいらっしゃるかもしれません。

当記事では、バーセルインデックスの概要、メリット・デメリット、評価方法などについて紹介します。バーセルインデックスを用いた評価方法を理解して、ぜひ日々の介護業務に生かしてください。

1.バーセルインデックスとは?

バーセルインデックスとは、食事や着替え、移動などの日常動作を評価する検査方法の1つで、介護が必要な方や障害を持つ方のADL(日常生活動作)を評価するために用いられます。ADLには「できるADL(評価・訓練の際に発揮できる動作)」と「しているADL(日常的に活用している動作)」があり、バーセルインデックスは「できるADL」のほうを評価します。

なお、厚生労働省によるバーセルインデックスの定義は、以下の通りです。

Barthel Index

ADLの評価にあたり、食事、車椅子からベッドへの移動、整容、トイレ動作、入浴、歩行、階段昇降、着替え、排便コントロール、排尿コントロールの計10項目を5点刻みで点数化し、その合計点を100点満点として評価するもの。

引用:厚生労働省「令和3年度介護報酬改定に向けて」

バーセルインデックスは、現状のADLについて簡単かつ時間をかけずに把握する目的で開発されました。評価項目や評価内容が分かりやすいため、利用者さんやご家族でも「どれくらいの自立度か」を客観的に認識することができます。

バーセルインデックスのメリット

バーセルインデックスのメリットには、以下のようなものがあります。

・評価方法が簡易的で時短になる
バーセルインデックスは、複数あるADL評価のなかでも評価方法が簡易的で、誰にでも実施できます。評価区分が2〜4段階とシンプルで、どの区分に当てはまるのかを迷わずに採点できるため、評価にかける時間も短くて済みます。

・100点満点で自立度を把握しやすい
評価の合計得点が100点満点で、「自立度がどれくらいか」を一目で把握できるのも大きな特徴です。各評価項目の得点は5点刻みとなっており、計算しやすいという利点もあります。

・世界にも通用する評価基準
バーセルインデックスは1955年にアメリカで開発され、1965年に論文発表されたことで徐々に世界中へと広まりました。そのため、バーセルインデックスの評価内容は、日本国内だけでなく国際的に通用します。

バーセルインデックスのデメリット

バーセルインデックスのデメリットには、以下のようなものがあります。

・細かい能力を把握できず、変化の過程が分かりくい
バーセルインデックスの評価区分は、大まかで分かりやすい反面、細かい能力については把握しにくいという難点があります。また、身体機能が回復する過程を記録できないため、「どれくらいの期間でADLが向上したか」などを詳細に把握することができません。したがって、身体能力の変化を知るには不向きな評価方法と言えるでしょう。

・正確な評価が難しい
バーセルインデックスは評価内容が簡易的で、一般的な動作をあらかじめ決めたものであるため、利用者さんの実際の動作を評価項目に照らし合わせるのが難しいケースもあります。評価項目にない動作は評価から外されてしまうことになり、正確な評価が難しくなるでしょう。場合によっては、採点者が変わると結果が変わる可能性もあります。

2.バーセルインデックスの評価方法

バーセルインデックスの評価項目は、食事や移乗、着替えなど全10項目。各項目を自立度別に15点・10点・5点・0点で採点し、その合計点で自立度を判断します。

合計点による自立度の判断基準は、以下の通りです。

点数 自立度
100点満点 全自立。介助の必要性なし
85点 自立。介助の必要性がほとんどない
60点 一部の項目で介助が必要
40点 大部分の項目で介助が必要
20点 全介助が必要

85点以上なら「自立」と判断されます。自立とは、介助をほぼ必要とせずに自分の力で日常生活を送れる状態です。85点以下は介助が必要とされ、点数が低いほど介助の割合が多くなります。

以下では、バーセルインデックスの評価項目について詳しく紹介します。

10の評価項目

バーセルインデックスの評価項目は、食事、移乗、整容、トイレ動作、入浴、歩行、階段昇降、着替え、排便コントロール、排尿コントロールの全10種類です。

ここでは、それぞれの項目について厚生労働省の資料をもとに解説します。

食事 10点 自立、手の届くところに食べ物を置けば、トレイあるいはテーブルから1人で摂食可能、必要なら介護器具をつけることができ、適切な時間内で食事が終わる
5点 部分介護、食べ物を細かく切る等の介助が必要
0点 全介助

引用:厚生労働省「令和3年度介護報酬改定に向けて」

介護器具を自分で装着して食事できるのであれば「自立」と判定されます。ただし、1人で食事できても、手間取って時間がかかりすぎる場合は「部分介助」になります。

移乗 15点 自立、車椅子で安全にベッドに近づき、ブレーキをかけ、フットレストを上げてベッドに移り、臥位になる。再び起きて車椅子を適切な位置に置いて、腰を掛ける動作がすべて自立
10点 どの段階かで、部分介助あるいは監視が必要
5点 座ることはできるが、移動は全介助
0点 全介助

引用:厚生労働省「令和3年度介護報酬改定に向けて」

移乗にはベッドから車椅子、車椅子から便座などに乗り移るだけでなく、ベッドから起き上がったり、椅子から立ち上がったりする動作も含まれます。手すりや補助具を使った場合、監視なしで動作できれば「自立」と判定されます。

整容 5点 自立(洗面、歯磨き、整髪、ひげそり)
0点 部分介助、全介助

引用:厚生労働省「令和3年度介護報酬改定に向けて」

整容には手洗いや洗顔、化粧など、さまざまな動作が含まれます。すべて自力で動作できると5点、どれか1つでも介助が必要だと0点と採点されます。

トイレ動作 10点 自立、衣服の操作、後始末も含む。ポータブル便器を用いているときは、その洗浄までできる
5点 部分介助、体を支えたり、衣服を整えたり、トイレットペーパーを用いること、後始末に介助が必要
0点 全介助

引用:厚生労働省「令和3年度介護報酬改定に向けて」

トイレ動作では、トイレの入退室、衣服の着脱、お尻を拭く、水を流すまでのすべての動作を評価します。尿器などを利用した場合、後片付けを自分でできれば「自立」と判定されます。

入浴 5点 自立(浴槽につかる、シャワーを使う)
0点 部分介助、全介助

引用:厚生労働省「令和3年度介護報酬改定に向けて」

入浴では、浴槽に入る、体や頭を洗うなどの動作も評価します。手すりや福祉用具を使用していても、自力で動作できれば「自立」と判定されます。

歩行 15点 自立、45m以上歩行可能、補装具の使用はかまわないが、車椅子、歩行器は不可
10点 介助や監視が必要であれば、45m平地歩行可(歩行器の使用を含む)
5点 歩行不能の場合、車椅子をうまく操作し、少なくとも45mは移動できる
0点 全介助

引用:厚生労働省「令和3年度介護報酬改定に向けて」

補助具には杖や義足などがあり、補助具を使用していても自力で45m以上歩ければ「自立」となります。車椅子や車輪付き歩行器を使用する場合は、自分で操作して45m移動しても5点と採点されます。

階段昇降 10点 自立、手すり、杖などの使用はかまわない
5点 介助または監視を要する
0点 全介助

引用:厚生労働省「令和3年度介護報酬改定に向けて」

手すりや杖などの補助具を使用していても、自力で階段の昇り降りができれば「自立」と判定されます。なお、階段の段数は問われません。

着替え 10点 自立、靴・ファスナー、装具の着脱を含む
5点 部分介助を要するが、少なくとも半分以上の部分は自分でできる。適切な時間内にできる
0点 全介助

引用:厚生労働省「令和3年度介護報酬改定に向けて」

着替えでは、靴ひもを結ぶ、衣服のボタンをかける、コルセットのような装具を着脱するなど、さまざまな動作を評価します。一部でも介助が必要なら「部分介助」と判定されます。

排便コントロール 10点 失禁なし、浣腸、座薬の取り扱いも可能
5点 時に失禁あり、浣腸、座薬の取り扱いに介助を要する場合も含む
0点 全介助

引用:厚生労働省「令和3年度介護報酬改定に向けて」

便失禁の有無や頻度、浣腸・坐薬の取り扱いをもとに判定します。便失禁がなくても、浣腸・坐薬の使用に介助が必要ならば「部分介助」に該当します。

排尿コントロール 10点 失禁なし、収尿器の取り扱いも可能
5点 時に失禁あり、収尿器の取り扱いに介助を要する場合も含む
0点 全介助

引用:厚生労働省「令和3年度介護報酬改定に向けて」

尿失禁がなく、自分1人で収尿器の着脱や洗浄ができれば「自立」と判定されます。常におむつを使用して排尿する場合は「全介助」に該当します。

3.バーセルインデックス以外のADL評価方法

バーセルインデックス以外にも、ADLの評価方法は複数あります。以下では、主な評価方法を4つ紹介します。

・FIM

バーセルインデックスが「できるADL」を評価するのに対し、FIMでは「しているADL」を評価します。また、運動機能だけでなく、社会認知力やコミュニケーション力などの認知機能も評価する点も特徴です。全18項目を1~7点の7段階で採点するため、ADLをより詳細に評価できます。最も信頼性が高いADL評価法と言われていますが、評価方法が難しく、時間がかかるのが欠点です。


・カッツインデックス

入浴、更衣、トイレ、移動、排尿排便コントロール、食事という6つの動作について、「自立」か「介助」の2つに分けて評価します。自立の数などによって、さらに「A~G」と「その他(2つ以上の機能が介助)」の8段階に評価され、6つの動作すべて自立ならA、すべて介助が必要ならGと判定されます。


・老研式活動能力指標

社会生活能力を評価するために開発された方法で、評価対象は高齢者です。公共交通機関の利用や買い物、請求書の支払い、新聞を読むなど、全13項目について「はい」か「いいえ」で回答します。13点満点で、点数が高いほど生活自立度が高くなります。


・ロートンの尺度

IADL(手段的日常生活動作。例えば、洗濯における、洗う、干す、たたむなど、複数の手順が必要な動作のこと)を判定するための評価方法で、電話対応・買い物・食事準備・家事・洗濯・乗り物の利用・服薬管理・財産管理の8項目で構成されています。なお、女性と男性では評価項目が異なっており、女性は8項目すべて、男性は食事準備、家事、洗濯を除く5項目を評価します。


まとめ

バーセルインデックスは、利用者さんの日常動作を評価する検査方法の1つです。時間をかけず、簡単にADLを評価できることがメリットである一方、細かい評価や正確な評価が求められる場面には不向きな方法です。介護施設では、利用者さんの自立度を客観的に把握するのに役立つため、上手に活用しましょう。

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※当記事は2022年7月時点の情報をもとに作成しています

▼監修者からのアドバイス

バーセルインデックスは、高齢者、障害者などに対して行う、食事や排泄、移動などの日常生活動作(ADL)を評価する検査方法で、介護現場では利用者さんのADLを評価することを目的に用いられています。現在の利用者さんの日常生活動作を数値化して客観的に評価する方法であり、科学的介護を行うための指標として用いられています。2021年度介護報酬改定でも「ADL維持等加算」の算定要件になっているため、評価する人は正しく理解しておいたほうがいいでしょう。
このバーセルインデックスを評価する職員は誰でもいいわけではなく、「一定の研修を受けた者」という要件があります。以下のQRコードから厚生労働省が作成している動画を視聴できますので、参考にしてください。
※一定の研修とは、厚生労働省の作成しているマニュアルや動画の視聴でよいと定められています。

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赤羽克子(Katsuko Akaba)

元聖徳大学心理・福祉学部社会福祉学科教授

社会福祉施設勤務を経て教育の世界に入る。現在はマーシーハンディキャップサポート協会理事として障害者に対する理解の啓蒙活動・障害者スポーツの支援や松戸市シルバー人材センターのアドバイザーなどを行っている。

赤羽克子の執筆・監修記事

介護のみらいラボ編集部(kaigonomirailab)

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