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仕事・スキル 介護士の常識 2023/06/12

OJTとは?介護現場での進め方と新人教育を成功させるポイントも

構成・文/介護のみらいラボ編集部 監修/赤羽克子 thumbnail.jpg

介護職の新人スタッフを指導する際、実際の業務を体験しながら仕事を覚えてもらう「OJT」を活用するケースが多く見られます。しかし、介護職として働く方のなかには、OJTの正しい意味や具体的な運用方法が分からず、「どのように進めるのが正解なのだろう」とお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。さらに、似たような意味で使われるOff-JTとの使い分けが難しいという声も少なくありません。

当記事では、介護業界においてOJTが用いられている理由やOJT教育の進め方、人材育成を成功させるポイントなどを解説します。当記事でOJTについての正しい知識を手に入れて、日々の業務や指導にお役立てください。

1.OJTとは?介護現場で注目される理由も

OJTとは「On the Job Training」の略称で、上司が部下に対して実際に仕事をしながら教える指導方法のことです。OJTは、新入社員や中途入社の社員を教育する際に有効な方法であり、「Show(やってみせる)」「Tell(説明する)」「Do(実践させる)」「Check(評価・指導する)」という4つのステップを繰り返し行う点に特徴があります。

現在、多くの介護現場で人材不足が叫ばれているにもかかわらず、離職率の高さはなかなか改善されません。介護職の離職理由の1つに、研修・教育体制の整備不足が挙げられていることから、今後はOJTをはじめとする、丁寧かつ的確な指導が必要とされることでしょう。

(出典:厚生労働省「介護労働者の確保・定着等に関する研究会中間取りまとめについて」

以下では介護現場での研修・教育体制の重要性と、OJTを実施するメリット・デメリットについて解説します。

Off-JTとの違い

Off-JTとは「Off The Job Training」の略称で、現場から離れて座学や研修でセミナーを実施する指導方法のことです。

OJTとの違いは教育を行う場所と教育範囲にあり、実際の業務を体験しながら仕事を覚えてもらうOJTに対して、Off-JTは実務から離れた場で必要な知識や考え方などを体系的に学びます。

なお、介護技術を指導する際は、OJTを行う前にOff-JT(インプット)を実施し、正しい知識を理解した上で実践(アウトプット)に臨むことが理想的です。

OJTのメリット

OJTを導入することで、以下のようなメリットが得られると言われています。

・個人の理解度に合わせて臨機応変な教育ができる
・実務を通じての新人教育は理解速度が速く、OJT後は即戦力として期待できる
・人に教えることで教育側も介護業務への理解が深まり、成長できる
・通常業務のなかで教育できるため、時間やコストを抑えられる


介護施設の仕事には、実践を行うことで学べるものも多く、セミナーや研修といった座学だけでは十分に理解できない内容が少なくありません。また、OJTは、教育する側と教育される側の距離が近くなるため、チームのメンバーや他の介護士との人間関係構築にも効果的です。

OJTのデメリット

続いては、OJTを導入する際に生じるデメリットについて紹介します。

・業務を体系的に学びにくい
・教育側の能力によって得られる効果が異なる
・教育する側の業務負担が増える


OJTは実践が中心になるため、業務の全体像が把握しにくく、広い視野が求められる業務・職種の教育には向いていません。また、教育者となる上司の能力や介護スキルによって、業務の内容や進め方、育成効果にばらつきが出ることもあります。

加えて育成担当者が、通常業務を行いながら教育の時間を割くことになるため、時間的にも精神的にも負担が大きくなってしまいます。

2.介護職のOJTの進め方

介護職のOJTの手順は、他の職種と大きく変わりません。OJTを効果的に行うには、「4段階職業指導法」と呼ばれるフレームワークに基づいて教育を行うことが重要であり、「4段階職業指導法」における4つのステップは次の通りとなります。

・Show(やってみせる)
・Tell(説明する)
・Do(実践させる)
・Check(評価・指導する)


以下では、それぞれのステップについて詳しく解説します。

・Show(やってみせる)
指導者である上司が実際に業務を行い、育成対象者にお手本を見せることで具体的なイメージをつかんでもらいます。

・Tell(説明する)
Showのステップの際に見てもらった業務について、その意味や役割、背景などを丁寧に説明し、育成対象者への理解度を高めます。その際、質疑応答の時間を設けると、より理解度が増すでしょう。

・Do(実践させる)
育成対象者の理解度が高まった段階で、指導者がやってみせた業務を実践してもらいます。ここでは、育成対象者の力のみで業務を終わらせることを第一の目標とし、出来栄えにかかわらず最後まで見届けます。

・Check(評価・指導する)
Show、Tell、Doが終わったら、反省点や改善点、うまくできていた点などを丁寧にフィードバックしましょう。Checkのステップをきちんと行うことで、育成対象者の理解度を把握でき、次の指導に向けての方向性も定まります。

3.介護職のOJTを成功させるポイント

介護職員の転職・離職率が高い理由の1つに、研修・教育体制の整備不足が挙げられます。

入社したての新人介護職員は、慣れない環境のなかで人間関係や仕事についての悩みを抱えがちです。OJTに適した職場である場合、入社時に教育面でのフォローを行うことで仕事への理解度が深まり、結果として転職・離職率の改善にもつながるでしょう。

ここからは介護職のOJTを成功させる5つのポイントを解説します。

目標・期限を共有する

指導者と育成対象者の間で、「達成すべき目標」と「達成期限」を共有しましょう。こうした認識を両者で共有しておけば、同じ温度感で教育に臨むことができ、計画的なスキルアップが期待できます。

また、育成計画や期限を設定することで、教育内容があいまいにならず、業務の教え忘れなども防げます。

手順・考え方を明確にする

OJT研修を行う際、指導者は「業務の手順」を明確にしておく必要があります。指導者間でも手順を明確化・統一化し、指導する担当職員が変わった場合でも、育成対象者がスムーズにOJTを進められるようにしましょう。

また、「なぜこの業務を行うのか?」「どうしてそのやり方がいけないのか?」といった考え方を丁寧に説明し、業務に対する理解度を深めてもらうことも大事です。業務に対する考え方をしっかり伝えることは、育成対象者のモチベーションアップや成長にもつながるでしょう。

フィードバックを欠かさない

実務を行った際は、必ず結果についてのフィードバックを行ってください。フィードバックは、「うまくできたか、できなかったか」にかかわらず、育成対象者が自らの業務の振り返りを行う大切な時間です。本人の学びや気付きにつながるのはもちろんのこと、指導者が育成対象者の理解度を把握することにもなるため、できたことはきちんと評価し、できなかったことについては、「どうすればできるようになるのか?」を一緒に考えましょう。

両者で改善案を話し合うことで、同じミスを繰り返さないように対策がとれるだけでなく、育成対象者のモチベーションアップの効果も期待できます。

職場全体の協力を得る

OJTには職場全体で参加するようにしましょう。教育を任せきりにした場合、指導者は実務と教育係を同時進行で行わなければなりません。指導者の負担を軽くするためにも、職場全体が協力し業務の振り分けの見直しや、フォローを積極的に行ってください。

また、育成対象者に対する教育も助け合いながら行いましょう。指導者が不在になった場合はもちろん、実務に対して担当者よりも詳しい知識を持っている人がいる場合には、担当者の許可を得た上で、他のスタッフがOJT教育に参加するのも一案です。

チーム全体でOJT教育を行うことで、育成対象者と他の介護スタッフとの関係も構築できるでしょう。

積極的にコミュニケーションをとる

指導者は育成対象者に対して、教育以外の場面でも積極的にコミュニケーションをとりましょう。

OJT教育は、双方の信頼関係がなければうまく運用できません。新人職員は、上司や先輩に質問することをためらう傾向にあるため、普段からひんぱんにコミュニケーションをとり、話しかけやすい関係を築くように努めましょう。気軽に質問ができるようになれば、OJT教育もより効率的に運用できるはずです。

まとめ

OJTとは指導者が育成対象者に対し、実務をやってみせながら教える指導方法です。OJTを行う際、先にOff-JTを行えば、新入職員の仕事への理解度が上がり、広い視野を持って仕事に取り組んでもらうことができるでしょう。

なお、OJTは担当者と育成対象者の間だけで行う教育方法ではありません。施設全体でOJTに参加し、育成対象者をスタッフ全員で育てる認識を持ちましょう。

「介護のみらいラボ」では、介護の現場で活躍する方に向けた情報を多数掲載しています。職場での悩み、役立つ介護資格、働き方のコツなど、介護に関する幅広い情報を網羅しているため、仕事で悩んだり困ったりした際は、ぜひ「介護のみらいラボ」を参考にしてください。

※当記事は2022年7月時点の情報をもとに作成しています。

▼監修者からのアドバイス

OJTは、実務(仕事)を行いながら研修・教育を行う指導方法であり、介護の現場でも有効な人材育成方法として多くの施設で取り入れられています。OJTでは、指導者が実際の仕事を通して必要な知識や考え方を教えていきますので、OJTを効果的に取り入れることができれば、育成対象者と職員、指導者双方のスキルアップや職場のコミュニケーションが活発になるなどの効果も期待できます。
OJTの導入の際には、正しい進め方を理解しながら実施するようにしましょう。適切なOJTが行われないと、育成対象者は混乱してしまい、モチベーションが低下し、離職につながる可能性があります。「3.介護職のOJTを成功させるポイント」を参考にして、しっかりとした計画を立てるなどの準備をしましょう。
また、効果的な教育のためには、座学や研修セミナーなどのOFF-JTによって必要な知識を学んでもらうことも必要です。OJTとOFF-JTを組み合わせて、業務に必要な知識を学べるような計画を立ててください。
OJTは指導者と育成対象者間で行われるため、お互いに積極的にコミュニケーションをとり、不明点や疑問点などを確認し、理解できているかどうかを確認する、を繰り返し行う必要があります。ミスを指摘した後などはモチベーションが上がるような言葉がけを行いましょう。今回の記事を参考にして、OJTを正しく理解し、育成対象者を施設全体でサポートしていただけますよう願っています。

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赤羽克子(Katsuko Akaba)

元聖徳大学心理・福祉学部社会福祉学科教授

社会福祉施設勤務を経て教育の世界に入る。現在はマーシーハンディキャップサポート協会理事として障害者に対する理解の啓蒙活動・障害者スポーツの支援や松戸市シルバー人材センターのアドバイザーなどを行っている。

赤羽克子の執筆・監修記事

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