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仕事・スキル 介護士の常識 2023/08/10

訪問介護計画書とは?作成の流れから記入例・注意点までを解説

構成・文/介護のみらいラボ編集部 監修/赤羽克子 thumbnail.jpg

訪問介護計画書は、訪問介護サービスを提供する際に活用する書類です。訪問介護計画書には、利用者さんや家族の希望、サービス内容、提供手順、提供方法などが具体的に記載されており、利用者さんに適切なサービスを提供するための重要な役割を担っています。

だからこそ、訪問介護計画書を作成するにあたっては、きちんとした知識・知見が必要です。当記事では、訪問介護計画書の概要、計画書を作成する流れ、記入例、注意点などについて詳しく紹介します。訪問介護計画書の作成方法について知りたい方や、サービス提供責任者を目指す方は、ぜひご一読ください。

1.訪問介護計画書とは?

訪問介護計画書とは、訪問介護サービスの提供に際して、サービス利用者に「どういったサービスをどのように提供するか」などを記載した計画書です。訪問介護計画書は、ケアマネジャーが立てたケアプランをもとにサービス提供責任者が作成し、書面にはサービス内容や手順、提供方法などが具体的に記載されます。

訪問介護サービスを提供するためには、サービス内容を説明し、利用者さんやご家族から同意を得ることが不可欠です。そのため、訪問介護計画書はしっかりと、分かりやすく作る必要があるでしょう。

以下では、訪問介護計画書の目的とサービス提供責任者の業務について、詳しく解説します。

訪問介護計画書の目的

訪問介護計画書に目を通すことで、利用者さんは目標を意識しながら生活でき、訪問介護員は利用者さんの希望や仕事内容を随時確認できます。つまり訪問介護計画書は、サービス提供責任者、利用者さんとご家族、そして現場でサービスを提供する訪問介護員が、情報を共有するための書類でもあるわけです。

また、利用者さんが同時に複数の介護サービスを利用している場合は、それぞれの担当者とも情報共有をしなければなりません。訪問介護計画書があれば、他の介護サービスがどのような内容か、設定されている目標は何かなども共有できるため、よりスムーズな連携と質の高いサービスの提供が可能になるでしょう。

サービス提供責任者が担当する重要な業務

サービス提供責任者は、ケアマネジャーや訪問介護員と連絡を取って、業務内容・人員を調整したり、訪問介護員の指導・教育を行ったりする訪問介護の現場責任者です。加えて、訪問介護計画書を作成することも、サービス提供責任者の大きな役割となります。

厚生労働省の調査によると、「訪問介護計画書の作成・見直し」はサービス提供責任者が担当する業務のなかでも、「作業負担が大きいと感じる業務」の代表格となっています。このことから、サービス提供責任者は計画書の作成に、かなりの時間を割いていると推察できるでしょう。

(出典:厚生労働省「訪問介護・訪問入浴介護」

訪問介護計画書を作成するポイントは、利用者さんの健康状態などを確認し、解決すべき課題を押さえた上で、計画を立てることです。また、訪問介護計画書はさまざまな人が目を通すため、誰が読んでも分かりやすい書き方を把握しておくことも重要でしょう。

2.訪問介護計画書を作成する流れ

訪問介護計画書を作成するまでの流れは、以下の通りです。

・訪問介護計画書の作成の流れ

1. 利用者情報の把握(アセスメント)
2. 利用者の課題(ニーズ)の特定
3. 訪問介護計画書の記入


利用者状況を把握・評価し、サービスの方向性や達成すべき目標を明確にした上で、具体的なサービス提供内容などを決定するのが基本的な流れです。

続いて、それぞれの作業内容について詳しく紹介していきましょう。

参考:堺市南保健福祉総合センター /訪問介護計画 作成の手引き

STEP1:利用者情報の把握(アセスメント)

利用者さんの身体状況・生活状況などを把握するために、ケアマネジャーとは別にアセスメントを実施します。アセスメントによって、利用者さんの希望や必要としているサポートを明確にし、どのような支援計画を立てるかを決定します。

STEP2:課題(ニーズ)の特定

アセスメントを行ったら、利用者さんの課題(ニーズ)を特定していきます。ニーズとは、「専門職が客観的に判断した援助の必要性」のことで、利用者さんが「こうしたい」と考えている要求と同じになるとは限りません。

なお、利用者さんの要求とニーズを区別することは、表面的なニーズ以外の「隠れたニーズ」を発見することにもつながります。ケアを通じて利用者さんとの信頼関係を構築し、価値観や家族関係、意欲などを知ることで、隠れたニーズを探りましょう。

隠れたニーズが分かれば、利用者さんの考え方やライフスタイルに、より適合したサービスを提供できるようになるはずです。

STEP3:訪問介護計画書の記入

訪問介護計画書は、サービス提供開始時に作成します。また、作成後も定期的な見直しが必要で、利用者さんの状態が変化したタイミングなどで変更を行ったりします。

訪問介護計画書に記載する主な項目は、以下の通りです。

訪問介護計画書に記載する項目の例

1.計画書の作成者・作成年月日
2.利用者情報(氏名・性別・生年月日・要介護度など)
3.本人・家族の希望
4.日常生活全般の状況
5.目標(長期・短期)
6.計画見直しの時期
7.週間計画表
8.サービス内容と所要時間
9.サービス提供に関する評価
10.利用者や家族への説明と同意に関する事項


訪問介護計画書のテンプレートは独自のものを使用できますが、自治体が参考様式を公開していることもあるため、必要に応じて確認すると良いでしょう。

3.訪問介護計画書の書き方・記入例

訪問介護計画書には、「解決すべき課題」「援助目標」「本人と家族の希望」を記入する項目があります。ここでは、具体的にどのような内容を記載するのかについて、記入例を挙げながら紹介します。

解決すべき課題

・室内で転ばずに移動できるようになりたい
・車椅子に自力で移乗できるようになりたい
・時間をかけずスムーズに食事できるようになりたい
・自力で衣服の着脱をできるようになりたい
・自分の考えを相手に伝えられるようになりたい


解決すべき課題は、必ずアセスメントやニーズを踏まえた内容にしましょう。

援助目標(長期・短期)

【長期目標】
・1人で外出ができる
・自分で家事ができる
・介助なしでトイレに行ける
・自分で風呂に入り、洗髪・洗身ができる

【短期目標】
・室内で転ばずに移動できる
・補助を受けつつ家事を行える
・トイレの際、自分で衣服の着脱ができる
・入浴の際、手が届く範囲で身体を洗える
・適度に運動し、筋力・体力をつける


解決すべき課題に対して、長期・短期の目標を設定します。ケアプランの内容と整合性を取った上で、目標や達成期間を設定しましょう。また、訪問介護員が訪問する目的も明確にしておきます。

本人・家族の希望

【本人の希望】
・自力で歩いて外出したい
・トイレや入浴は、できる限り自分の力で行いたい
・あまり周囲の手を借りずに生活したい
・自分で料理がしたい

【家族の希望】
・けがをしないように安全に生活してほしい
・なるべく家で介護してあげたい
・本人らしく生き生きと生活してほしい
・できるだけ本人の希望を優先したい


事前のアセスメントから、利用者さんやそのご家族の希望・要望をきちんと把握することが大切です。

4.訪問介護計画書を書く際の注意点

訪問介護計画書を書にあたっては、以下の点に注意しましょう。

読む人が理解しやすいように簡潔にまとめる

訪問介護計画書はさまざまな人が目にするため、誰が読んでも内容が理解できるように、分かりやすい表現で書きましょう。長文にすると読みにくくなるので、要点を押さえて簡潔に記入することも大切です。


利用者の状態に適した内容となるように意識する

訪問介護の計画は、利用者さんの身体機能や長期・短期の目標などに応じて、内容を変える必要があります。利用者さんの状態を観察し、提供するサービス内容が最適かどうかを意識しながら作成しましょう。


記入漏れや誤字脱字がないか確認する

週間計画表に記載している内容と援助内容が一致しているか、記入漏れはないかなども、しっかりチェックしましょう。あわせて、援助内容が具体的な記述になっているかどうかも確認します。

また、訪問介護計画書を記入するときは誤字脱字にも注意しましょう。パソコン入力の場合は変換ミスがないか、手書き入力の場合は読みやすい字で書けているかを意識することが大切です。


訪問介護計画書の内容が読んだ人に伝わらないと、介護業務がスムーズに進まなくなります。上記のことを心に留めながら、丁寧に作成しましょう。

まとめ

訪問介護計画書は、サービス提供責任者が作成する重要な書類で、利用者さんが目標を確認したり、訪問介護員が仕事内容を確認したりする際に役立ちます。サービス提供責任者はアセスメントおよびニーズの把握を行い、利用者さんに最適なサービスを提供できるように計画書を作成しましょう。

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※当記事は2022年8月時点の情報をもとに作成しています

▼監修者からのアドバイス

訪問介護計画書は、サービス提供責任者が居宅サービス計画計画の内容に沿って作成するものです。利用者さんの日常生活全般の状況、希望などをふまえ、利用者さんの状況を把握・分析し、訪問介護の提供によって解決するニーズを明らかにして、利用者さん宅で訪問介護員が実施する活動内容についての計画です。訪問介護計画書作成時は、利用者さんの尊厳を保ち、利用者さんの持っている力をできる限り活用し、自立支援に資する計画を作成し、実施することが求められます。利用者さんやご家族のQOL(生活の質)を高める質の高い訪問介護計画書にするためには、アセスメントにもとづき介護計画を作成するサービス提供者の資質を高めていくことが求められるでしょう。

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赤羽克子(Katsuko Akaba)

元聖徳大学心理・福祉学部社会福祉学科教授

社会福祉施設勤務を経て教育の世界に入る。現在はマーシーハンディキャップサポート協会理事として障害者に対する理解の啓蒙活動・障害者スポーツの支援や松戸市シルバー人材センターのアドバイザーなどを行っている。

赤羽克子の執筆・監修記事

介護のみらいラボ編集部(kaigonomirailab)

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