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仕事・スキル 介護士の常識 2023/12/06

ホスピスとは?ホスピスケアの対象者やケア内容を詳しく紹介

文/山本史子(介護福祉士) thumbnail.jpg

ホスピスとは、末期がんなどで余命が短い患者さんに対して、痛みや苦しみを和らげる医療や看護を提供する施設です。似たようなケアが行われるものに「緩和ケア」がありますが、ホスピスと緩和ケアの違いは何でしょうか? 今回は、ホスピスの具体的なケア内容や実施される施設などについても詳しく解説します。ホスピスのケア内容を知っておけば、介護職員として働くときにも役立つでしょう。

1.ホスピスとは



ホスピスとは、終末期を迎えた患者さんが最後まで自分らしい生活を続けられるように、痛みや不快感などの症状を和らげることを目的とした支援や医療を提供する施設を指します。もともとホスピスは、終末期の苦痛を和らげる治療やケアを指すものでしたが、近年では、施設そのものを指す言葉となっています。
ホスピスでは基本的に延命治療を行わず、患者さんの身体的、精神的なつらさを取り除きながら最後の時間を穏やかに過ごせるようにサポートします。具体的な対象者や、ホスピスの利用方法について解説します。

ホスピスの対象者

ホスピスの対象となるのは、主に終末期を迎えたがん患者さんやAIDS(エイズ/後天性免疫不全症候群)で、余命6カ月以内と診断されている患者さんです。施設によっては、病気の種類を限定せずに受け入れているところもあります。ただし、緩和ケアと並行して入院する場合には、保険診療上、対象となる患者さんが定められており、現状では、その他の病気での利用は難しい状況にあります。
死期が近づいた患者さんは、食事や着替えといった日常生活動作も困難になり、近しい友人や家族が介護にあたることも多くなります。そばにいる家族も不安を抱えやすいことから、患者さんの家族も含めたケアが行われます。家族を対象に、患者さんの死を受け入れ、亡くなった後のことも考えられるようなカウンセリングの場を提供するところもあります。

ホスピスケアはどうしたら受けられる?

ホスピスケアを受けたいときは、まずはかかりつけ医に相談し、家族と本人が話し合う必要があります。相談先はほかにも、がん相談センターや地域包括支援センターなどが挙げられます。がん相談支援センターを設置している病院では、無料相談できるところもあるため、確認してみましょう。介護サービスを受けている方ならケアマネジャー(介護支援専門員)に相談するのも良いでしょう。
在宅ホスピスを受けたい方は、行政窓口で相談すると必要なサービスや情報などを提供してもらえる場合もあります。いずれの場合も、患者さん本人がすでに病状について理解していることが大切です。

ホスピスと病院の違い

ホスピスは患者さんの尊厳を保ち、最後まで希望通りに希望通りに生きられるように、痛みや苦しみを和らげながら過ごすことを目的としています。そのため、治療そのものではなく「どのように生きるか」に重点を置いており、宗教家やボランティアが関わっているところもあります。一方、病院は、本来、病気やケガの治療と回復を目的とする施設です。医療従事者が主となり、治療のために薬の処方や手術などが行われ「どのように治すか」に重点が置かれています。ただし、病院内での緩和ケアは、ホスピスとほぼ同様のケアが提供されるところもあります。

2.ホスピスケアの内容



ホスピスケアには「身体的ケア」「精神的ケア」「社会的ケア」の3つがあります。これらのケアを、ホスピスは医師や看護師・介護士・理学療法士・ケアマネジャーなど、さまざまな職種でチームケアを行います。それぞれ詳しく見てみましょう。

身体的ケア

身体的ケアは、終末期に生じる痛みを緩和する医療行為やケアなどがあります。患者さんの身体の痛みが和らげば、気持ちが安定し本来の自分らしさを取り戻せるでしょう。身体ケアについては、患者さんと家族・医師とどんなケアが適しているか話し合うことが大切です。例えば、鎮痛剤や医療的麻薬の使用やマッサージなど、どの方法が患者さんの痛みや不快感を緩和できるのかを検討することになるでしょう。また、快適に過ごせるように、入浴や食事などの日常生活の支援も行われます。

精神的ケア

精神的ケアは、患者さんの精神的な痛みや不安を和らげることを目的に提供されるケアです。患者さんは病気そのものだけではなく、仕事や家族との関わり方、経済的な負担などについて、さまざまな不安を抱いています。さまざまな悩みに対して専門スタッフが関わり、不安を解消するのもケアの一環です。例えば、好きな音楽をかけてリラックスすることや元気なときに車いすで外出することなども挙げられます。また、患者さんの家族にも、カウンセリングを提供するといった、精神的ケアが行われます。ホスピスはもともと教会で行われていたこともあり、宗教的なケアを提供するところもあります。

社会的ケア

社会的ケアとして、医療費や入院費の負担が軽減する福祉制度の確認や、適切な支援制度の情報を提供します。行政手続きや申請などをサポートしたり、手続き等に必要な専門家を紹介したりするなど、家族の負担を軽減することも含まれます。

3.ホスピスと緩和ケア・ターミナルケアの違い



ホスピスと似ている言葉に「緩和ケア」や「ターミナルケア」があります。いずれも、終末期の利用者さんに向けて、残りの人生を自分らしく生きてもらうために支援することを目的とします。
ただし、ホスピスは、基本的に病気の治療はせず、痛みや不快感を緩和するための処置や治療を医師の指示で行うのが特徴です。緩和ケアは、病気の治療を並行して行われ、病気の進行度や年齢は問われません。ターミナルケアは、さらに余命が短い方が対象となり、最後の時間を穏やかな時間にできるように、日常生活上でのケアやQOL(生活の質)を保つための支援が中心となります。

ホスピス ・残りの人生を自分らしく過ごせるように支援する
・患者さんだけでなく、家族もケア対象者
・原則病気の治療は行わない
緩和ケア ・残りの人生を普段通りに過ごせるように支援する
・病気の治療を並行して行われる
・一般病棟でも緩和ケアを受けられる
・病気の進行度や年齢は問わない
ターミナルケア ・より余命わずかな方が対象
・最後の時間を穏やかに過ごせるように支援する

4.ホスピスケアはどこで実施しているのか



ホスピスケアは、病院や介護施設、自宅などで提供されています。ホスピス専門の施設のほか、病院内にホスピス病棟を設けているところなど、さまざまです。具体的な特徴を見てみましょう。

ホスピス病棟

ホスピス病棟は、病院内に設置されるもので、一般的な病棟とは別に「ホスピス病棟」または「緩和ケア病棟」として運営されています。ホスピスは、健康保険や高額医療制度が使えるため、限度額認定証を入院前に準備しておくと手続きがスムーズです。病院によっては、入院前に提出を求められる場合もあるでしょう。手元に限度額認定証がない場合は、後から申請し、立替金額の差額を還付金として受け取る方法もあります。詳しくは、市区町村の窓口で相談してみましょう。ただし、保険診療上、主に苦痛の緩和を必要とするがん患者さんと、後天性免疫不全症候群の患者さんが対象となり、それ以外の病気での利用が難しい場合があります。ホスピス病棟では、病状が良くなれば、入退院が可能です。

介護施設

特別養護老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅では、ホスピスを取り入れているところもあります。介護保険を使用している方は、介護保険サービスを使うことも可能です。介護職員は、医療的処置はできませんが、患者さんの身体介助や話を聞くなどのケアを行います。レクリエーションも実施されるため、利用者さんは気分転換になるかもしれません。介護職員は患者さんと関わることで、穏やかな時間を提供できるでしょう。
専門的な知識を身に付けたい方は「終末期ケア専門士」を受験する方法があります。終末期ケア専門士は、実務経験2年以上の「介護福祉士」や「ケアマネジャー(介護支援専門員)」「実務経験3年以上の介護士(介護福祉士と合算可能)」の方が受験可能です。

在宅ホスピス

在宅でホスピスケアを受ける方法もあります。在宅ホスピスは、医師や看護師が自宅に訪問し、診察やケアが行われます。患者さんが住み慣れた家で最期を迎えたいという願いにも応えられるように、訪問介護を利用して、身の回りのお手伝いや整理整頓などのサポートを頼むのもケアの一環と言えます。万が一、自宅での療養が難しくなれば一般病院やホスピス・緩和病棟で入院できるようサポートも行われています。

5.ホスピスの費用

ホスピスでの入院には、医療保険が使用できます。負担額は年齢によって異なり、70歳以上の方であれば、自己負担限度額として1カ月57,600円(約16万円の1割負担)、70歳未満の方は、自己負担限度額約93,000円(約47万円の3割負担)が目安です。ただし、施設によって異なるため、事前の確認が必要です。
高額療養制度を利用することで自己負担額を抑えられますが、年齢や所得によって自己負担額の上限は異なります。高額医療制度を受ける場合は、市役所または社会保険事務所などで「限度額認定証」を交付してもらい、病院の窓口に提出しましょう。ほかにも、食事代や差額ベッド代が別途かかる場合があります。

まとめ:介護職員はホスピスで日常生活をサポートできる



ホスピスでは、利用者さんが最後まで自分らしい生活が送れるようなケアを行います。医療機関だけでなく介護施設でも利用できるため、介護職として携わることがあるかもしれません。ホスピスに関する理解を深めるとともに、医師や看護師などの他業種と協力し、ケアを受ける患者さんをサポートしていきましょう。

参考
ホスピス・緩和ケアとはなんですか|ホスピス財団
MSDマニュアル家庭版
特定非営利活動法人 日本ホスピス緩和ケア協会
ホスピスってなぁに?|日本ホスピス緩和ケア協会
緩和ケア|厚生労働省
終末期ケア専門士の受験資格|日本終末期ケア協会

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山本史子(Fumiko Yamamoto)

介護福祉士

デイサービスで約20年現場職員として経験。2007年に介護福祉士の資格を取得。「この施設にいると楽しい、また行きたい」と笑顔で帰ってもらえるデイサービスにしたいという思いで20年間利用者様のケアをしている。知的障害のある自閉症の息子がいるため、介護現場で働きながら、母親の立場から障がい者福祉にも関わっている。

山本史子の執筆・監修記事

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