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仕事・スキル 介護士の常識 2024/01/05

介護予防とは?目的やサービスの種類、対象者を詳しく解説

文/中谷ミホ(介護福祉士、ケアマネジャー、社会福祉士) thumb.jpg

本格的な超高齢社会を迎えるにあたり、高齢者の介護予防が注目されています。しかし、介護予防について「聞いたことはあるけどよく知らない」「どんなサービスがあるのだろう」と疑問を抱いている方も多いのではないでしょうか?
そこで本記事では、介護予防の目的や現状、サービスの種類、対象者などを詳しく解説していきます。

1.介護予防とは

厚生労働省は、介護予防を「要介護状態の発生をできる限り防ぐ(遅らせる)こと、そして要介護状態にあってもその悪化をできる限り防ぐこと、さらには軽減を目指すこと」と定義しています。

また、介護保険法第4条(国民の努力及び義務)では、「国民は、自ら要介護状態となることを予防するため、加齢に伴って生ずる心身の変化を自覚して常に健康の保持増進に努めるとともに、要介護状態となった場合においても、進んでリハビリテーションその他の適切な保健医療サービス及び福祉サービスを利用することにより、その有する能力の維持向上に努めるものとする」と規定されています。

介護予防の目的

介護予防は、ただ単に高齢者の運動機能や栄養状態といった特定の機能・状態の改善を目指すものではありません。介護保険法に記されたように、心身機能全体の改善を通じて、高齢者が自立した日常生活を営めるように支援することが介護予防の目的です。

さらに、高齢者の日常生活の活動性を高め、家庭や社会への参加、生きがいや自己実現のための取り組みを促進していくことも期待されています。

2.介護予防の現状

2000年にスタートした介護保険ですが、2006年の法改正では介護予防が重視され、新たに「介護予防サービス」が創設されました。

その背景として挙げられるのは、要支援から要介護1を中心とした軽度者が大幅に増加したことや、そこに提供される介護保険のサービスが要支援・要介護者の状態改善につながりにくかったことです。それ以降、全国各地で介護予防への取り組みが積極的に行われるようになりました。

また、団塊の世代が75歳以上となる2025年に本格導入を目指している「地域包括ケアシステム」でも、介護予防の取り組みは重要な要素の1つとされています。

3.介護予防サービスの種類

介護保険で受けられる介護予防サービスには、「予防給付」と「介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)」の2種類があります。それぞれについて、以下で詳しく見ていきましょう。

予防給付

予防給付は、介護保険が適用される全国一律のサービスで、大きく「居宅サービス」と「地域密着型サービス」の2つに分類されます。なお、予防給付には、施設に入居してサービスを受ける「施設サービス」はありません。

予防給付の種類は、以下の通りです。

居宅サービス • 介護予防訪問入浴介護
• 介護予防訪問看護
• 介護予防訪問リハビリテーション
• 介護予防居宅療養管理指導
• 介護予防通所リハビリテーション
• 介護予防短期入所生活介護
• 介護予防短期入所療養介護
• 介護予防特定施設入居者生活介護
• 介護予防福祉用具貸与
• 特定介護予防福祉用具販売
• 介護予防住宅改修
地域密着型サービス • 介護予防認知症対応型通所介護
• 介護予防小規模多機能型居宅介護
• 介護予防認知症対応型共同生活介護

予防給付は、要介護の方が受けられる介護サービス(介護給付)よりも利用できる範囲が限定されます。例えば、「介護予防福祉用具貸与」でレンタルできるのは、つえや車椅子、歩行器など一部の福祉用具のみです。

なお、2015年の介護保険法改正に伴い、かつて予防給付で提供されていた「介護予防訪問介護」と「介護予防通所介護」のサービスは、「介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)」に移行しています。

介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)

総合事業は、市区町村が主体となって行う事業です。全国一律のサービスである予防給付とは異なり、市区町村がサービス内容や料金を独自に設定しています。要支援の認定を受けていない方でも利用できるのが特徴です。

総合事業には「一般介護予防事業」と「介護予防・生活支援サービス事業」があり、次のような事業が行われています。

介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)
一般介護予防事業 介護予防・生活支援サービス事業
• 介護予防把握事業
• 介護予防普及啓発事業
• 地域介護予防活動支援事業
• 一般介護予防事業評価事業
• 地域リハビリテーション活動支援事業
• 訪問型サービス
• 通所型サービス
• その他生活支援サービス

●一般介護予防事業で受けられるサービス

一般介護予防事業で提供されるサービスの種類は、市区町村によって異なります。例えば、転倒予防や腰痛改善、認知症予防を目的とした体操教室、歯の喪失を防ぐ口腔ケア教室、閉じこもりを防ぐ交流カフェなどが一般介護予防事業のサービスです。

費用は全額利用者が負担しますが、無料で利用できるサービスもあります。

●介護予防・生活支援サービス事業で受けられるサービス

介護予防・生活支援サービス事業では、以下の3つのサービスが提供されています。

  • 訪問型サービス:訪問介護員による身体介護を中心としたサービス
  • 通所型サービス:デイサービスなどに通って生活機能を高めるサービス
  • その他生活支援サービス:配食サービス、安否確認などのサービス

上記のサービスにかかる費用のうち、1〜3割を利用者が負担します。

4.介護予防サービスの対象者

次に、介護予防サービスの対象者について見ていきましょう。

予防給付の対象者

介護保険の要介護認定で「要支援1」もしくは「要支援2」の認定を受けた方が対象です。なお、要介護認定を受けるには、お住まいの市区町村の窓口で申請が必要です。

総合事業の対象者

総合事業は、一般介護予防事業と介護予防・生活支援サービス事業で対象者が異なります。一般介護予防事業の対象者は、その地域に住む65歳以上の方です。要介護認定を受けていなくても利用できます。

一方、介護予防・生活支援サービス事業は、要支援1・2の認定を受けている方と65歳以上で「基本チェックリスト」の基準に該当した方が利用対象です。

基本チェックリストとは、介護予防・生活支援サービス事業の対象かどうかをチェックするツールのことです。25項目の質問からなり、その結果をもとにどのようなサポートが必要かが判断されます。

なお、要支援1・2の認定を受けている方は、予防給付と介護予防・生活支援サービス事業のサービスを組み合わせて利用することも可能です。

5.介護予防に関する資格

介護予防の指導に特化した民間資格も注目されています。

ここでは、介護予防に関する以下の3つの資格を紹介しましょう。

  • 介護予防指導士
  • 介護予防運動指導員
  • 介護予防健康アドバイザー

介護予防指導士

介護予防指導士は、日本介護予防協会の認定資格です。マシンを使わない運動指導を学ぶことができ、資格取得後は、「筋力訓練」「ストレッチング」「転倒予防」「栄養ケア」「口腔ケア」などの指導が行えます。

この資格は、3日間で10科目、21.5時間の講習を修了することで取得可能です。
講座を受講できるのは、以下の資格保有者および取得見込みの方に限定されています。

<受講対象者>
・介護系(介護福祉士、介護職員初任者・基礎・実務者研修修了、ヘルパーなど)
・医療系(看護師、准看護師、保健師など)
・リハビリ系(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士など)
・運動指導系(健康運動指導士、健康運動実践指導者など)
・その他、高齢者に関わる資格取得者


なお、介護予防指導士講習は、オンラインで受講することも可能です。詳しくは、日本介護予防協会のホームページでご確認ください。

介護予防運動指導員

介護予防運動指導員は、東京都健康長寿医療センター研究所が認定する民間資格です。この資格を取得すると、高齢者それぞれの状態に適した介護予防プログラムの作成や筋力向上トレーニング、運動の指導ができるようになります。

資格を取得するには、全23講座、31.5時間の講習を受講後、修了試験に合格する必要があります(講習の一部はeラーニングでの受講が可能)。

受講対象者は、以下の資格を保有している実務経験2年以上の方と、国家資格養成校等の卒業見込み、資格取得見込み方のある方に限定されています(詳しくは、東京都健康長寿医療センター研究所のホームページをご覧ください)。

介護系(介護支援専門員、介護福祉士、初任者・実務者・基礎研修修了など)
医療系(医師、看護師、助産師、保健師など)
リハビリ系(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士など)
運動指導系(健康運動指導士など)

東京都健康長寿医療センター研究所

介護予防健康アドバイザー

介護予防健康アドバイザーは、NESTA(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会)による民間資格です。介護予防や健康維持に関する知識・技術を身につけることができ、資格取得後は介護予防や健康維持に役立つ運動の指導ができるようになります。

この資格は、NESTA JAPANの監修を受けている通信講座を受講し、マークシート方式の最終課題(資格試験)に合格すると取得できます(標準学習期間3か月)。

介護予防健康アドバイザーの受講資格には制限がなく、誰でも受講可能です。

6.介護予防支援とは

介護予防支援とは、介護保険で要支援と認定された方が適切に介護予防サービス(予防給付)を利用できるように、利用者と介護予防サービスを提供する事業者との連絡・調整や、ケアプラン(介護予防サービス計画)の作成を行うサービスです。

介護予防支援にかかる費用は、すべて介護保険から支払われるため、利用者の自己負担はありません。

介護予防支援では、地域包括支援センターがケアプラン作成を担当します。ただし、ケアプラン作成業務の一部が、居宅介護支援事業所のケアマネジャーに委託される場合もあります。

なお、介護保険で要支援者と認定された方が、予防給付のみ、もしくは予防給付と総合事業の両方のサービスを利用する場合は「介護予防支援」の対象となります。

7.介護予防ケアマネジメントとは

介護予防ケアマネジメントは、総合事業の利用者に対して行われます。介護予防ケアマネジメントでは、以下の3つのことを目的としています。

1. 利用者が住み慣れた地域で自立した生活を送れるように支援する
2. 利用者が自分で立てた目標に沿って、ケアプランを作成して支援する
3. 介護予防ケアマネジメント終了後、高齢者が自分で介護予防を行えるように支援する

介護予防マネジメントを実施する機関は、地域包括支援センターです。指定居宅介護支援事業所に委託されることもあります。

介護予防マネジメントの対象者

介護予防マネジメントの対象者は以下の通りです。

・総合事業のみを利用する要支援1・2の方
・介護予防・生活支援サービス事業の対象者(65歳以上で「基本チェックリスト」の基準に該当した方)

まとめ

介護予防とは、高齢者が自立した生活を長く続けることを目的として、高齢者が要介護状態にならないように、また要介護状態になっても悪化しないようにするための取り組みです。

介護保険で利用できる介護予防サービスには、予防給付と総合事業の2つがあり、さまざまな種類のサービスが提供されています。ただし、予防給付は介護保険で要支援の認定を受けている方しか利用できません。

介護予防や介護予防サービスの利用について疑問のある方は、担当窓口である地域包括支援センターにご相談ください。

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中谷ミホ

介護福祉士・ケアマネジャー・社会福祉士

福祉系短大を卒業後、介護職員、相談員、ケアマネジャーとして、障害者支援施設、介護老人保健施設などの介護現場で活躍。現在は介護業界での経験を生かしながら、ライターとして活動しており、介護・福祉に関わる記事を数多く手がける。保育士、福祉住環境コーディネーター3級も取得。

中谷ミホの執筆・監修記事

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