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仕事・スキル 介護士の常識 2024/04/10

介護施設の人員配置基準とは?施設種類ごとの基準と注意点も

構成・文/介護のみらいラボ編集部 監修/赤羽克子 thumbnail.jpg

介護施設の人員配置基準とは、「適切な介護や医療を提供するために、配置すべき人材の人数」について定めた制度です。配置すべき人材は、施設の種類によって職種や人数が異なります。人員配置基準は、介護サービスの質を担保するための制度であるため、介護施設の管理者はもちろん介護職として働く方も、「人員配置基準とは何か?」について知っておくことが重要です。

この記事では、人員配置基準の基本情報から、6つの代表的な介護施設における人員配置基準の例、注意点までを解説します。やむを得ない事情で、人員配置基準を満たせない場合の対処法にも触れるため、人員配置基準に関する知識や理解を深めたい方は、ぜひご一読ください。

1.介護施設の人員配置基準とは?

介護施設では、利用者さんに対して適切な介護や医療を提供するために、配置すべき人材の人数が定められており、その最低人数を「人員配置基準」と言います。ここでの「人材」とは、医師や介護福祉士、看護師などの専門資格を有する職員のことであり、必要な配置人数は介護施設の種類によって異なります。

人員配置基準は、それぞれのスタッフが連携し、質の高い介護サービスを提供することを目的としており、万が一の事故や想定外のトラブルに備えるという意味でも、人員配置基準に沿った体制づくりが必要です。

人員配置基準を満たさない施設はどうなる?

人員配置基準は、介護保険法によって定められており、違反した場合は介護事業の指定取り消しやサービス停止などの行政処分が科される可能性もあります。そうした事態が起こらないように、人員配置基準についてきちんと理解しておきましょう。

なお、介護の現場では、スタッフの急病や予期せぬ事態によって一時的に人員配置基準を満たせなくなるケースも考えられます。一時的に人員配置基準を満たせなくなった場合は、各市区町村に相談するようにしてください。

2.介護施設の人員配置基準

前述したように人員配置基準は、介護施設の種類によって必要な職種や人数が異なるため、注意が必要です。

ここからは、介護施設ごとの人員配置基準について解説します。配置すべき人材の数は、施設の利用者・入居者数が基準となっており、たとえば介護職員の人員配置基準が「3:1」だった場合、「入居者3人に対して、最低1人の常勤の介護職員」が必要となります。

特別養護老人ホーム

特別養護老人ホームにおける人員配置基準は以下の通りです。

職種 配置基準
施設長(管理者) 1(常勤、原則専従)
医師 必要な数
介護職員 3:1以上(原則専従。介護職員は常勤換算、看護職員は常勤換算必要数・常勤1人以上)
看護職員
生活相談員 100:1以上(常勤)
機能訓練指導員 1以上(兼務可)
介護支援専門員(ケアマネジャー) 1以上(常勤、原則専従)
栄養士 1以上
ユニットリーダー ユニットごと(常勤)

(出典:厚生労働省「指定介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)における主な人員配置基準」

特別養護老人ホームには、1部屋を2~4人で使用する「従来型」と、1人ひとりに個室が与えられる「ユニット型」の2種類の形式があります。ユニット型の特別養護老人ホームの場合、昼間は1ユニットごとに常時1人以上の介護職員、または看護職員の配置が必要です。また、夜間・深夜には、2ユニットごとに1人以上の介護職員または看護職員の配置が必要となります。

介護老人保健施設

介護老人保健施設における人員配置基準は以下の通りです。

職種 配置基準
医師 常勤1以上、100対1以上
薬剤師 実情に応じた適当数(300対1を標準とする)
看護・介護職員 3:1以上、うち看護は2/7程度
支援相談員 1以上、100対1以上
理学療法士、作業療法士または言語聴覚士 100対1以上
栄養士 入所定員100以上の場合、1以上
介護支援専門員(ケアマネジャー) 1以上(100対1を標準とする)
調理員、事務員その他の従業者 実情に応じた適当数

(出典:厚生労働省「介護老人保健施設(参考資料)」

介護老人保健施設は、ほかの高齢者施設と比べて、医師や看護職員、リハビリに関する職員の人員配置比率が高くなっています。

グループホーム

グループホームにおける人員配置基準は以下の通りです。

職種 配置基準
介護職員 日中:利用者3人に1人(常勤換算)
夜間:ユニットごとに1人
計画作成担当者 ユニットごとに1人 (最低1人は介護支援専門員)
※ただし、ユニット間の兼務はできない
管理者 3年以上認知症の介護従事経験があり、厚生労働大臣が定める研修を修了した者が常勤専従

(出典:厚生労働省「認知症対応型共同生活介護(認知症グループホーム)」

管理者は、常勤であれば誰でもなれるというわけではありません。認知症の介護従事経験が3年以上あり、厚生労働大臣が定める管理者研修を修了した人が管理者となる必要があります。

特定施設入居者生活介護

介護付き有料老人ホームをはじめとする、特定施設入居者生活介護における人員配置基準は以下の通りです。

職種 配置基準
管理者 1人(兼務可)
生活相談員 要介護者等:生活相談員=100:1
看護・介護職員 ①要支援者:看護・介護職員=10:1
②要介護者:看護・介護職員=3:1
※ ただし、看護職員は要介護者等が30人までは1人、30人を超える場合は50人ごとに1人
※ 夜間帯の職員は1人以上
機能訓練指導員 1人以上(兼務可)
計画作成担当者 介護支援専門員1人以上(兼務可)
※ただし、要介護者等:計画作成担当者100:1を標準とする

(出典:厚生労働省「特定施設入居者生活介護」

特定施設入居者生活介護の管理者や機能訓練指導員は、兼業が可能となっていますが、あくまで業務に支障が出ない範囲と規定されています。また、看護職員の人員配置基準は、「要介護者等が30人までは1人、30人を超える場合は50人ごとに1人」となる点に注意が必要です。

デイサービス

デイサービスにおける人員配置基準は以下の通りです。

職種 配置基準
生活相談員(社会福祉士など) 事業所ごとにサービス提供時間に応じて専従で1以上
※生活相談員の勤務時間数としてサービス担当者会議、地域ケア会議等も含めることが可能
※生活相談員または介護職員のうち1人以上は常勤
看護職員 単位ごとに専従で1以上
※通所介護の提供時間帯を通じて専従する必要はなく、訪問看護ステーション等との連携も可能
介護職員 ① 単位ごとにサービス提供時間に応じて専従で次の数以上(常勤換算方式)
ア 利用者の数が15人まで1以上
イ 利用者の数が15人を超す場合、アの数に利用者の数が1増すごとに0.2を加えた数以上
② 単位ごとに常時1人配置されること
③ ①の数および②の条件を満たす場合は、当該事業所の他の単位における介護職員として従事することができる
※生活相談員または介護職員のうち1人以上は常勤
機能訓練指導員 1以上(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士、看護職員、柔道整復師またはあん摩マッサージ指圧師)

(出典:厚生労働省「通所介護及び療養通所介護(参考資料)」

地域密着型通所介護事業所で定員が10人以下の場合は、看護職員または介護職員のいずれか1人の配置で問題ありません。

訪問介護

訪問介護における人員配置基準は以下の通りです。

職種 配置基準
訪問介護員など 常勤換算方法で2.5以上
サービス提供責任者 介護福祉士、実務者研修修了者、旧介護職員基礎研修修了者、旧1級課程修了者、3年以上介護等の業務に従事した介護職員初任者研修課程修了者 ○訪問介護員等のうち、利用者の数40人に対して1人以上(原則として常勤専従の者であるが一部常勤職員でも可)
○以下の要件を全て満たす場合には、利用者50人につき1人
・常勤のサービス提供責任者を3人以上配置
・サービス提供責任者の業務に主として従事する者を1人以上配置
・サービス提供責任者が行う業務が効率的に行われている場合
管理者 常勤で専ら管理業務に従事するもの

(出典:厚生労働省「訪問介護の報酬・基準について」

介護職員は介護福祉士、実務者研修、初任者研修などを修了している職員に限られます。サービス提供責任者が、介護職員初任者研修課程修了者(旧2級課程修了者)の場合、所定単位数が減算されることにも注意が必要です。

3.人員配置基準に関する注意点

続いて、介護施設の人員配置基準に関する主な注意点を紹介します。

・人員不足のために特定の職員に負担が偏っていないか
・人員不足のために介護サービスの質が低下していないか
・常勤とアルバイト・パート職員の比率が人員配置基準に違反していないか


人員配置基準に関して、介護施設では上記のような状況に陥ってしまいがちです。シフトを調整して適切な人材配置を行ったり、勤務時間数が短い職員や派遣社員などを上手に活用したりしながら、定められたルールを守れるように配慮しましょう。

また、今後は介護施設の3:1の人員配置基準が、4:1に緩和される可能性があります。人員配置基準の緩和は、2022年9月時点で「特定の施設形態」を対象に検討されており、具体的には、ICTの活用や介護ロボットの導入など先進的な取り組みによって人材不足の解消を実現している施設が、緩和の対象となると言われています。

いずれにしても、現状では検討段階であり決定事項ではないため、人員配置基準の緩和については、これからの動向に注意する必要があるでしょう。

まとめ

利用者さんに適切な介護サービスを提供するためには、人員配置基準を満たす体制づくりが必要です。人員配置基準は介護保険法によって定められており、違反すると行政処分が下される可能性があります。予期せぬ事態によって、一時的に人員配置基準を満たせなくなる場合は、各市区町村に相談するようにしましょう。

なお、介護現場における人材不足を背景に、人員配置基準が見直される動きもあるため、今後も動向には注意が必要です。

「介護のみらいラボ」では、介護の仕事に役立つ情報を多数紹介しています。介護職として働く方も、介護職に興味がある方も、ぜひ参考にしてください。

※当記事は2022年9月時点の情報をもとに作成しています

▼監修者からのアドバイス

厚労省は、適切な介護・医療の提供や介護の質を担保するために、医師、介護福祉士、看護師などの資格を有した人材を、介護施設・事業所に配置するよう人員配置基準を定めています。
人員配置基準は、入所者(利用者)に対して配置すべき職員数を定めたもので、介護保険法では、介護施設・事業所の種類ごとに決められている必要な職員数を配置することが義務付けられています。
その基準を満たしていない場合は違反しているとみなされ、指定の取り消しやサービス停止などの行政処分を受ける可能性があります。介護施設の介護の質や介護施設・事業所の価値の向上のためにもコンプライアンスは欠かせません。
厚労省は、令和4年12月、「介護職員の働く環境改善に向けた政府パッケージ(案)」のなかで、介護施設の職員配置基準の柔軟化の検討について、次期報酬改定の議論のなかで検討するとしています。現在、介護施設では利用者3人に対して職員1人という3:1の人員配置基準が設けられていますが、テクノロジーや介護助手などの導入、またそれらを組み合わせることによって、3:1より少ない職員数で運営が可能になる施設が出てくる可能性があります。
これは介護人材確保と関連があります。介護職員数は、2019(令和元)年度は211万人ですが、2040年度には280万人必要と推計されているからです。
要介護認定者は今後さらに増加すると見込まれるなか、生産年齢人口が急減するため、介護人材確保が大きな課題です。

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赤羽克子(Katsuko Akaba)

元聖徳大学心理・福祉学部社会福祉学科教授

社会福祉施設勤務を経て教育の世界に入る。現在はマーシーハンディキャップサポート協会理事として障害者に対する理解の啓蒙活動・障害者スポーツの支援や松戸市シルバー人材センターのアドバイザーなどを行っている。

赤羽克子の執筆・監修記事

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