Produce by マイナビ介護職 マイナビ介護職

介護の未来ラボ -根を張って未来へ伸びる-

仕事・スキル 介護士の常識 2024/04/13

ケースワーカーとは? 詳しい仕事内容や必要な資格・スキルについて詳しく解説

文/山本史子(介護福祉士) thumbnail.jpg

ケースワーカーは病気や障がいなど、さまざまな事情で日常生活を送ることが難しい方をサポートする仕事です。しかし、ケースワーカーの仕事に興味があるものの、具体的な業務内容はよく知らないという方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、ケースワーカーの仕事や必要な資格について詳しく解説します。

1.ケースワーカーとは


ケースワーカーは、公的機関において、病気や貧困などにより日常生活に問題を抱えている人を対象に、適切な支援を受けるよう、相談やサポートをする職種です。生活保護や就労支援・介護など、さまざまな困りごとや不安を抱える人の相談を受け、必要な支援があれば手続きをします。

ケースワーカーは公務員

ケースワーカーは基本的に、公的機関に勤務する公務員です。都道府県や市区町村の福祉事務所といった公的機関で働く場合、公務員試験に合格している必要があります。まずは、一般行政職として採用され、その後、福祉事務所に配属されるのが一般的です。また、福祉事務所で働く場合、社会福祉主事任用試験の取得も必要です。

ソーシャルワーカーとの違い

ケースワーカーに似た仕事に、ソーシャルワーカーがあります。ソーシャルワーカーとケースワーカーとの違いは、公的機関で働いているかどうかです。上述したとおり、ケースワーカーは基本的に公務員です。一方で、ソーシャルワーカーは、病院や介護施設などで働き、介護相談や病気による収入面の不安・職場復帰といった専門的な相談に対応します。また、関連機関との連携を図かり、安心して生活が送れるように支援しています。

ソーシャルワーカーは資格がなくても働けますが、社会福祉士や精神保健福祉士などの資格があれば福祉の相談業務に生かせるでしょう。どちらの資格も大学や専門学校を卒業後、国家試験に合格するか、実務経験を積んでから国家試験を受験・合格する必要があります。また、それぞれの国家試験には受験資格があるため、確認が必要です。

2.ケースワーカーの仕事内容


福祉事務所で働くケースワーカーは、大きく面談担当と地区担当に分かれており、面談担当者は相談の受け付けや支援計画の立案・実施し、その後、事案は相談者の地区担当者に引継ぎされます。具体的な仕事の内容を見てみましょう。

生活保護・病気など生活相談

福祉事務所では、生活保護や病気などの生活相談が主な仕事です。具体的には、生活保護の申請の受け付けや調査・認定などを担当します。ケースワーカーは相談者との面談を通じて、相談者の収入や資産・家族構成・健康状態などを調査し、その人に合った支援を提案します。問題の原因や解決策を考えることが主な仕事となっており、相談者の家庭訪問や支援計画の実施は、地区担当者が行います。

家庭訪問

家庭訪問は、相談者の状況を理解し、適切な支援をするうえで、重要な役割があります。家庭訪問を通じて生活環境や問題を把握し、個別の支援計画が実施できるようになるでしょう。ケースワーカーは定期的な家庭訪問で支援がうまくいっているか確認し、相談者の状況に応じて支援内容を調整しながら、自立に向けた継続的な支援を行います。また、家庭訪問の面接の記録や整理・報告書の作成などの事務作業も重要な業務です。家庭訪問の日程調整も含め、ケースワーカーは複数の業務を同時遂行しながら、生活保護者へのさまざまな支援を実施します。

関連機関との連携

関連機関との連携も、相談者の問題解決に重要な業務です。特に、専門的な知識が求められる場合、ケースワーカーはさまざまな施設や機関との連携を行います。例えば、子どもに関する相談では、児童相談所や教育機関と連携することになるでしょう。社会のニーズが多様化するなか、ケースワーカーは地区全体の状況を把握し地方自治体や公共機関といった公的機関を含む社会資源とつなぐという重要な役割を果たします。

3.ケースワーカーになるには


ケースワーカーになるには、都道府県および、福祉事務所が設置されている市区町村の地方公務員試験に合格する必要があります。一般行政職としてとして採用後、福祉事務所に配属される場合がほとんどですが、自治体によって採用方法は異なるため確認しておきましょう。しかし、一般行政職への採用が決まっても、必ずしも福祉事務所に所属できるとは限りません。できるだけ可能性を高めるためにも、福祉事務所で働くときに必要な、社会福祉主事任用資格を取得しておくとよいでしょう。詳しい資格取得方法については、後述します。

給料・年収

厚生労働省が運営する職業情報提供サイトjobtagによると、ケースワーカーの平均年収は、約415.7万円でした。福祉事務所で働くケースワーカーは、地方公務員として給与や休暇・その他の待遇は、各自治体の公務員給与規定で定められています。基準となる勤務時間が定められているものの、地区担当のケースワーカーは家庭訪問といった外出業務が多いため、残業や休日出勤が発生する場合があるでしょう。

なお、病院や社会福祉施設などで働くソーシャルワーカーは、勤務先によって業務や年収は異なります。例えば、病院で働くソーシャルワーカーの平均年収は、約405.8万円です。この資料からは福祉事務所で働くケースワーカーの平均年収のほうがすこし高いことを示していますが、病院勤務のソーシャルワーカーの年収は、勤める病院の給与体系にもよるものですので、一概にはいえないことは理解しておく必要があります。

向いている人

ケースワーカーは、生活に困っている人の話を聞いたり支援したりすることが主な仕事です。そのため、ケースワーカーには、次のような人が向いているでしょう。

●相手の話を聞き、共感できる人
ケースワーカーは、相談者の話をよく聞き、理解と共感する姿勢が求められます。しかし、時には相談者が聞く耳をもたない、激しい感情をぶつけられる場合もあるため、忍耐力やストレス耐性も必要だと考えられます。

●人の役に立ちたい気持ちが強い人
ケースワーカーは、生活困窮者や障がい者・高齢者といった、さまざまな課題を抱える方の相談にのり、支援をする役割があります。それぞれに抱える生活の不安に対応するためにも、「人の役に立ちたい」という気持ちがあると、仕事にやりがいを感じられるでしょう。

●冷静な判断ができ、問題解決できる人
ケースワーカーは、相談者の状況を素早く把握し、適切な支援を選択、実施する必要があるため、冷静な判断力や問題解決能力が必要です。また、ケースワーカーは相談者とその家族だけではなく、関係機関との連携や調整をすることが多いことから、相談者の要望や意見を正確に理解し、伝える能力がある人も向いているでしょう。

4.ケースワーカーに必要な資格とは


ケースワーカーは公務員で、地方公務員試験に合格することが必要です。一般の行政職として採用された場合でも、ケースワーカーとして活躍するためには「社会福祉主事任用資格」や「児童福祉司」が必要になることがあります。それぞれ詳しく解説します。

社会福祉主事任用資格

社会福祉主事任用資格とは、公的機関で社会福祉業務をするために必要な資格です。社会福祉主事任用資格は、働きながらでも取得可能な資格となっています。社会福祉主事任用資格の取得ルートは、次の5つの方法があります。

  • 大学・短大で厚生労働省が指定する社会福祉に関する科目を3つの科目を履修
  • 厚生労働省の指定養成機関を修了
  • 都道府県などの講習課程を修了
  • 通信教育の受講課程を修了
  • 社会福祉士・精神保健福祉士を取得

大学・短大を卒業した方は、厚生労働省が指定する社会福祉に関する3つ以上の科目を履修する必要があります。この履修科目は大学や短大の卒業した年によって科目名が変更されているため、確認が必要です。また、都道府県での講習が受けられるように計画はされているものの、実際には受講できる都道府県はありません。社会福祉主事任用資格を通信講座でも取得できますが、施設・団体の所属長が取りまとめて申し込みをするケースがほとんどです。詳しくは、各自治体に問い合わせるようにしましょう。

児童福祉司

児童福祉司は、地方公務員として都道府県と政令指定都市に設置された児童相談所に所属し、地方自治体の法令に基づいた行政業務をします。子どもに関する家庭相談と情報提供、必要に応じて医療や教育などの関連機関と連携を図る仕事であり、子どもの育成相談から虐待の一時保護や入所措置・里親委託など児童福祉司の業務は多岐に渡ります。児童福祉司になる主なルートは次のとおりです。

  • 指定養成校卒業または、都道府県が実施する講習会の課程修了
  • 大学で指定科目を履修後、指定施設で1年以上実務従事
  • 医師や社会福祉主事の経験者
  • 助産師・保健師・看護師・保育士・教員(1種)・教員(2種)児童指導員で、指定施設に指定年数業務に従事後、指定講習会を修了

児童福祉司になるには、特定の資格や指定学校の卒業・指定講習課程を修了し、都道府県から任用される必要があります。また、任用後も研修を受け、5年以上の児童福祉司の経験を積むことで、主任児童福祉司へのステップアップが可能です。

5.ケースワーカーが活躍できる職場


ケースワーカーは、福祉事務所や児童相談所に配属され、活躍しています。それぞれの職場の特徴を見てみましょう。

福祉事務所

ケースワーカーは、主に福祉事務所で働いています。福祉事務所は都道府県に設置義務があり、社会福祉関連の法律に詳しいことが求められます。社会福祉関連の法律の知識は、利用者の権利を守り、適切なサービスを提供するためにも必要です。福祉事務所で働くケースワーカーは、地域住民と深い関係を築きながら直接支援が可能なため、社会に貢献できていることが実感できるでしょう。また、社会福祉の専門知識を活用し、成長できる機会も多く、やりがいを感じられる職場といえます。

児童相談所

児童相談所は都道府県および、政令指定都市に配置されており、子どもと家庭が抱える悩みの相談や問題点の解決のために働きかける業務を担います。例えば、子どもの虐待やネグレクト・育児相談や、緊急性が高い場合には子どもの安全の確保などです。児童相談所で働くケースワーカーは、子どもや家族の複雑な家庭問題に関わるなかで、信頼関係を築くことが大切です。また、状況に応じて、他の専門職との連携や冷静な判断力が求められます。

6.ケースワーカーの仕事の魅力


ケースワーカーのやりがいや仕事の魅力は、主に次の2点です。

困っている人の役に立てる

ケースワーカーは、生活困窮者や障がい者・子どもなど、それぞれの状況やニーズに応じた支援を行うことで、困っている人の悩みや不安を解決に貢献します。例えば、職業訓練や就労支援の提供や生活改善で経済的な自立を促すことです。相談者の生活改善や自立につながったときには、大きな達成感と充実感が得られるでしょう。

幅広い知識を身に付けられる

ケースワーカーは、生活保護法や児童福祉法・障害者福祉法など、さまざまな法律や制度に関する知識を身に付ける必要があります。ケースワーカーは、さまざまな専門職と連携して仕事をする機会も多く、新しい知識やスキルを発揮できるため、やりがいを感じられるでしょう。また、日々の業務を通じて、これらの分野に関する深い知識を身に付け、自分自身のスキルの拡大や専門性を高めることも可能です。

まとめ:ケースワーカーは簡単ではないが、幅広く人の助けになる仕事!


福祉事務所で働くケースワーカーになる場合、公務員試験に合格したうえで社会福祉主事任用資格を取得する必要があります。さまざまな悩みや不安を抱え、問題解決方法が分からないと悩む人にとって、ケースワーカーは強い味方です。

超高齢社会を迎えた今、手助けが必要になる人が増える可能性も考えられます。ケースワーカーは将来性のある仕事といえるかもしれません。社会福祉の専門家として、ケースワーカーを目指してみてはいかがでしょうか。

【日本全国電話・メール・WEB相談OK】介護職の無料転職サポートに申し込む

最新コラムなどをいち早くお届け!
公式LINEを友だちに追加する

お役立ち情報を配信中!
X(旧Twitter)公式アカウントをフォローする

介護職向けニュースを日々配信中!
公式Facebookをチェックする

SNSシェア

山本史子(Fumiko Yamamoto)

介護福祉士

デイサービスで約20年現場職員として経験。2007年に介護福祉士の資格を取得。「この施設にいると楽しい、また行きたい」と笑顔で帰ってもらえるデイサービスにしたいという思いで20年間利用者様のケアをしている。知的障害のある自閉症の息子がいるため、介護現場で働きながら、母親の立場から障がい者福祉にも関わっている。

山本史子の執筆・監修記事

介護の仕事・スキルの関連記事

  • 介護士の常識

    2024/04/17

  • 利用者さんが亡くなったときのご家族への言葉のかけ方の基本と実例

  • 文/中村 楓(介護支援専門員・介護福祉士・介護コラムニスト)
  • 介護士の常識

    2024/04/16

  • 2024(令和6)年度介護報酬改定|処遇改善・職場環境の改善など徹底解説!

  • 文/福田明(松本短期大学介護福祉学科教授)
  • 介護士の常識

    2024/04/14

  • 共感疲労とは?介護職におすすめの対策方法5選も

  • 構成・文/介護のみらいラボ編集部 監修/赤羽克子
もっと見る