共感疲労とは?介護職におすすめの対策方法5選も
構成・文/介護のみらいラボ編集部 監修/赤羽克子
介護の仕事は、利用者さんの身体だけでなく、心にまで寄り添うシーンが多いもの。そのため、介護職の方は相手の痛みや苦しみに共感したり同情したりと、さまざまな感情を抱え込む傾向にあります。そして、共感、同情などによって感情を動かされ続けると、自分自身の心が疲れてしまうことにもなりかねません。
こうした症状は「共感疲労」と呼ばれており、放っておくと「疲れが取れない」「イライラする」などの不調につながると言われています。みなさんのなかにも、「何だか調子が悪いけれど、原因がわからない」と思っていろいろ調べるうちに、共感疲労という言葉にたどりついた方がいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、共感疲労の具体的な症状やなりやすい方の特徴などについて詳しく解説します。また、共感疲労への対策も紹介しますので、心に疲れを感じている介護職の方は、ぜひ最後までご覧ください。
1.共感疲労とは?
共感疲労とは、つらい状況にいる方の痛みや苦しみに共感しすぎて(寄り添う気持ちが強すぎて)、心が疲れ切ってしまうことを言います。共感力が高すぎるがゆえにさまざまな感情を抱え込み、自分のなかでうまく処理できないでいるうちに、心理的疲弊が生じてしまう......。そうした状況が続くと、仕事はもちろん日常生活にも影響を及ぼしかねないので、注意が必要です。
共感疲労をため込むと、次のような状況や、心理状態が引き起こされます。
・落ち込む
・いら立つ
・傷付く
・悔しい思いをする
・自分の気持ちを押し殺す
・眠れなくなる
・支援してあげたいと思う
・自信をなくす
・疲労感が抜けない
・罪悪感を抱く
ここでは、共感疲労になりやすい方の特徴や、介護職が共感疲労に悩まされやすい理由について解説します。
共感疲労になりやすい方の特徴
同じような状況で働いていても、共感疲労になりやすい方となりにくい方がいます。共感疲労になりやすい方の特徴は以下の通りです。
共感疲労になりやすい方の特徴 | |
---|---|
感受性が豊かな方 | 周囲の言動を親身に受け止めて、相手のつらさを自分のことのように感じてしまう |
マイナス思考の方 | 基本的に物事を悪い方向に考え、必要以上に悩んでしまう |
正義感が強い方 | 理不尽なことを見過ごせずに、自分が何とかしなくてはと感じてしまう |
何にでも興味を持つ方 | 好奇心が強く、周囲の問題に首を突っ込みすぎてしまう |
個人差はあるものの、共感疲労になりやすい方は、上記のような感じ方や考え方をする傾向にあります。自分でも気付いていない「思考の習慣」が原因で、知らず知らずのうちに共感疲労を引き起こす場合もあるでしょう。
介護職は共感疲労に悩まされやすい?
介護職は、利用者さんを近くで支える存在であり、継続的なコミュニケーションが必要とされます。また、相手の気持ちに寄り添ったサポートを求められることから、介護職の働き方を称して「感情労働」と呼ぶこともあります。
そうしたなかで、介護職の方が利用者さんと誠実に向き合おうとすると、感情の深い部分やトラウマ、人生などに触れることも少なくありません。しかし、介護職にできることは限られているため、「何とかしてあげなければ」という気持ちが、逆に心理的な葛藤や感情の消耗につながりやすいことも事実です。
加えて、利用者さんのご家族と関わる際のプレッシャーや、同僚とのしがらみなどもあるため、介護職は共感疲労に悩まされやすいと言われています。
(出典:日本社会福祉学会「高齢者福祉士セルにおける社会福祉・介護福祉従事者の共感疲労から共感満足へ」)
2.共感疲労のセルフチェック項目
「介護職は共感疲労になりやすい」と説明しましたが、共感疲労は自分では気付きにくいものです。介護の仕事では疲労を感じる機会も多いため、「少し疲れがたまっただけ」「ゆっくり眠れば治るはず」などと考えて、共感疲労のサインを見逃してしまうことも少なくありません。
ここでは、共感疲労に悩む方によく見られる症状を紹介します。自分の状態が気になる方は、表の項目と照らし合わせてみましょう。
共感疲労のセルフチェック項目 | |
---|---|
常に体がだるい状態で疲れが取れない | |
仕事に行きたくないと感じる | |
仕事中にうわの空で集中できない | |
熟睡できずに頭がぼーっとしている | |
利用者さんの話に関心が持てず聞き流してしまう | |
仕事への意欲が起きずにつまらないと感じる | |
小さなことにも過剰に反応してイライラする | |
一生懸命仕事に取り組んでいても無力感や虚無感がある | |
腹痛や頭痛など体調がすぐれない日が続いている |
セルフチェック項目はあくまでも目安であり、これだけで共感疲労だと断言することはできません。しかし、上記のような症状が多ければ多いほど、共感疲労の可能性が高いため、適切なケアを行うようにしてください。
なお、共感疲労をそのままにしておくと、症状が進行してよりつらく感じたり、心身の不調を引き起こしたりする恐れがあるため、早い段階でケアを始める必要があります。
3.【介護職】共感疲労への4つの対策
利用者さんの心身に寄り添う介護職が、共感疲労を完全に防ぐのは簡単なことではありません。だからこそ、自分のなかにたまっている心の疲れを受け止めた上で、随時ケアすることが大切になります。
ここでは、介護職の方向けに共感疲労への対策を4つ紹介します。
ポジティブなことをノートに書き出す
疲れがたまって気分が落ち込んでいる時は、物事を悪い方向に考えてしまいがちです。思考を切り替えるためにも、前向きなれることをノートなどに書き出してみましょう。
例えば、次のように、介護の仕事やプライベートに関してうれしかったことや良かったことなどを言葉にします。
・利用者さんから褒められた
・仮眠でスッキリした
・ランチで食べたパスタがおいしかった
日常の喜びや幸せを「意識的に見出す習慣」を身に付ければ、ネガティブ思考から抜け出しやすくなります。
プライベートを充実させる
日々、利用者さんと真剣に向き合い、仕事中心の生活になっているために、気分転換がうまくできていない介護職の方も多いのではないでしょうか。退勤後や休日は、遊びや趣味などの好きなことに時間を使ってリフレッシュするのも、共感疲労をため込まないポイントの1つです。
例えば、以下のような体験を通して、プライベートを充実させるのも良いでしょう。
・友達と人気のカフェでランチを食べながらおしゃべりする
・山歩きをして植物や景色の写真を撮る
・ピアノで好きな曲を練習してみる
私生活が充実していると、介護の仕事が大変でもオンとオフの切り替えがスムーズにできるため、ストレスの解消や疲労回復がしやすくなります。
他人と自分を切り離して考える
介護の仕事では利用者さんと心を通わせることが大切ですが、その一方で、一定の心理的距離を保つことも必要です。共感する姿勢を示しつつも、時には自分の生活や感情から切り離して考えるようにしましょう。
例えば、利用者さんのつらい身の上話を聞き、共感した上で優しい言葉をかけたとしても、仕事が終わったらいったん忘れるのがポイントです。適度な距離感は、自分を共感疲労から守るだけでなく、利用者さんの自立を促すことにもつながります。「自分にできることはないだろうか」と考えすぎないように注意しましょう。
気持ちをシェアする
介護の現場でイライラすることやつらいことがあった時は、自分のなかにそうした気持ちを留めないようにしたいもの。普段から、上司や同僚と積極的に話をする機会を設けて、気持ちをシェアするようにしましょう。
以下は、現場で感じやすい不調の事例です。
・利用者さんに愚痴を聞かされてストレスがたまっている
・利用者さんにつらく当たられて落ち込んでいる
・夜のシフトで仮眠があまり取れず体がだるい
なお、気軽に相談できるようにするためには、周囲との信頼関係を築いておくことも大切です。職場の人に話しにくい場合は、家族や友だち、カウンセラーなどの専門家に聞いてもらうことで、心理的負担が軽くなる場合もあります。
まとめ
共感疲労とは、つらい状況の相手に過度に共感することで、自分もつらく感じてしまい、心理的に疲弊している状況を言います。症状については個人差があるものの、介護職の方は共感疲労を起こしやすい環境にあるため、疲れや違和感を抱いた時には、早めに対策を講じることが重要です。
「介護のみらいラボ」では、介護現場におけるさまざまな悩みの解決策やストレス解消法、実務に役立つ介護知識や資格情報などを数多く掲載しています。介護に携わる方はぜひご活用ください。
●関連記事:介護職の人にもおすすめ!効果的なストレス解消法&避けるべき方法
※当記事は2022年8月時点の情報をもとに作成しています
▼監修者からのアドバイス
介護職は、利用者さんの感情を理解しようとする場合、利用者さんとの感情と心理的距離を置き、援助者として客観的にかかわる必要があります。しかし、利用者さんに深く共感しすぎてしまい、客観的にかかわることができなくなった時に介護職(援助者)に生じる心理的な疲労を共感疲労といいます。
共感は、介護を展開するにあたり必要不可欠なものですが、その一方で、共感疲労を介護職に与えるものであることを理解しておく必要があります。
介護職は、利用者さんに共感し、望ましい言動を意識し、誠実な対応を心がけて関わります。しかし、そのように対応していても、利用者さんやご家族などから理不尽なことを言われたり、クレームを受けたりすると、ストレスを感じ、自分自身の感情をコントロールすることが難しくなります。
共感疲労を軽減させる対策は「3.【介護職】共感労働への4つの対策」の中でも触れていますが、家族や友人、同僚、上司などから得られるサポートや、利用者さんやご家族と深くかかわる中で得られた満足感・喜びを増やすなど、緩和要因を増やすほうが効果的だといえます。
利用者さんと深く関わる中で、介護への負担(「〇〇さんへの援助がつらい」「対応できる自信がない」など)を感じ、冷静に対応するのが難しいと感じたら、その利用者さんと距離を置くという選択も考える必要があります。
介護職は感情労働であるため、感情のコントロールができなくなると、不適切な介護やさまざまなリスクを引き起こす可能性があることも理解しておきましょう。
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