利用者さんが亡くなったときのご家族への言葉のかけ方の基本と実例
文/中村 楓(介護支援専門員・介護福祉士・介護コラムニスト)
介護職として働いていると、利用者さんが亡くなる場面に遭遇したり、ご家族から訃報を聞いたりすることがあります。核家族化が進む現在において、身近で訃報に触れる機会が少ないかもしれません。そのため、利用者さんの訃報にどう対応していいか不安に思う介護職もいるのではないでしょうか。今回は、利用者さんが亡くなられたときのご家族への言葉かけの基本を解説するとともに、実例を紹介します。
1.利用者さんが亡くなったときの家族の言葉かけの基本

利用者さんが亡くなってしまったとき、ご家族は悲しみのなかでつらい思いを抱かれています。なかには、急な出来事に驚き、まだ現実が受け入れられずに混乱されている方もおられるでしょう。介護職員が声をかける際には、利用者さんやご家族の気持ちを気遣った言葉かけや態度が大切です。「お悔やみの言葉をかけなくては」とむやみに焦ったり、言葉選びに気持ちが行き過ぎたりしないように注意しなければなりません。利用差さんが亡くなったときには、以下の点に注意してご家族へ言葉をかけるようにしましょう。
素直な気持ちで短く済ませる
ご家族に声をかける際には、素直な気持ちで短く済ませることが大切です。職員がだらだらと話してしまうと、ご家族が利用者さんと過ごす最後の時間を奪ってしまうことになります。介護職員として、利用者さんの最後の様子を伝えたい、ご家族が知らないであろう利用者さんの様子を伝えたいという思いもあるでしょう。しかし、ご家族は今、突然のことに心の整理もつかない状況にあることがほとんどです。相手の気持ちを理解し、最低限の言葉を手短に済ませましょう。
介護職員のなかには、利用者さんが亡くなったことに言葉も出ないという人もいます。もし、「この度は急なことで......」ととっさに言葉が出なくても、悲しみやつらさ、言葉にできない思いはご家族に伝わります。無理に言葉を探さず、素直な気持ちと態度でお悔やみの言葉を伝えましょう。
忌み言葉は使わない
日本語には、信仰上の理由や特定の職業、場面において使用を避ける言葉がいくつかあります。利用者さんが亡くなった場合には、できるだけ重ね言葉や直接的な表現、不吉な表現は使わないようにしましょう。忌み言葉にあたりそうなときには、表現を言い換えたり、少しオブラートに包んだりして話すとよいでしょう。
忌み言葉の種類と具体的な言葉は以下の通りです。
-
重ね言葉
同じ音が続く言葉や不幸が続くことを連想させる言葉は、「不幸が重なる」「不幸を繰り返す」という意味を連想させる忌み言葉となっています。
例)ますます、たびたび、ときどき、また、わざわざ、再び、引き続き など -
直接的な表現
直接的に死を連想させる表現は、訃報や葬儀の場では避けるべき言葉となっています。
例)死亡、死ぬ、存命中、自殺、急死 など -
不吉な表現
不吉な意味を連想する言葉も、忌み言葉となっているため、使わないようにしましょう。
例)浮かばれない、大変なことになる、消える、切れる、壊れる、苦労の多い、つらかった など
宗教・宗派でふさわしくない表現がある
お悔やみの言葉のなかには、宗教や宗派によって使えるものと避けた方がよいものとがあります。
宗教ごとに異なった教義があり、使われる言葉も違います。例えば、仏教の場合、亡くなった人は極楽浄土へ行って成仏することを願うという考え方であるため、成仏できないことを連想される言葉は控えます。具体的には、「浮かばれない」「迷う」といった表現は避けた方がよいでしょう。
また、同じ仏教でも、宗派によって死に対する考え方に違いがあります。特に、浄土真宗の場合、死後はすぐに極楽浄土に行くことができると考えられているため、「ご冥福」という言葉は、信心不足と捉えられてしまい、不適切な表現となります。浄土真宗であることがわかったら、避けた方がよいでしょう。
そのほか、キリスト教では人が亡くなることは永遠の命の始まりとされ、キリスト教では、故人に対し神への感謝の言葉が述べられることも少なくありません。神道では、亡くなった人は家にとどまり、子孫を見守り続けるものであると考えられるなど、それぞれに死生観が異なります。お悔やみの言葉でよく使われる「冥福」「成仏」「往生」「供養」といった言葉は、仏教用語になるため、他の宗教には使わないと覚えておくとよいでしょう。
安易に励まさない
利用者さんが亡くなって気持ちが落ち込んでいるご家族の様子を見て、励ましたい気持ちになる介護職員もいるのではないでしょうか。しかし、安易に励ますような言葉をかけてはいけません。ご家族にとっては、急な出来事で不安や混乱のなか、喪失感を抱えている状況です。その状況から立ち直るまでには、長い時間がかかることは想像に難くありません。亡くなった直後の状況で、励ますことはご家族にとってはつらい言葉かけになるでしょう。励ましたい気持ちはぐっとこらえて、お悔やみの言葉だけをかけるようにしてください。
2.利用者さんが施設で亡くなったときの家族への言葉のかけ方

施設に入居されている利用者さんが亡くなった場合、突然の訃報に遠方から駆けつけてくださるご家族も少なくありません。また、夜間に急いで駆けつけてくださった方もいるでしょう。ご家族が施設に来られた際には、まず、駆けつけてくださったことに対する感謝やねぎらいの言葉を忘れないようにしましょう。
離れて暮らしていたご家族にとっては、突然のことで状況を受け止め切れない状況です。介護職員が言葉をかける際には、お悔やみの言葉をかけることばかりに意識を向けるのではなく、ご家族に寄り添った対応を心がけましょう。そして、利用者さんとご家族が落ち着いた時間を過ごせるような配慮を行ってください。
【具体的な言葉のかけ方】
「本日は、急なことで遠くから駆けつけてくださり、ありがとうございます。突然のことで、私どもも残念でなりません。」
「お元気に過ごされていましたが、この度は急なことで......。職員一同、さみしく思っています。」
3.電話で利用者さんが亡くなったことを聞いたときの家族への言葉かけ

介護職員のなかには、電話で利用者さんの訃報を受けたことがある人もいるのではないでしょうか。自宅で生活されている利用者さんや、入院中だった利用者さんが亡くなった場合、事業所や施設にご家族から連絡がくるケースは珍しくありません。電話で訃報を受けたときの対応についても知っておくと、急なことに慌てなくて済むでしょう。
電話で利用者さんの訃報を聞いた際には、まず大変なときにご連絡いただいたことに対して、感謝の気持ちを述べましょう。そのうえで、「この度はご愁傷さまでございます」や、「心からお悔やみ申し上げます」といった、お悔やみの言葉をかけるようにします。なお、死因を尋ねるのはマナー違反にあたりますので、こちらからは聞かないようにしましょう。
そして、可能であればお通夜や葬儀、告別式の日時や場所が決定したら教えてもらうように伝えます。最近は、家族葬で身内だけでやるという方も増えています。身内だけでといわれたときには、無理に聞かないようにしましょう。
【具体的な言葉のかけ方】
「大変なときにお電話いただきありがとうございます。心からお悔やみ申し上げます。もしよろしければ、利用者様にお別れをしたいのですが、この後の日程などはお決まりでしょうか?」
「突然のことで言葉も見つかりません。元気に戻ってこられるのを心待ちにしていましたが、残念です。心からお悔やみ申し上げます。」
まとめ:ご家族の気持ちに配慮しながら残念な思いと感謝の気持ちを伝えよう
利用者さんが亡くなって、ご家族にとってはとてもつらく言葉にならない状況です。介護職としてご家族に言葉をかけるときには、ご家族の気持ちに配慮した言葉かけを行いましょう。お悔やみの言葉にはルールがあるので、何気なく使ってしまって相手を不快にさせてしまう可能性もあります。突然の状況に戸惑ってしまわないよう、基本を押さえたうえで気持ちを伝えることが大切です。
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