ナースエイドってどんな仕事?業務内容や1日の流れを詳しく解説
文/佐藤恵美(介護福祉士・社会福祉士)ナースエイドとは、病院やクリニックなどの医療機関で、患者さんの介助や看護師の補助的な業務を行う仕事です。しかし、その働き方についてはあまり知られていないようで、「ナースエイドの仕事内容や勤務形態などの詳細がよくわからない」という声を耳にすることも少なくありません。
この記事では、ナースエイドとしての勤務経験が7年ほどある筆者の実体験をもとに、ナースエイドの仕事内容や1日の流れ、給料などをわかりやすく説明していきます。
ナースエイドは資格がなくても始められるため、医療や介護の世界に興味がある人の「最初の一歩」としてぴったりかもしれません。
1.ナースエイドとは
ナースエイド(Nurse Aide)とは、医療機関で看護師の補助を行う職業のことで、無資格・未経験の人でもチャレンジできます。
ナースエイドには、以下のような別名があります。
- 看護助手
- 看護補助者
- ケアワーカー
- 看護アシスタント
医療機関によって呼び方は違いますが、すべてナースエイドを指す言葉です。ちなみに、私が勤めていた病院では、公式的には「看護補助者」でしたが、実際は「介護さん」と呼ばれていました。
また、ナースエイドに似た職種もあるため、以下にそれぞれの違いをまとめておきます。
介護助手 |
ナースエイドのサポートを行う 資格はとくに必要なし <医療機関における主な業務> ●ベッドメイキング ●患者・利用者の話し相手 ●患者・利用者の部屋の掃除 |
介護福祉士 |
国家資格の名称 介護に関する知識や技術を修得し、研修を終えた人が取得する <医療機関における主な業務> ●看護師のサポート ●ケアプランの作成 ●患者・利用者の身体介助 |
介護補助は介護業務を行う職員をサポートしますが、すべての医療機関に配置されているわけではありません。そのため、ナースエイドが介護助手の業務を行うケースもあります。
介護福祉士は国家資格で、無資格のナースエイドや介護職員よりも高い専門性をもちます。ちなみに、ナースエイドの仕事で経験を積み、介護スキルを修得してから介護福祉士にチャレンジすることも可能です。現に私は、そうして介護福祉士と社会福祉士の資格を取得しました。
業務で学んだことが資格試験の勉強に生かせるので、ナースエイドから介護福祉士を目指す方は、効率よく学習を進められるのではないでしょうか。
2.ナースエイドの仕事内容
ナースエイドの仕事内容は以下のとおりです。
- 患者さんの介助
- 患者さんの体位変換
- 患者さんの状態観察と報告
- 備品管理
- 病室・居室の掃除
- ベッドメイキング
- 必要物品の準備・片付け
では、1つずつ詳細を見ていきましょう。
患者さんの介助
ナースエイドの業務は、「患者さんに快適に過ごしてもらうためのケア」が大部分を占めます。ここでは、次の5つの介助のシーンについて、具体的な業務を解説します。
- 食事介助
- 排泄介助
- 入浴介助
- 更衣介助
- 移動・移送介助
食事介助
食事介助は、患者さんの食事をサポートする業務で、食事の配膳や下膳、食べやすく切る・ほぐすなど、安全に食事を楽しめるように配慮します。飲み込みの機能が低下している患者さんに対しては、とろみをつけて飲み込みやすくしたり、一口の量を調整したりといった細かなケアが必要です。
排泄介助
排泄介助では、患者さんのトイレ誘導や排泄前後のケア、オムツ交換などを行います。患者さんの移動手段は、車いすや歩行器、つえなどさまざまで、ナースエイドは、患者さんをトイレに誘導したり、排泄中の安全確保のために見守りをしたりします。
入浴介助
入浴介助は、患者さんが安全に気持ちよくお風呂に入れるようにサポートする業務です。入浴前の準備や身体の洗浄、着替え、体調確認などを行います。
更衣介助
更衣介助は、患者さんが服を着替えるお手伝いをする業務です。その日に着る服を一緒に選んだり、手足が動きにくい人の着替えをサポートしたりします。
移動・移送介助
移動・移送介助では、患者さんが安全に移動できるように支援します。患者さんのなかには、足腰が弱っている人や認知機能が低下している人も多く、1人での移動が難しい人もいます。ナースエイドは、こうした患者さんの状態を把握し、安全確保に配慮して介助しなければなりません。
患者さんの体位変換
体位変換とは、寝たきりの人の体勢を定期的に変えることです。同じ姿勢で寝たままだと、床ずれが発生するリスクが高まるため、こまめな体位変換が必要になります。例えば、2時間ごとに体位を変えると、特定の部位に圧力がかかり続けるのを防げるので、床ずれの予防につながります。
患者さんの状態観察と報告
ナースエイドは、日々の関わりのなかで患者さんの状態を観察し、異常があれば看護師に報告します。早い段階で異常を発見できれば、必要な処置や対応がしやすくなるため、観察と報告は患者さんの健康を守るための重要な役割を果たします。
備品管理
ナースエイドは病院や施設の備品管理も行います。消耗品の在庫を定期的に確認して補充するのはもちろん、車いすをはじめとする各種備品の状態チェック、修理依頼なども業務の一部です。
病室の掃除
患者さんが過ごす病室を清潔に保つのもナースエイドの仕事です。具体的には、ベッドまわりの清掃やゴミ捨て、換気などを行い、患者さんの衛生面の向上や快適な環境づくりに努めます。清潔な環境を維持できれば、感染症の予防にもつながるでしょう。
ベッドメイキング
ベッドがきれいに整っていれば、患者さんが気持ちよく過ごせるだけでなく、睡眠の質も上がります。そのため、日々のベッドメイキングは欠かせません。
必要物品の準備・片付け
看護師を補助し、スムーズな業務につなげるために、ナースエイドは、医療器具の準備や片付けを行う場合もあります。医療行為自体は医師や看護師が実施しますが、ナースエイドが必要なものを用意しておくことで効率アップにつながります。
3.ナースエイドの1日の流れ
ここでは、病棟勤務の日勤をベースに、ナースエイドの1日をまとめてみます。シフトによって出勤や退勤の時間は違うため、日々のスケジュールを知るための参考としてご覧ください。
8:30 |
· 出勤
· 情報収集 · 夜勤帯からの申し送り · 朝食配膳 · 朝食の介助 · 朝食の下膳 · 患者さんのトイレ介助や部屋への移送 |
9:00 |
· トイレ介助 · オムツ交換・陰部洗浄 · 浴室の準備 · 入浴介助 · シーツ交換 ※その日の役割に応じて業務を進める |
12:00 |
· 昼食の配膳 · 食事介助 · 昼食の下膳 ※交替で休憩をとる |
13:30 |
· 入浴介助 · トイレ介助 · 備品の確認 · 部屋の環境整備 · レクリエーション · 翌日の入浴予定調整 ※その日の役割に応じて業務を進める |
16:30 |
· 夜勤帯スタッフへ申し送り · トイレ介助 · 夕食の配膳 ※食堂で食べる患者さんを誘導する |
17:30 | 退勤 |
ナースエイドの仕事のうち、ナースコールは緊急対応が求められることがあるので、とても重要な業務です。
また、病院では患者さんの入退院が続くケースも多いため、人手が足りなくなることも珍しくありません。そのため私は、自分の担当業務だけでなく、他のスタッフを手伝う意識をもって動くように心がけていました。
そうした経験を踏まえるなら、ナースエイドは常に視野を広くもち、まわりを見渡しながら行動することが大切といえるかもしれません。
4.ナースエイドの給料
令和5年度「賃金構造基本統計調査」によると、ナースエイドの平均年収は以下のとおりです。
月収 | 222,500円 |
年間賞与 | 513,600円 |
年収 | 3,183,600円 |
(出典:令和5年度「賃金構造基本統計調査」 )
さらに収入を上げたいと考えている人は、夜勤を多めにしたり、経験を積んで介護福祉士に挑戦したりするのもよいでしょう。
よりよい職場を探すなら、転職サイトや転職エージェントを活用するのも1つの方法です。転職のプロの力を借りることで、無資格・未経験の人でも条件のよい職場に出会える可能性があります。
ナースエイドに向いている人・向いていない人
ナースエイドは、向いている人・向いていない人の特徴がはっきりしています。ここでは、それぞれの特徴について説明します。
ナースエイドに向いている人
ナースエイドに向いている人の特徴は、以下のとおりです。
• 思いやりと共感力がある人
• 注意力と細やかさがある人
• コミュニケーション能力が高い人
患者さんのケアを適切に行うには、相手の立場で考え、気持ちをくみとるスキルが求められます。患者さんが不安を感じているときに優しく声をかけ、安心感をもってもらうのはナースエイドの大切な役目です。
また、患者さんの安全を守るためには、その人の状態に合った介助を行う必要があります。そのため、患者さんの小さな心身の変化に気づく注意力も、ナースエイドに求められる資質といえるでしょう。
さらに、ナースエイドにはコミュニケーション能力も大切です。患者さんとの関わりや、同僚との連携をスムーズにするには、こまめなコミュニケーションが不可欠です。患者さんとの関係性を良好に保てば、それぞれのニーズや心身の変化が把握しやすくなるため、同僚とのチームワークもよりよいものになるでしょう。
ナースエイドに向いていない人
ナースエイドに向いていない人の特徴は、以下のとおりです。
• 協調性がない人
• 冷静さを欠く人
• 責任感が欠如している人
医療チームの一員として他の職種と連携をはかることも、ナースエイドの重要な仕事です。協調性がないと、業務に支障をきたす可能性があります。
冷静さに欠ける人も、ナースエイドには不向きです。医療の現場では、患者さんが転倒してしまったり、状態が急変したりなどの緊急事態が発生することがあります。そうしたときにパニックになると適切な対処がしづらいため、常に冷静さが必要です。
また、ナースエイドの仕事は、患者さんの命や健康に直結することから、高い責任感が求められます。責任感が欠如している人は、「患者さんの安全を守るために何をするべきか」を的確に判断できないため、ナースエイドには向いていないといえます。
ナースエイドの大変さとやりがい
私は、事務職からナースエイドに転職しましたが、それ以前に病院で働いた経験はありません。そのため、はじめは専門用語がわからず、会話についていくので精いっぱいでした。しかし、日々患者さんや同じナースエイド、看護師の方たちと関わるなかで、スタッフ同士の連携の大切さや患者さんの気持ちをくみとることの重要性など、多くの学びを得られました。
当時は回復期病棟に勤務していましたが、患者さんのリハビリが進んで改善に向かう過程を見られるのは、本当にうれしかったです。
ナースエイドになるには
ナースエイドは資格がない人でもできる仕事です。医療機関での勤務経験がない人も、思いやりをもって患者さんと関われるなら問題なく働けます。
しかし、「きちんと勉強して、ケアの質を上げたい」と思うのであれば、以下の資格試験に挑戦してみるのもよいでしょう。
• 介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)
• 看護助手実務能力認定試験
• メディカルケアワーカー検定試験
いずれも、取得すればナースエイドとしての実力をアピールできます。
看護助手実務能力認定試験は受験資格がなく、誰でも受けることができます。メディカルケアワーカー検定試験は、講座の修了が受験の条件です。
「ナースエイドとしてステップアップしながら働きたい」と考えているなら、これらの資格を検討してみましょう。
まとめ:ナースエイドは医療機関に欠かせない存在
ナースエイドは、医療機関における「サポーター」として、患者さんの日常生活を助けたり、看護師さんの手伝いをしたりと、幅広い仕事をこなします。資格がなくても始められるのが魅力ですが、仕事につくにあたっては思いやりの心と責任感が必要です。
ナースエイドの仕事は、人の役に立ちたい人や医療・介護に興味がある人にぴったりです。経験を積んで介護福祉士などの資格をとれば、活躍の場はさらに広がるでしょう。医療や介護の世界に入りたいと思っている人は、ナースエイドという仕事を選択肢の1つとして考えてみてはいかがでしょうか。きっと、やりがいのある仕事だと感じるはずです。
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