受給者証とは?種類や取得の方法、使い方について解説
文/中村 楓(介護支援専門員・介護福祉士・介護コラムニスト)
受給者証は、障害がある子供や大人が日常生活を豊かに送るうえで、必要な障害福祉サービスや医療サービスを受けるために欠かせません。障害福祉サービスの仕事に就く人は、受給者証がどのようなものなのかを把握しておくことが必要でしょう。
本記事では、受給者証の概要や受給者証と障害者手帳の違い、受給者証の支給量を解説するとともに、対象者や種類、使い方、取得方法について詳しくお伝えします。
1.受給者証とは?

受給者証とは、自治体から発行される障害福祉サービスや医療サービスの給付証明書のことです。利用したいときに申請して取得することで、公費負担でサービスを受けることができます。
障害福祉サービスに関わる受給者証には、「障害福祉サービス受給者証」「通所受給者証」「地域生活支援事業受給者証」などがあり、医療サービスに関する受給者証には「障害者医療費受給者証」「自立支援医療受給者証」などがあります。サービスによっては、複数の受給者証が必要となることもあるでしょう。私は実際に放課後デイサービスを利用していますが、通所受給者証と地域生活支援事業受給者証の2つを取得しています。
受給者証と障害者手帳の違い
受給者証と混同されがちなものに、障害者手帳があります。受給者証は、障害福祉サービスを利用するために必要な証明書であるのに対し、障害者手帳は障害を持つ人が取得できる手帳です。
受給者証は「障害福祉サービスの受給資格を保有していることを証明するもの」であり、障害の有無を証明するものではありません。 一方の、障害者手帳は「自身の持つ障害の名前や程度を証明するもの」です。
障害者手帳は、身体障害者手帳と精神障害者保健福祉手帳、療育手帳があり、手帳を取得することによって、生活面や就職に関する支援が受けられるようになります。それぞれの手帳ごとに、以下のように対象者と有効期限が決められています。
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身体障害者手帳
身体障害者が対象です。障害には、1級から7級までの等級が定められており、6級までの障害がある人が交付対象です。7級と認定された障害が1つだけでは、身体障害者手帳の申請はできません。ただし、7級と認定されている障害を2つ以上、もしくは7級と別に6級以上の等級も持っている場合に、手帳が交付されます。身体障害者手帳に有効期限は原則ないものの、障害の内容によっては再認定が必要です。 -
精神障害者保健福祉手帳
精神疾患やてんかん、高次脳機能障害、発達障害などが対象です。総合的な状態を判断したうえで、1~3級にわけられます。有効期限は原則2年です。 -
療育手帳
知的障害が対象です。地域によって、名称やサービス、等級の分け方が一部異なっています。有効期限はないことが多いですが、年齢に応じて障害の程度を見直す時期が定められていることが多く、再判定を受ける必要があると明記している自治体が多い傾向にあります。
受給者証の支給量とは?

障害福祉サービスの受給者証には、支給量が記載してあります。支給量とは、1か月に障害福祉サービスを利用できる上限日数を示したものです。支給量はサービスの種別ごとに規定されています。例えば、自立訓練(機能訓練・生活訓練)と就労移行支援、就労継続支援の場合は、当該月の日数(8月であれば31日)から8日を控除した日数が、宿泊型自立訓練や共同生活援助の場合は、当該月の日数が上限とされています。ただし、医師等による意見書などにより、必要だと認められる場合には支給量が原則よりも増える場合があります。
2.障害福祉サービスを利用するために必要な受給者証の種類と使い方

障害福祉サービスを利用するために必要な受給者証には、どのような種類があるのでしょうか。主な受給者証の種類と利用の場面、使い方について、見ていきましょう。
障害福祉サービス受給者証
障害福祉サービスを利用するときに必要となるのが、障害福祉サービス受給者証です。市町村によって大きさやデザインに違いがあります。障害福祉サービス受給者証の対象者、利用場面、使い方や有効期限は以下の通りです。
対象者 | 身体・知的・精神障害(発達障害含む)・指定難病の人 |
利用場面 | 在宅や施設における障害福祉サービスを利用したいとき |
使い方 | サービスを利用するタイミングで必要 |
認定等 | 障害福祉サービスによって障害支援区分の認定が必要となる場合は、調査員による認定調査と医師の意見書が必要 |
期限 | 障害福祉サービス受給者証の有効期限は、対象者の状況・利用サービス内容等によって異なり、サービスごとに記載される ※令和6年7月より、有効期限の更新時期が利用者の誕生月に変更 |
通所受給者証
児童発達支援や放課後等デイサービスなど、障害児通所支援事業サービスを利用する際に必要となるのが、通所受給者証です。受給者証の形態は市町村によって異なります。通所受給者証の対象者や利用場面、使い方等は以下の通りです。
対象者 | 身体・知的・精神(発達含む)指定難病を持つ18歳までの児童 |
利用場面 |
|
使い方 | 通所サービスを利用するタイミングや、利用日数を決めるときには、事業所に提出して必要事項を記載してもらう |
認定等 | なし |
期限 | 期限は1年。サービス利用を継続する場合は更新が必要 |
地域生活支援事業受給者証
障害福祉サービスのうち、地域生活支援事業サービスを利用する際に必要となるのが、地域生活支援事業受給者証です。対象者や使い方、有効期限等は以下の通りです。
対象者 | 65歳未満の障害者 特定の障害福祉サービスや介護保険サービスを利用している人 |
利用場面 |
|
使い方 | サービス利用開始のタイミングや、利用日数を決めるときに、事業所に提出して必要事項を記載してもらう |
認定等 | なし |
期限 | 期限は1年。サービス利用を継続する場合は更新が必要 |
※自治体が主体となり、地域の特性、利用者の状況に応じて、柔軟に実施する事業のため、自治体によって対象者や期限などは異なる場合があります。
障害児入所受給者証
障害児入所受給者証は、障害児が施設入所する場合に発行される受給者証です。利用したい施設が決まり、児童相談所に申し込みをしたのち、支給決定の通知があると発行されます。対象者や使い方等は以下の通りです。
対象者 | 身体・知的・精神(発達含む)障害を持つ児童 |
利用場面 | 障害児入所施設に入所するとき |
使い方 | 入所するときに提示 |
認定等 | なし |
期限 | 1年 |
3.医療を受けるために必要な受給者証の種類と使い方

受給者証のなかには、医療を受けるためのものがあります。医療に関する受給者証について、見ていきましょう。
障害者医療費受給者証
障害者医療費受給者証は、重度心身障害者医療助成制度の一部で、公的医療保険による医療を受けた際に支払った医療費の一部を助成する制度を利用する際に発行される受給者証です。対象者や使い方等は以下の通りです。
対象者 |
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利用場面 | 医療機関受診(通院、入院)の際 |
使い方 | 医療機関での支払いの際に、提示することで医療費の助成が受けられる |
認定等 | なし |
期限 | 期限は1年。サービス利用を継続する場合は更新が必要 |
自立支援医療(精神通院医療)受給者証
自立支援医療受給者証は、障害を持つ人が心身の障害に対する医療費の負担を軽減するためのものです。公費負担医療制度を利用する際に発行されます。自立支援医療受給者証には、精神通院医療、更生医療、育成医療があり、それぞれに対象者や使い方等が異なります。
対象者 | 精神通院医療 | 統合失調症などの精神疾患やてんかんを有し、通院による精神医療を継続的に要する人 |
更生医療 | 身体障害者手帳の交付を受け、その障害の除去や軽減する手術等の治療により確実に効果が期待できる18歳以上の人 | |
育成医療 | 身体に障害を持つ児童で、その障害を除去・軽減する手術等の治療により確実にその効果が期待できる18歳未満の人 | |
利用場面 | 精神通院医療 | 通院時 |
更生医療 | 対象となる医療を受けるとき | |
育成医療 | ||
使い方 | 精神通院医療 | 指定の医療機関に提示 |
更生医療 | 対象となる医療を受ける前に申請し、受給者証に書いてある医療機関に提出 | |
育成医療 | ||
認定等 | 医師の意見書が必要 | |
期限 | 精神通院医療 | 期限は1年。サービス利用を継続する場合は更新が必要 ※精神通院医療の診断書の提出が2年に1度必要 |
更生医療 | 原則として3か月以内、ただし治療が長期に及ぶ通院になると認められるものについては、最長1年以内 | |
育成医療 | 手術と術後の通院治療は原則として運用上最長一年以内 |
小児慢性特定疾患医療受給者証
小児慢性特定疾患医療受給者証は、小児慢性特定疾病審査会で審査を受けた後に、小児慢性特定疾病であると認められると受け取れる受給者証です。対象者や使い方等は以下の通りです。
対象者 | 小児慢性特定疾患を持つ児童(原則18歳未満の児童) |
利用場面 | 指定の疾患に関する受診 |
使い方 | 指定の疾患に関する受診を行う際に提示 |
認定等 | 医師の意見書が必要 |
期限 | 期限は1年。サービス利用を継続する場合は更新が必要 |
4.受給者証を取得する方法

受給者証を取得するためには、行政の担当窓口に申請する必要があります。受給者証の種類によって、申請に必要な書類や証明書、発行・更新に必要な期間は異なるため、複雑と感じてしまう人もいるのではないでしょうか。ここでは、障害福祉サービス受給者証の取得方法について、詳しく見ていきましょう。
申請に必要な書類・証明書
受給者証の申請に必要な書類や証明書は、自治体によって異なります。例えば、大阪市の場合、必要な書類や証明書は以下の通りとなっています。
- 介護給付費等支給申請書
- 障害福祉サービス利用者負担額減額・免除等申請書
- 同意書
- 個人番号確認書類
- 本人確認書類
- その他保健福祉センター所長が必要と認めるもの(「訪問調査・サービス利用意向聴取にあたって」「利用意向調査票」など)
- 障害福祉サービス受給者証(更新の際)
受給者証を申請したい場合は、各自治体のホームページや相談窓口などで必要な書類や証明書などを確認しましょう。
申請から取得までの流れ
受給者証の申請は、市町村の担当窓口にて行います。申請後は、調査員から訪問調査のための日程調整について連絡があります。調査は1時間程度のことが多いでしょう。状況を正しく伝えるためには、家族や支援者等が同席したほうが安心です。利用するサービス内容によって、認定が必要な場合があります。
発行・更新に必要な期間
受給者証の発行に必要な期間は、自治体によって差があるものの、おおむね1~2か月程度となっています。また、更新申請の手続きは、支給期間満了月の2か月前から可能となっているため、余裕を持って行うとよいでしょう。
まとめ:受給者証は障害福祉サービスを利用する際に必要

受給者証は、障害福祉サービスや医療サービスを利用するときに必要となるものです。受給者証の特徴や対象者などについて知っておくことは、障害福祉サービスで働くうえで役立つ知識となります。障害福祉サービスに興味を持ったら、ぜひ受給者証についても知っておきましょう。
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