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仕事・スキル 介護士の常識 2025/04/02

弄便(ろうべん)とは?認知症高齢者の不潔行動の原因と適切な対応方法を解説

文/渡口将生(介護福祉士・ケアマネジャー) thumb_250402.jpg

弄便(ろうべん)とは、認知症の症状として見られる行動の1つです。具体的には、おむつやリハビリパンツ(以下、おむつ)の中の便を手で触ったり、壁や衣類、寝具に便をこすりつけたりする行為を指します。

不潔行為と呼ばれることもありますが、本人に悪意はなく、認知機能の低下や不快感、羞恥心などが原因となっている場合がほとんどです。しかし、弄便を目の当たりにした介護者の中には、驚きや困惑を覚える方も少なくありません。

本記事では、弄便が起きる原因、具体的な行動の特徴、適切な対処方法などについて紹介します。原因を理解し正しく対応することは、介護者の負担を軽減するだけでなく、本人の気持ちに寄り添ったケアにもつながります。ぜひ参考にしてください。

1.弄便(ろうべん)とは?

弄便は、「便を弄(もてあそ)ぶ」と書きますが、本人は便を遊び半分で扱っているわけではありません。

多くの場合、排便後の不快感などが引き金となっており、一度始まると繰り返される可能性が高い症状です。そのため、後片づけに追われたり衛生管理が必要になったりと、介護者にとって大きな負担となることがあります。

ただし、弄便は本人なりの理由があってのことなので、原因や対処法を理解して、冷静に対応しましょう。

認知症の症状として見られる行動

弄便は、主に認知症の方に見られる行動です。また、精神疾患が原因で起こる場合もあります。

発見した介護者や家族は、その光景に驚き、場合によっては怒ったり叱ったりするケースも見られますが、本人に悪意はありません。便を便として認識できていないことが原因だったりもするため、むやみに叱ったりしないようにしましょう。

弄便で見られる具体的な行動

弄便の具体的な行動は、以下の通りです。

●壁や衣類、寝具に便をこすりつける
おむつ内に便が排泄されると、手を入れて取り出し、近くの壁や寝具、衣類にこすりつける場合があります。

●便を口に運ぶ
便を食べ物と誤解して口に入れてしまったり、便のついた手を無意識に口に運んでしまったりすることがあります。便の色や質感があんこなどの食べ物のように見えてしまうことで、口に運んでいると考えられます。

2.弄便の原因

弄便が起こる理由はさまざまですが、原因を理解することで、適切な対策やケアにつなげることが可能です。

弄便の原因には、次のようなものがあります。

不快感を取り除こうとした結果

おむつ内の不快感を取り除こうと考えた結果、弄便行為に至るケースがあります。

認知症の影響で排便の感覚が鈍っているとしても、おむつ内の便による違和感や蒸れ、不快感はわかります。その不快感を取り除きたいという気持ちから、無意識でおむつ内に手を入れて便を触ってしまうことがあるのです。

自分で便を処理しようとした結果

おむつ内や手に付着した便を、自分自身で何とか処理しようとする気持ちが原因になることもあります。早く片づけたいと思いつつも、正しい対処法がわからないまま対応するため、寝具や衣類につけてしまうのです。

このケースでは、おむつを破いてしまい、汚染箇所を広げてしまう場合もあります。事態が悪化すると混乱やパニック状態になり、他者から理解されにくい行動につながってしまうのです。

便を正しく認識できない

認知機能の低下によって、便を正確に認識できない、または別のものと誤認することが原因となる場合もあります。

たとえば、美容クリームだと思い込んで肌に塗ったり、食べ物と誤解して口に運んだりするケースです。また、便を大切なものだと思い込み、包んで保管しようとする行動が見られる場合もあります。

失禁に対する羞恥心

失禁の事実を隠そうとする行動が、弄便の引き金になる場合もあります。失禁してしまった恥ずかしさから、自分で便を処理しようとしたり、隠そうとしたりするのです。

しかし、処理の仕方がわからずに混乱し、便が付着した下着をタンスの中に隠したり、シンクで洗ったりするなど、意図しない行動に発展することも珍しくありません。

3.弄便の対策

弄便は、本人はもちろん介護者にとっても負担が大きいため、発生しないに越したことはありません。

ここからは、弄便をできるだけ予防する方法を紹介しましょう。

弄便対策①トイレでの排泄を優先する環境づくり

弄便の原因として、おむつ利用による不快感が挙げられるため、できるだけトイレで排泄できるようにサポートしましょう。

認知症の影響で便意をうまく伝えられない場合でも、ソワソワし始める、多弁になるなどの行動(サイン)が見られることがあります。普段から本人の行動を観察し、排便のサインを見逃さないように努めましょう。

また、決まった時間にトイレに誘導し、排泄のタイミングを把握しておくことも、スムーズな対応につながります。移動が困難な場合は、ポータブルトイレをベッドの近くに設置するのも効果的です。

弄便対策②おむつを頻繁に交換する

トイレの使用が難しくておむつを利用している場合は、不快感を覚える前に交換しましょう。

おむつに排泄物が長時間残っていると、不快感だけでなく皮膚トラブルや褥瘡(床ずれ)のリスクも高まります。排泄のサインを見逃さないように心がけ、排便後はなるべく早く新しいおむつに交換しましょう。

弄便対策③自然な排便を促す

便意が低下している場合でも、できる限り下剤を使わず、自然な排便を目指しましょう。便が緩くなると排便に気づきにくく、弄便の可能性が高まるからです。

自然な排便を促すには、消化のいい食事を提供したり、十分な水分補給を心がけたりすることが大切です。腸の動きを活発にするマッサージや、軽いストレッチを日常生活に取り入れるのもよいでしょう。

弄便対策④掃除しやすい環境を整備する

弄便による汚れに備え、掃除がしやすい環境を整えておくことも重要です。たとえば、ベッドまわりに防水シートを敷いたり、壁に貼れるビニールシートを活用したりすると、掃除の負担を軽減できます。

床が畳の場合は、汚れが畳の目に染み込むのを防ぐため、フローリングカーペットや拭き取りやすいマットを敷いておくのが効果的です。また、掃除道具を手の届く範囲に準備しておくと、万が一の場合でも迅速に対応できます。

弄便対策⑤手が便に触れない工夫をする

おむつや便を触らせない方法として、手袋・ミトンの利用やつなぎ服の着用を検討するのも1つの方法です。

ただし、ミトンやつなぎは、本人の自由を制限するため「身体拘束」とみなされます。便を触ることは防げますが、身体拘束は精神的な苦痛を伴うほか、認知症の進行や精神疾患につながりかねません。

そのため安易には行わず、ほかの対策を試しても効果が見られない場合に限り、最終手段として考えましょう。

4.弄便を発見したときの心がけと注意点

弄便を発見すると、介護者は驚きのあまり怒ったり叱ったりすることがあります。しかし、先に紹介したように、弄便は決して遊んでいるわけではなく、自身で処理しようとした結果起こるものです。つまり、「介護者に迷惑をかけないための行動」と捉えることもできるのです。

弄便を見つけたときは、次のことに注意して対応しましょう。

優しく声をかけ、落ち着いた対応を心がける

弄便を見つけた場合、まずは落ち着いて、穏やかな声かけをしましょう。弄便には悪意はなく、本人も自分がしたことに驚いたり、ショックを受けていたりする可能性があります。

やめてほしいという気持ちはわかりますが、叱ったりせず、自尊心を傷つけない言葉で安心感を与えることが大切です。叱責すると介護者との信頼関係が壊れ、その後の介護を拒否される可能性もあるため、相手に寄り添う気持ちで接するように心がけましょう。

汚れを拭き取り、衛生的に保つ

弄便を発見したら、まず手についた便をしっかり拭き取ることが重要です。最初に手をきれいにすれば、いろいろな場所を触って汚れが広がるのを防げます。

便が付着した手で目を触ったり口に運んだりすると、感染症のリスクが高まるため、その点にも注意が必要です。拭き取ったあとは丁寧に消毒し、衛生状態を確保しましょう。

お風呂で不快感を解消する

手足などの汚れを取ったあとは、本人をお風呂へ誘導し、ぬるめのお湯で全身を洗い流しましょう。お風呂は身体の清潔さを保つだけでなく、本人が感じている不快感をやわらげることにもつながります。

ただし、無理やりお風呂に連れて行ったり、冷たい水で洗ったりする行為は避けてください。恐怖心や嫌悪感を与えないように、ゆっくりと安心感を持たせながら進めることが大切です。

まとめ

弄便は、認知症の進行によって生じる行動の1つで、不快感や羞恥心、認知機能の低下が原因とされています。介護者としては驚きや困惑を感じることもありますが、原因が明確なため、適切な理解と対策を取ることで、負担を軽減できるでしょう。

弄便を発見した場合は、冷静かつ思いやりのある対応を心がけ、安心感のあるケアを実践することが大切です。本記事を参考に、落ち着いて対応できる介護者を目指してください。

●関連記事
参照:【介護職向け】便の拭き方の流れ|排せつ介助の注意点も解説
参照:現役介護士が語る 私が許せなかった排泄介助とその改善

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渡口将生(Masaki Toguchi)

介護福祉士・ケアマネジャー

20歳で介護福祉士の資格を取得後、施設の介護士や訪問介護のヘルパーとして従事。その後、介護資格取得のスクール講師を経験し、3つの事業所で管理者を務める。現事業所で相談員を経験後、ケアマネジャーとして勤務する。

セミナー講師やライターとしても活動しており、主に介護・医療メディアの執筆や講義を行っている。

渡口将生の執筆・監修記事

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