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仕事・スキル 介護士の常識 2025/04/01

潜在介護福祉士とは?人数や復職しにくい理由、復職支援制度を解説

文/中村 楓(介護支援専門員・介護福祉士・介護コラムニスト) thumb_250312.jpg

慢性的な介護人材不足が叫ばれるなか、注目されているのが潜在介護福祉士の存在です。潜在介護福祉士は、未経験の人に比べて即戦力としての期待が高まるため、厚生労働省や地方自治体が復職推進制度を設けています。潜在介護福祉士は、復職支援制度を利用することで、ブランクがあっても復職がしやすくなるでしょう。

では、潜在介護福祉士とは、具体的にはどのような人を指すのでしょうか。本記事では、潜在介護福祉士の概要や人数についてお伝えするとともに、復職しにくい理由や復職するきっかけについて紹介します。加えて、厚生労働省の復職支援制度や地方自治体などが行う復職支援プログラムなどについて解説します。

1.潜在介護福祉士とは?

潜在介護福祉士とは?

潜在介護福祉士とは、介護福祉士の資格を持っているものの、介護福祉や医療の分野で仕事をしていない人のことをいいます。潜在介護福祉士には、以前は介護職として働いていたけれども今は別分野で働いている人や退職したきりで仕事をしていない人、資格は持っているものの一度も介護職として働いたことがない人などが含まれます。

潜在介護福祉士に注目が集まる理由

潜在介護福祉士に注目が集まっているのには、介護業界の慢性的な人材不足があげられます。「令和6年度高齢社会白書」によると、2023年10月1日現在の高齢化率は、29.1%となっており、年々高齢化率は上昇を続けています。加速する高齢化に伴い、介護を必要とする高齢者数も増え続け、必要となる介護職員数も増加しています。実際に、介護に従事する職員数は増加しているものの、高齢化の速度が速すぎて、介護職員が不足しているのが現状です。

厚生労働省が公表している「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」によると、2026年度に必要な介護職員数は約240万人に対し、約25万人が不足すると推計されています。この不足を改善する策として、介護未経験者の参入促進が図られていますが、まだまだ不足感が続いています。そこで、即戦力として期待されているのが、潜在介護福祉士の存在なのです。

参照:第1章 高齢化の状況(第1節 1)|令和6年度高齢社会白書
参照:第1章 高齢化の状況(第2節 2)|令和6年度版高齢社会白書
参照:介護人材確保に向けた取組|厚生労働省

2.潜在介護福祉士の人数は?

潜在介護福祉士とは?

潜在介護福祉士は、どれくらいの人数がいるのでしょうか。社会福祉振興・試験センターが2020年度に実施した「介護福祉士就労状況調査実施結果報告書」によると、約58万人の回答者のうち、調査時点で介護・福祉・医療分野以外で仕事をしている介護福祉士は約4万人、仕事をしていない介護福祉士は約8万人とされています。この結果から、少なくとも約12万人の潜在介護福祉士がいることがわかります。

潜在介護福祉士の割合をみてみると、全体の約21%が介護・福祉・医療分野から離れています。このうち、現在は別の分野で仕事をしている人は7%、残りの約14%は仕事をしていないという結果になりました。

このなかで、別分野で働いている介護福祉士に注目してみると、介護・福祉・医療分野の就労経験がある人が87.2%にのぼります。介護福祉士の資格を持つ人の多くは、介護・福祉・医療分野を一度は経験しているものの同分野での就労を希望せず、別分野への転職を選択している人が一定数いるといえるでしょう。

参照:介護福祉士就労状況調査実施結果報告書|社会福祉振興・試験センター

3.潜在介護福祉士が復職しにくい理由とは?

潜在介護福祉士とは?

潜在介護福祉士は、なぜ復職していないのでしょうか。社会福祉振興・試験センターが行った「介護福祉士就労調査実施結果報告書」によると、再就業の意向について「ぜひ働きたい」「条件が合えば働きたい」と答えた人は、合わせて41.6%となっていました。復職の意欲がある人は半数程度いるにもかかわらず、潜在介護福祉士が少なくとも12万人いるという状況から、復職を阻むいくつかの理由があると考えられます。

潜在介護福祉士が復職しにくい原因について考えるうえで、キーポイントとなるのが退職理由です。そこで、潜在介護福祉士が介護・福祉・医療分野への復帰がしにくい理由となる退職理由について、詳しくみていきましょう。

心身の健康状態が改善しない

退職理由の第1位は、「心身の健康状態の不調」で42.1%となっています。具体的には、介助場面で腰を痛める人が多く、腰痛の悪化を理由に退職する人も少なくありません。また、交代制勤務で心身のバランスを崩してしまい、休職や退職に追い込まれてしまう人もいます。こういった心身の健康状態が改善しないことが原因で、介護・福祉・医療分野への再就職できなかったり心身への負担が少ない別分野へ就職したりする人がいます。

職場環境への不安がある

職場環境への不安も、退職の大きな理由となります。特に、心身状態が悪化する背景には、人間関係も含めた職場環境に問題があることも多いでしょう。社会福祉振興・試験センターが公表している「介護福祉士就労状況調査実施結果報告書」によると、介護・福祉・医療分野の職場を辞めた理由に「職場の雰囲気や人間関係に問題があった」があげられていることからも、職場環境は退職に大きな影響を与えると考えられるでしょう。
具体的には、上司や同僚との関係性に悩むことや、残業が多かったり休みがとりにくかったりすることがあげられます。就職活動や採用面接などで、ある程度の職場環境は確認できるものの、働いてみるまで実際のところはわからないため、介護・福祉・医療分野への復職に不安を抱えている人も多いでしょう。

給与や賃金の低さが気になる

「給与や賃金の水準に満足できなかった」ということも、退職理由ではよくあがる理由の一つです。国も介護職の賃金改善に取り組んでおり、年々水準はあがってきているものの、仕事内容に対して、給与や賃金の水準に満足できない人もいるでしょう。
実際に、結婚や妊娠などライフステージが変化するタイミングで転職する人もいます。介護職に復職しても生活に不安がある場合は、給与の高い業種への転職を検討する人もいるでしょう。

4.潜在介護福祉士が福祉介護医療分野に復職するきっかけ

潜在介護福祉士が実際に職場に復職するきっかけには、どのようなものがあるでしょうか。「介護福祉士就労状況調査実施結果報告書」によると、介護・福祉・医療分野への復職で重視する点についての調査では、「職場の雰囲気や人間関係」が74.4%と最も高く、次いで「給与や賃金の水準(73.8%)」「勤務形態が選べる(63.1%)」となっており、職場環境や給与面が復職のきっかけになると考えられます。

一方、復職したきっかけや動機の項目を見てみると、「勤務形態が希望に合った」が38.4%と最も多く、次いで「やりたい仕事がみつかった(34.5%)」「給与や賃金の水準に満足できた(23.6%)」「職場の雰囲気や人間関係が良かった(19.4%)」となっています。

これらの結果から、職場環境や給与体制の改善により、潜在介護福祉士の復職が進む可能性もあるでしょう。実際に、介護現場では、働いている人からの紹介で復職される介護福祉士もおり、職場の雰囲気や人間関係を知っていると復職しやすいとも考えられます。

5.潜在介護福祉士が活用できる復職支援プログラム

潜在介護福祉士とは?

潜在介護福祉士のなかには、長らく現場から離れていることで復職に不安を感じる人もいいます。そのため、国や自治体などでは、潜在介護福祉士の復職推進を目的とした取り組みを行っています。ここでは、潜在介護福祉士の復職推進に向け、全国老人福祉施設協議会や地方自治体、厚生労働省が実施している制度を3つ紹介します。

潜在介護職員復職支援プログラム

「潜在介護職員復職支援プログラム」は、全国老人福祉施設協議会が無料でオンデマンド実施している制度です。この制度を利用できるのは、以下のどちらかの条件に当てはまる人です。

  • 介護福祉士資格を有している者
  • 介護福祉士資格を取得しようとしている者または過去に介護現場での就業経験がある者のうち、現在就業していないか介護分野以外で就業している者

このプログラムでは、求められる介護福祉士像、介護職として知っておきたい知識や、就業先の選び方などを学ぶことができます。

参照:潜在介護職員復職支援プログラム|全国老人施設協議会
参照:令和5年度潜在介護職員復職支援プログラム開催要項|全国老人福祉施設協議会

介護職再就職支援講習

「介護職再就職支援講習」は、自治体などが実施している復職支援制度です。自治体によって実施している内容には、違いがあります。例えば、豊橋市では、半日で座学と実技を行って、職場復帰をサポートします。兵庫県の場合は、2日に分けて講義を実施し、受講者の希望によっては実技も行って、再就職を支援します。
対象者も自治体によって違いがありますが、主に介護福祉士や実務者研修等の資格を有する人、介護職員としての経験がある人などが対象です。介護職再就職支援講習は、定員が少ない傾向にあるため、受講を希望する場合は、募集が始まって早めに申し込んだほうがよいでしょう。

参照:介護の仕事復帰支援プログラム|豊橋市社会福祉協議会
参照:令和6年度介護職再就職支援講習の開催について|兵庫県

再就職準備金貸付事業

「再就職準備金貸付事業」は、介護の仕事に復帰するための費用を貸し付ける制度です。厚生労働省が実施しており、条件を満たせば返済免除があります。この事業は、以下の条件をすべて満たす人が対象となります。

① 次のいずれかに該当し介護保険サービス事業所等で1年以上の勤務経験がある人
●介護福祉士の資格がある
●実務者研修を修了している
●介護職員初任者研修(介護職員基礎研修、1級課程、2級課程でも可)を修了している
② 介護保険サービス事業所等において介護職員等として再就職した人
③ 都道府県福祉人材センターに氏名及び住所などの再就職準備金利用計画書を提出した人

この事業での貸付金額は40万円以内です。貸付を受けた後に介護職員等として業務に2年間勤務すると、貸付金の返済が全額免除となります。

参照:介護職として再就職をお考えの方、初めて働くことをお考えの方へ(再就職準備金、就職支援金のご案内)|厚生労働省

まとめ:潜在介護福祉士復帰支援制度を活用し再び介護福祉士として活躍しよう

潜在介護福祉士とは?

人材不足が深刻な介護現場において、潜在介護福祉士の存在は、即戦力として期待できる貴重な人材となっています。国や自治体は、潜在介護福祉士の復職支援制度を設け、復職を推進しています。長く現場から離れて復職が心配な人も、制度を利用することで不安を減らすことができます。ぜひ、制度を利用して介護福祉士として再び活躍してみませんか。

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中村楓(Kaede Nakamura)

介護福祉士・介護コラムニスト

現役介護支援専門員。介護福祉士、福祉住環境コーディネーター2級、認知症介護実践者研修の資格を持つ。病院や通所リハビリ、デイサービスで介護福祉士として働き、生活相談員や介護認定調査員の経験も持つ。「介護の未来を明るくする」をモットーに、現場感ある記事を書く介護コラムニストとしても活動中。

中村楓の執筆・監修記事

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