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仕事・スキル 介護施設・職場 2023/02/20

#インタビュー#気になるあの介護施設

「施設内通貨」の導入で入居者のモチベーションアップ!介護付き有料老人ホーム「クロスハート石名坂・藤沢」の取り組み|気になるあの介護施設

取材・文/タケウチ ノゾミ(イージーゴー) thumbnail.jpg

神奈川県藤沢市にある介護付き有料老人ホーム「クロスハート石名坂・藤沢」では、施設内通貨を導入し、入居者から多くの喜びの声を集めています。その取り組み内容や入居者からの反応について、「クロスハート石名坂・藤沢」の施設長 藤澤祐人氏に話を聞いてみました。

1.施設内通貨導入のきっかけ

――なぜ施設内通貨を導入することになったのですか。

施設内通貨の取り組みは当施設の開所当時から行っており、2022年の時点で導入して12年目となります。施設内通貨を導入した理由は、入居者が社会と繋がる機会を無くさないようにするためです。やはり施設に入居すると、ほとんどの時間を施設の中で過ごすことになるため、社会との繋がりがどうしても減ってしまいます。もちろん、現金でお買い物をする機会もなくなってしまいますよね。

しかし施設内通貨を導入すれば、お手伝いなどで貯めた通貨で自分の好きなものを選んで購入できるため、自分で稼いだお金で生活する感覚と似たような部分があると感じています。施設に入居されていることや、高齢であることを理由に社会から離されてしまうのではなく、今までの生活を継続できるという点で、施設内通貨は非常に効果的な手段だと感じています。

2.通貨の単位は3種類!毎日の生活の中で貯められる仕組み

――「クロスハート石名坂・藤沢」で導入されている施設内通貨は、どのような通貨なのでしょうか。

「デイポイント」と呼ばれるポイントを日常生活の中で貯めていただき、それを月に1度施設内通貨に換算する仕組みです。通貨の単位としては、「10デイ」「50デイ」「100デイ」の3種類があります。ポイントが貯まるシチュエーションとしては、ご自身で食器を下げるなど毎日行うものから、ラジオ体操などのレクリエーションに参加するといった不定期で実施されるものまで、様々な機会があります。またオムツを処分する際に使用する新聞紙をバラバラにして丁寧に折りたたむなどの、お手伝いでもポイントが貯まります。基本的に付与されるポイントは一律10デイポイントなので、毎日の生活の中で徐々に貯まっていく仕組みです。

ポイントは入居者ご自身が管理されるのではなく、スタッフがお一人ずつ名簿を準備して、日々ポイントのチェックを行い、期日に集計しています。貯まったポイントは施設内通貨に交換され、「デイ交換」と呼ばれる月1回の施設内での買い物の際に使用できます。基本的に「デイ交換」を行った翌日から、次のデイ交換の前日までの1ヶ月間の合計額を求めて、施設内通貨に交換しています。例えばその月に貯まったポイントが200デイポイントであれば、200デイの紙幣と交換するイメージです。「デイ交換」の当日には、施設内通貨が入った茶封筒をテーブルに一人分ずつ並べて、ご入居者がお買い物をする準備をします。実際のお金に換算すると、大体10デイで50円弱くらいの計算です。

「デイ交換」で使用できる10デイと50デイ

「デイ交換」で使用できる10デイと50デイ

3.「デイ交換」で購入できるもの

――「デイ交換」では、どのようなものを販売されているのですか。

スタッフが用意した日用品や洋服、お菓子や飲み物などを販売しています。開催は毎月第2火曜日の13時半からと決まっており、食堂のテーブルに品物を並べると共に、それぞれの品物が何デイで購入できるかの値札も設置します。利用者さんは自分の手持ちの施設内通貨で、「これとこの品物をください」といった形で買い物を楽しまれていますね。

ご自身で計算ができる場合は、余った通貨の計算をして「あと◯デイあるからこれも買おうかな」と、手持ちのデイで可能な限り買い物をしようとされる方もいらっしゃいます。また反対に「お菓子をセーブして貯まったデイで来月洋服を買おう」など、計画的に買い物をされている方もいて、好きなペースで買い物を満喫されているご様子です。身体が不自由な方などご自身での買い物が難しい場合は、入居者が指差したものをスタッフが代わりに支払ったり、お釣りを受け取ったりといったサポートも行っています。

4.利用者さんからの反応

――入居者からの反応はいかがですか。

やはり毎月1回必ず実施しているため、開催を楽しみにされている入居者はたくさんいらっしゃいます。中には自分の部屋のカレンダーに丸をつけて、あと何日で開催されるかと心待ちにされている方もいます。人気の品物はティッシュで、テッシュボックスは毎回購入される方が非常に多いですね。他にも、お気入りの歯磨き粉やポケットティッシュなど、入居者のご要望にあわせて品物を用意することもあります。後はチョコレートなどの甘いものが皆さんお好きなので、お菓子は常に補充しながら「デイ交換」を開催しています。

机の上にはずらりと商品が並ぶ

机の上にはずらりと商品が並ぶ

「デイ交換」の日は、普段の生活ではなかなか見られないような生き生きとした表情をされる方が多いので、かなり楽しんでいただけているのではと感じています。施設内通貨を取り入れていることは、施設の見学に来られた際や契約時には必ず説明しているのですが、「そんなこともやっているのですね!」と非常に驚かれることが多いです。入居者だけでなく、ご家族にも喜んでいただけているのではと思います。

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タケウチ ノゾミ(Nozomi Takeuchi)

ライター・編集者

福岡市在住のフリーライター・編集者。介護、医療、ビジネスを中心に幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は観劇と美術鑑賞、猫を揉むこと。

タケウチ ノゾミの執筆・監修記事

EGGO(イージーゴー)

イージーゴーは東京・九州を拠点にWEBコンテンツ、紙媒体、動画等の企画制作を行う編集制作事務所です。ライターコミュニティ「ライター研究所」も運営しています。

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