「施設内通貨」を取り入れてみよう!介護付き有料老人ホーム「クロスハート石名坂・藤沢」から学ぶ施設内通貨のメリット・デメリットや注意点|気になるあの介護施設
取材・文/タケウチ ノゾミ(イージーゴー)
神奈川県藤沢市にある有料老人ホーム「クロスハート石名坂・藤沢」では、施設内での買い物に利用できる施設内通貨を導入しています。施設内通貨のメリット・デメリットや注意点について、「クロスハート石名坂・藤沢」の施設長 藤澤祐人氏に話を聞いてみました
1.施設内通貨の導入のメリット・デメリット
――施設内通貨の導入によるメリット・デメリットを教えて下さい。
メリットは大きく2つあります。1つ目は入居者の表情が豊かになることです。施設内通貨は月1回の買い物の日である「デイ交換」の際に使用できるのですが、「デイ交換」の日には、日常生活では見られないような生き生きとした表情をされる方が非常に多く見られます。楽しんでいただけていると共に、何かしらの良い刺激になっているのではないかと感じています。普段ウトウトして寝ていることが多い方が、デイ交換の日には目がぱっちりとして、次々に手を伸ばして品物を取っているのを見たこともあるので、やはり施設内通貨や「デイ交換」の開催は、脳の活性化や良い刺激に繋がっているのではと思います。
2つ目は、入居者とスタッフのコミュニケーションが生まれることです。介護士の普段の仕事は、排泄や入浴、食事の介助など介護が主体となるため、なかなか入居者とゆっくりお話する機会はありません。しかし「デイ交換」の日は入居者とコミュニケーションが生まれるため、スタッフにとっても特別な時間となっています。例えば入居者をマンツーマンで会場までお連れして、「どれが良いですか?」「今回は何を買われるのですか?」など会話をすることも多く、双方にとってメリットが大きいのではないかと感じています。
デメリットに関しては、特に大きなものは感じていません。やはり毎月「デイ交換」にあわせて品物購入する必要があるため、予算内に収めつつも入居者のご要望に応えたり、マンネリ化しないように品物を変えたりする必要がある点は、正直大変だなと思う部分もあります。ただ入居者の生き生きとして楽しそうな表情を見られるなど、苦労以上の価値があるとスタッフも思ってくれているので、デメリットと言うほどのものはないと感じています。むしろ「この入居者にはこういった品物が向いていると思うので、次はこれを入れて欲しい」など、更に良くするための前向きな意見をもらう機会も多いです。

お菓子やジュースも人気
2.入居者の声をできる限り反映させる
――施設内通貨の取り組みを続けるにあたり、工夫されていることはありますか。
入居者の声をできる限り反映させることです。「デイ交換」では当初日用品やお菓子のみを取り扱っており、衣類などはありませんでした。しかし入居者から「靴下が売っているといいな」「ちょっとした羽織るものがあると嬉しいのだけど」などの意見を直接いただいたので、衣類も取り扱うことになりました。そういったお声があった際には、なるべく反映させるようにしています。
また品物のバリエーションを増やすことや、それぞれの季節に合ったものを必ず導入するといったことも毎月行っています。特に季節感を感じられるものは、委員会のスタッフとも話し合って毎回取り揃えていますね。具体的な品物としては、12月であれば暖かい膝掛けや手袋、生地が厚めの靴下などを用意しています。その季節に合わせたものをいくつか揃えることを心がけています。
3.流れ作業にしない、丁寧なイベント作り
――その他、注意されている点はありますか。
毎回の「デイ交換」を流れ作業にせず、時間をかけて行うことです。現在は新型コロナウイルスの流行により、なかなか外部のボランティアさんに来ていただいたり、レクリエーションを実施したりといったことが難しくなってしまっています。そのため施設のスタッフで作り上げたイベントを大切にしていきたいと感じており、時間がかかってしまうものであっても、流れ作業にせず丁寧に行うようにしています。
具体的な取り組みとしては、「デイ交換」で入居者が買い物をする時間を各階ごとに分けるなどの工夫を行っています。従来は1階から3階までの入居者が一斉に会場に来て買い物をされていたのですが、入居者が一斉に集まると、ゆっくり品物を見ることができなかったり、後ろがつかえてしまったりしていました。そこで、時間がかかっても買い物をゆっくりと楽しんでもらおうと考え、各階ごとに時間を分けて、30分間はその階の人のみが買い物に集中できるように工夫しました。毎回の「デイ交換」をせっかく楽しんでいただいているので、なるべく買い物の時間を有意義に過ごせるように注意しています。

「デイ交換」は入居者とスタッフのコミュニケーションの場にもなっている
またお菓子を選ぶ際には、できるだけ入居者全員が食べられる品物を選ぶことも注意している点の1つです。やはりその方その方で飲み込む力の状態が違うので、あまり硬いものなどを用意すると、食べられない人が多くなってしまいます。必ずしも全員が同じ物を食べられる訳ではありませんが、できるだけ全員が選べるような品物を用意するように心がけていますね。さらに認知症の方の場合は、品物を見ると、その形状に関わらず突然掴んで口に入れてしまうことがあります。食べ物ではない物を口に入れてしまったり、その方には食べるのが難しい物を選んでしまったりといったこともあったので、そのような事故が起こらないようにすることも注意しているポイントです。
ただ認知症の方に関しては、「デイ交換」に不参加という形にするのではなく、なるべく参加してもらうようにしています。やはり会場に来るだけで意味があり、品物を見るだけでも良い刺激になっている部分もあります。なので認知機能が低下している方が買い物をする際には、スタッフが品物を選び、ご本人に「どうですか」と確認しながら対応するようにしていますね。
4.入居者が楽しめるように、工夫しながら行うことが大切
――これから施設内通貨を導入する施設へ向けてメッセージをお願いします。
施設内通貨を導入すると、確かに業務は増えてしまいますが、導入にはそれ以上のメリットがあるのではないかと感じています。特に入居者が普段は見せないようなとても楽しそうな表情をされたり、それを見たスタッフも嬉しそうにしたりする様子を見ると、メリットは大変大きいのではないかと思います。入居者が楽しめるように、工夫しながら行うことが大切ではないでしょうか。
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