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仕事・スキル 介護施設・職場 2023/03/09

#インタビュー#気になるあの介護施設

利用者さんが自由にリハビリプログラムを選択できるデイサービス「たんぽぽ温泉デイサービス一宮」の取り組み|気になるあの介護施設

取材・文/タケウチ ノゾミ(イージーゴー) thumbnail.jpg

愛知県一宮市にあるデイサービス「たんぽぽ温泉デイサービス一宮」では、利用者さんが自由にリハビリプログラムを選択できる仕組みが整っており、来所後の予定はすべて自分で決めることができます。その珍しい取り組みやリハビリプログラムの内容について、「たんぽぽ温泉デイサービス一宮」の施設長 横井夕子氏に話を聞いてみました。

1."自由に選択できるプログラム"導入のきっかけ

――なぜ利用者さんが自由にプログラムを選択できる仕組みを導入されたのでしょうか。

「決められたことをやるよりも、自分で決めて参加する楽しさを感じていただきたい」との考えからです。自己選択や自己決定ができると、より達成感を感じやすくなります。またそれだけでなく、選ぶ際には頭を使うため、脳の活性化にも繋がります。このような考えから、利用者さんが自由にプログラムを選択できる仕組みを開所当時から導入しています。

2.文化系と運動系合わせて15種類以上から選べる

――選択できるプログラムには、どのようなものがあるのですか。

文化系と運動系の大きく2種類のプログラムを用意しています。文化系では、陶芸教室やカラオケ・パチンコ・麻雀・ブラックジャックができるカジノ・パソコン・お習字・そろばん・脳トレ・読書などがあります。運動系ではレッドコードと、要介護の方に参加していただく個別機能訓練・貯筋教室・マットトレーニング・ボディートレーニング・ボールトレーニング・フロアでの体操などがあります。

プログラムはすべて研修を受けた介護スタッフが担当しています。専門知識が必要そうに感じる陶芸も、すべて介護スタッフが指導を行ったり、利用者さんのサポートをしたりしています。またカジノも同様に、ディーラー役は介護スタッフが担当しています。そのためプログラムへの参加を通して会話が生まれることも多く、プログラムは介護スタッフと利用者さんの良いコミュニケーションの場となっていますね。

運動系のプログラムに参加する利用者さん

運動系のプログラムに参加する利用者さん

3.プログラムの決め方

――来所した利用者さんはどのようにプログラムを決めるのでしょうか。

デイサービスに到着した後は、簡単なモーニングを食べていただいた後でバイタル測定を行います。その後の予定は全く決まっていないので、先にお風呂に入っても良いですし、運動をするのも、読書をするのもとにかく自由です。

プログラムに参加する方法は、自分が参加したいプログラムを実施している場所に行くだけです。例えばレッドコードに参加したい場合は、レッドコードをやっている場所に行き、その場に集まった人数が定員を超えていなければ参加できます。希望人数が多すぎる場合は抽選になり、抽選に外れた場合は、また次の開催時間に来てもらう仕組みです。1つのプログラムは20分程度なので、1日に5〜6個参加される方も多いですね。

4.自由に選択できるメリット・デメリット

――プログラムを自由に選択できる仕組みのメリット・デメリットについて、利用者さんとスタッフの両方の視点から教えてください。

利用者さんの視点からのメリットは、やはり自分で楽しさを見つけてもらえる点です。スタッフが決めたプログラムに取り組んでもらう方法が悪い訳ではありませんが、やはり楽しさを感じる機会は減ってしまいます。一方自分でプログラムを決めていただくと、どれを選ぼうかとワクワクする気持ちもありますし、その日の気分によって取り組む内容を変えることもできるので、メリットは大きいと考えています。

反対にデメリットは、「やりたくない日は何もやらない」ができてしまうことです。もちろんプログラムへの参加を強制することはありませんが、どのプログラムにも参加していない方がいる場合は、「これをやってみませんか」「一緒に2階を歩きに行きませんか」など、ちょっとした声掛けをするようにしています。

スタッフの視点からのメリットは、利用者さんの皆さんの生き生きとした姿を見られることです。スタッフが決めたことにただ従うのではなく、「あそこに行きたい」「あれをやりたい」といった楽しそうな声を聞くことができるので、こちらまで楽しさを感じられますね。

デメリットとしては、各プログラムの人数調整が難しいことです。全体的に「午前中はたくさん動きたくて、午後からはゆっくりしたい」と感じる方が多いので、運動系のプログラムは午前中に希望者が集中するなど、1つのプログラムに人が固まってしまうことも多いです。なので、その辺りを上手に調整する必要がある点はデメリットかなと思います。

参加するプログラムはその日の気分や体調によって自由に選択できる

参加するプログラムはその日の気分や体調によって自由に選択できる

5.利用者さんからの反応は?

――利用者さんからの反応はいかがですか。

プログラムを自由に選択できる仕組みが好評で、楽しそうに過ごされている方が多いです。「他のデイサービスとはぜんぜん違う」「ここなら楽しく通える」といった声をいただくことも多く、嬉しく感じています。

以前、どのデイサービスに行っても続かない男性がいました。その方は認知症があり、どこの施設に行っても「帰りたい」と言って自分で外に出てしまうこともあったのですが、当デイサービスでは「帰りたい」と言うことは一回もなく、楽しく通い続けてくださったのです。ご家族はとてもびっくりされて、「一体ここには何があるんですか?」と仰っていました。その一言が大変印象的で、とても嬉しかったですね。

また運動に前向きになれなかった車椅子の方が、当デイサービスに通い始めたことをきっかけに、運動を頑張りたいと自分でスニーカーを買ってきたこともあります。その方は、当施設に来た当初はあまりやる気がなく、リハビリにも前向きに取り組めない様子でした。しかしスタッフがこまめに声をかけることで、段々とプラスの発言が多くなっていきました。また今までは「運動はしないから」とスリッパで通われていたのですが、ある日運動を頑張りたいとスニーカーを買ってきたのです。これには、スタッフ一同大変嬉しい気持ちになりました。

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タケウチ ノゾミ(Nozomi Takeuchi)

ライター・編集者

福岡市在住のフリーライター・編集者。介護、医療、ビジネスを中心に幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は観劇と美術鑑賞、猫を揉むこと。

タケウチ ノゾミの執筆・監修記事

EGGO(イージーゴー)

イージーゴーは東京・九州を拠点にWEBコンテンツ、紙媒体、動画等の企画制作を行う編集制作事務所です。ライターコミュニティ「ライター研究所」も運営しています。

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