料理でリハビリ!まるで料理教室のようなデイサービス「なないろクッキングスタジオ」の取り組み│気になるあの介護施設
取材・文/タケウチ ノゾミ(イージーゴー)
東京都目黒区と世田谷区にあるデイサービス「なないろクッキングスタジオ」は、業界初の料理特化型デイサービスです。利用者さんは来所後、運動や入浴をするのではなく、レシピや旬の食材について学べる講座に参加したり、料理をしたりして過ごします。その珍しい取り組みについて、「なないろクッキングスタジオ」を立ち上げたブランド責任者の神永美佐子氏に話を聞いてみました。
1.施設の概要
――まずは、「なないろクッキングスタジオ」の施設紹介をお願いいたします。
東京都の目黒区と世田谷区にあるデイサービスで、2023年現在は「自由が丘」「成城」「三軒茶屋」の3店舗を展開しています。特徴は何といっても料理をすることで、お客様は料理のレシピや旬の食材等について学べる講座「なないろアカデミー」に参加したり、料理や試食をしたりして過ごします。
午前の部と午後の部があり、午前の部ではランチづくり、午後の部では持ち帰り用の夕食づくりや、スイーツづくり、パンづくりも実施しています。当デイサービスでは、料理を機能訓練の一環として捉えているため、一般的なデイサービスのように、リハビリを目的とした運動や入浴の時間はありません。料理と聞くと難しい作業が多そうに感じるかもしれませんが、高齢者の可能性を料理で引き出す「料理特化型デイサービス」として、車イスや麻痺がある方、認知症の方も多く通われています。
2.来所後の流れ
――利用者さんはどのように料理に取り組んでいるのですか。来所後の流れを教えてください。
デイサービス到着後は、バイタルチェックをした後、今日のレシピや旬の食材などを学べる講座「なないろアカデミー」にご参加いただきます。話の内容はスタッフによって異なるので、特定のスタッフの話を心待ちにしている方も。同講座は、食材や栄養についての知識を深められると人気です。その後、グループに分かれて調理開始となります。一回の定員は20名なので、作業は5名前後で分担する形です。調理時間はおよそ1時間で、毎回5品を協力して作ります。その後は試食やキッチンの片付けをして、作業が終わり次第帰宅という流れです。
デイサービスの滞在時間は約3時間なので、やることは盛りだくさん。作業が遅れ気味な場合は、専任のシェフやスタッフがサポートすることもあります。それぞれのグループが、同じ時間内に料理を終えられるように工夫していますね。

シェフのサポートを受けながら丁寧に作業を進める
3.料理ができるデイサービスを立ち上げたきっかけ
――なぜ料理ができるデイサービスを作ろうと思われたのでしょうか。設立の経緯を教えてください。
当時は、都内に弊社の介護施設がまだ少なかったことがきっかけの1つです。弊社は本社が青山にあるのですが、「なないろクッキングスタジオ」の設立以前は、都心には弊社の介護施設がほとんどありませんでした。そこで都心型のサービスを展開するべきだという声があり、都心に向けた今までにない新しい介護サービスを検討することになったのです。また当時は介護というと、どうしても「地味」や「暗い」などのあまり良くないイメージがあったため、おしゃれで楽しいイメージのサービスが求められましたね。
そこで差別化ができる新規事業をいくつか考え、その候補の一つとして料理ができるデイサービスを提案しました。料理に注目した理由は、色々な施設を見て回るなかで、「年齢を重ねても食べることへの意欲は失われない」と感じたためです。既存の施設で行われるレクリエーションのなかでも、料理に関するものは特に人気で、たくさんのお客様が前向きに参加していました。その様子を見て、ぜひ企画したいと感じたのです。
こうして思いついた企画のなかから、どれを採用しようかと考えていた際に、自由が丘の物件が最初に見つかりました。そして「数ある企画のなかで自由が丘の物件に合いそうなものは何か」と考えた際に、この感度の高い方の多いエリアには料理が適しているのではないかとの結論に至り、料理ができるデイサービスからスタートすることになりました。
4.高齢者が料理をするメリット
――高齢者が料理に取り組むことには、どのようなメリットがあるのですか。
材料を切る、混ぜる、計量するなどの行為はすべて五感を刺激しますし、脳活性化にもつながるため、認知症の維持改善にも役立ちます。実際の効果は人それぞれですが、目に見える形で変化する方もいらっしゃいますね。ご家族からは、「なないろクッキングスタジオに通うようになってから会話が増えた」「会話に反応するようになった」などの声をいただくことも多いんですよ。
また当施設では、あえて食べ慣れない料理や食材を使用し、新しい情報や体験をしていただくことで、脳への刺激を意識しているんです。なので当施設で取り組んでもらっている料理は、高齢者向けにアレンジしたものではなく、一般的な料理教室のメニューとほとんど変わりません。新しい料理を取り入れることで、ご本人のワクワク感を刺激したり、「こんな珍しい料理を作ったよ」などと家族との会話が広がったりすることを狙っています。

一般的な料理をアレンジしたものや、珍しい調味料を使った料理も多い
5.料理がリハビリになるための注意点
――料理がリハビリになるために、気をつけていることがあれば教えてください。
料理を機能訓練として捉えているので、料理を完成させることを目的にするのではなく、料理を通じて脳を活性化させたり、刺激を与えたりするようにしています。具体的には、作業工程を増やす、なるべく手を動かしてもらうなどを意識していますね。
例えばご飯は白いご飯を炊くだけではなく、必ず味のついた炊き込みご飯などを作るようにして、作業工程を増やしています。また野菜を切る場合も、フードプロセッサーのように、一瞬でみじん切りができる便利なアイテムなどは使用しません。あえて細かい作業を増やし、できるだけ手を動かしてもらうようにしているんですよ。お刺身も切り身をお皿に並べるのではなく、一匹の状態からおろしてもらうこともあります。
さらに、最初はハードルの低い作業に取り組んでもらうことも、注意しているポイントのひとつです。当施設のお客様は料理の経験が豊富な方が多いのですが、なかには料理をほとんどしたことがない方もいらっしゃいます。そのような場合は「私にはできないのでは」「やりたいけれど迷惑になりそう」と思われることが多いので、まずは配膳や盛り付けなど、できるところから始めていただいているんです。最初は「できない」と思われていても、やり始めると「もうちょっとやってもいいかな」という気持ちになるので、気づくと皆さんと一緒の作業に加わっていますね。
取材・文/タケウチ ノゾミ 編集/イージーゴー
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