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仕事・スキル 介護施設・職場 2023/04/28

#気になるあの介護施設

料理で世界を旅する「クッキングツアー」も!料理教室のようなデイサービス「なないろクッキングスタジオ」に学ぶ介護スタッフのサポート方法│気になるあの介護施設

取材・文/タケウチ ノゾミ(イージーゴー) thumbnail.jpg

東京都目黒区と世田谷区にあるデイサービス「なないろクッキングスタジオ」は、業界初の料理特化型デイサービスです。利用者さんは来所後、運動や入浴をするのではなく、レシピや旬の食材について学べる講座に参加したり、料理をしたりして過ごします。利用者さんが快適に料理を楽しむために、スタッフはどのような工夫をしているのでしょうか。介護スタッフの働き方やサポート方法について、「なないろクッキングスタジオ」を立ち上げたブランド責任者の神永美佐子氏に話を聞いてみました。

1.働いているスタッフの特徴

――施設で働いているスタッフはどのような方が多いですか。

経験豊富な方ばかりではなく、介護の仕事をあまりやったことがない方も多いですね。「なないろクッキングスタジオ」は料理が中心のデイサービスなので、介護スタッフへ応募する際の気持ちのハードルが他の介護施設よりも低いのかなとも感じています。

ただ当施設では短時間の間にさまざまな作業が求められるので、本当に忙しいです。そのため、マルチに活躍してくれる人材を採用するようにしています。実際に、送迎のドライバーとして入社したけれども、介護スタッフとドライバーを兼務している方がほとんどです。モチベーションが高く、他のスタッフと協力して作業を進めてくれる方が活躍しています。

2.利用者さんへの接し方における注意点

――利用者さんへの接し方で、何か気をつけていることがあれば教えてください。

お客様へ敬意を持って接することは、どのスタッフにも気をつけるように伝えています。一般的なデイサービスでは距離感を縮めるため、ややフランクな口調でお客様に話しかける施設も多い傾向にあります。またお客様のことを愛称で呼ぶ施設もありますが、当施設ではそのようなことは一切行っていません。

利用者さんとは呼ばず「お客様」という表現をしたうえで、お名前は「様」づけで呼ばせていただいています。さらに言葉遣いも、できるだけ丁寧な言葉を使い敬うように指導していますね。やはりフランクな口調で話しかけたり、愛称でお客様のことを呼んだりすると、ふざけているようにも聞こえてしまうと思っています。スタッフの家族が同じ扱いを受けたときに、どのように思うかを考えて行動して欲しいと伝えています。人生の先輩に接しているということを、常に意識してもらいたいですね。

それぞれのグループに分かれ、テキパキと作業を進める

それぞれのグループに分かれ、テキパキと作業を進める

3.作業中のサポート方法

――認知症の方が料理をするのは、少し難しそうだなというイメージがあります。毎回スタッフやシェフがサポートされているのでしょうか。

「認知症の方でも料理ができるのだろうか」ということは、私達も当施設を始める前はとても心配していました。しかし実際に料理ができるデイサービスを始めてみると、その心配はすっかりなくなりました。と言いますのも、デイサービスに通われている方は元々は熟練の主婦だった方が多いので、料理についてあえて教える必要がまったくなかったのです。切る、焼く、炒めるなどの作業は、認知症の方であっても何のためらいもなく、非常にスムーズに取り組まれています。

認知症だから油に手を入れてしまう、包丁の使い方がわからず戸惑ってしまうといったことは、今まで一回もありません。最初にレシピをお伝えするだけで、「次の作業はこれね」と、みなさんどんどん作業を進めていきます。デイサービスを始める前は怪我や火傷の心配もありましたが、怪我をする方もほとんどいらっしゃいません。これはうれしい誤算でしたね。

ただスタッフのサポートや促しが必要なこともしばしばあるため、その際はお手伝いをするようにしています。例えば「作業前にトイレに行った方が、元のテーブルに戻れなくなってしまう」「材料を切っている途中でおしゃべりをして、何の作業をしていたか忘れてしまう」などが起きることもあります。なのでスタッフはお客様が作業をしている様子をしっかり見て、安心して楽しんで料理を続けられるように軽度のサポートをしていますね。

4.献立の考え方

――献立を考えることもシェフやスタッフの仕事のひとつかと思います。毎回の献立はどのように考えられているのでしょうか。

私、神永とメニュー担当のシェフとでベースを考えて、そのベースをもとに各施設のシェフがアレンジをしています。アレンジといっても内容を大幅に変えるのではなく、「和風が続いたからこのメニューは洋風な味付けにしよう」「あまり辛いものが得意ではない方が多いから、少し辛さを抑えたものにしよう」など各施設の特性にあわせた変更です。

食材の管理は各施設のシェフが行っているので、そのときの在庫状況から献立を変更することもあります。例えば鶏肉が冷蔵庫にあるため、魚の料理を鶏肉に変えて作ることもあります。ですが大体のメニューは構成同じなので、施設によって大きな差はありません。

献立には旬の食材をたっぷりと使用している

献立には旬の食材をたっぷりと使用している

5.献立を考える際の注意点

――献立を考える際に、気をつけている点はありますか。

旬の食材や、季節のわかるものはなるべく組み込むようにしています。具体的には、季節の野菜や、旬を迎えた魚など旬の食材をとりいれた献立です。お客様が外出することだけで四季を感じるのではなく、料理でも季節の変化を知っていただきたいという思いから取り組んでいます。

また一度作ったメニューをなるべく繰り返さないことも、気をつけている点のひとつです。脳への刺激を意識し、なるべく新しいメニューを取り入れるよう心がけています。「去年は和風で作ったので、今年は洋風にアレンジしてみよう」など、試行錯誤しながら献立を考えていますね。最近流行している料理なども参考にしていて、毎月新しい料理を取り入れているんですよ。料理はレシピが無限にあるので、献立作りで悩んだことはありません。

6.新しい料理を取り入れることも

――新しい料理とは、具体的にはどのような内容なのでしょうか。

創作料理もありますし、外国の料理も頻繁に取り入れるようにしています。当施設では「クッキングツアー」というものを毎月必ず行っており、「料理で旅をする」をテーマに、日本だけでなく世界各地の料理を取り入れています。つい先日も広島やハワイをテーマにした料理を作りました。さらに今度は、世界三大料理のひとつであるトルコをテーマにしたクッキングツアーも実施する予定です。恐らくトルコ料理は食べたことがない方がほとんどだと思うので、みなさんの反応が楽しみですね。

あまり馴染みのない料理を献立に入れるのは「抵抗なく食べてもらえるだろうか」という不安があったのですが、みなさん意外と新しい料理がお好きなようで驚いています。少しクセのあるエスニック系の料理やパクチーを使った料理なども、まったく抵抗なくパクパクと食べていらっしゃいました。今まで食べたことがない食材を使うのは、良い刺激になっているのではないでしょうか。

作業の後は全員で作った料理を味わう

作業の後は全員で作った料理を味わう

7.利用者さんのうれしい変化

――利用者さんやご家族からの反応はいかがですか。うれしい変化などありましたら教えてください。

「メモを取るようになった」という変化は、耳にすることが多いです。当施設では、その日作った献立の内容や、食べた感想などを記入するアンケート用紙をお配りして、用紙の記入を必須の作業として全員の方に毎回取り組んでいただいています。お客様のなかには、最近では長い間文字を書く機会がなかった方も多くいらっしゃるので、最初は書くのに時間がかかったり、うまく字が書けなかったりすることも多いです。

しかし毎週文字を書くことによって、段々書くことに慣れてくるようで、1年後には文字の量や筆圧などが驚くほど変わるんです。こんにゃくやごぼうなどの難しい漢字を書けるようになった方もいて、その変化には驚いています。料理とは少し違った切り口ではありますが、文字を書くことも脳への良い刺激になっていると感じていますね。

取材・文/タケウチ ノゾミ 編集/イージーゴー

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タケウチ ノゾミ(Nozomi Takeuchi)

ライター・編集者

福岡市在住のフリーライター・編集者。介護、医療、ビジネスを中心に幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は観劇と美術鑑賞、猫を揉むこと。

タケウチ ノゾミの執筆・監修記事

EGGO(イージーゴー)

イージーゴーは東京・九州を拠点にWEBコンテンツ、紙媒体、動画等の企画制作を行う編集制作事務所です。ライターコミュニティ「ライター研究所」も運営しています。

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