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仕事・スキル 介護施設・職場 2023/05/15

#気になるあの介護施設

自然の中で自給自足の生活を楽しむ!ちょっと変わった有料老人ホーム「ひろんた村 母屋」│気になるあの介護施設

取材・文/タケウチ ノゾミ(イージーゴー) thumbnail.jpg

長崎県松浦郡新上五島町にある有料老人ホーム「ひろんた村 母屋」は、一般的な介護施設とは少し変わった老人ホームです。広い敷地には、老人ホームである母屋のほかに、広大な畑や豚・鶏が走り回る放牧場、ハム・お菓子の加工所などがあり、農的自給自足の暮らしをつなぐコミュニティが築かれています。自給自足の老人ホームは珍しいですが、は普段どのような生活をしているのでしょうか。「ひろんた村 母屋」の理事長 歌野敬氏に話を聞いてみました。

入居者の皆さん

1.施設の概要

――まずは、「ひろんた村 母屋」の施設紹介をお願いいたします。

長崎県の上五島町にある有料老人ホームです。"ひろんた"とは「広ノ谷」を意味しており、五島列島北部にある中通島のほぼ中央に位置しています。2018年の冬に開所し、「自然とともにある暮らし」「入居者とスタッフが、家族じゃないけど家族のように暮らす家」「最期までその人らしく生きることをサポートする」を目指して運営しています。

施設の定員は8名で、2023年3月現在は自立が3名、要介護2が1名、要介護1が3名の計7名が入居しています。60代から90代まで、幅広い年齢層の方が集まっています。現在入居されている自立の方は東京や福岡、釧路から来られた方々で、元気なうちに最期の場所を決めたいと「ひろんた村 母屋」に入居されました。当施設は要介護や要支援、自立などの介護度に関係なくどなたでも受け入れていて、入居者の皆さんはそれぞれ村での生活を楽しまれています。

2.自給自足の有料法人ホームを作ったきっかけ

――自給自足の有料老人ホームを作られたきっかけを教えてください。

老人ホームを作ろうと思ったのには、大きく2つのきっかけがあります。1つは、「自給の暮らしに関する技術を継承する場を作りたい」と考え始めたことです。私はIターンで五島に来て35年になるのですが、この地でずっと自給の暮らしをしてきました。そして「衣食住からエネルギーまで全て作る」というテーマで生活するうちに、その技術を誰かに伝えていきたいと感じるようになったのです。

もう1つは、妻が叔母を引き取ったことです。叔母は要介護1〜2程度の状態で五島に来て、最期まで一緒に過ごしました。そして叔母を引き取った際に、我が家で最期まで面倒を見るのも良いけれど、叔母1人だけでなく、何人かの人が寄り添って過ごせるような場所を作れたらと感じたのです。

なのでこの2つのアイディアをドッキングさせて、ひろんた村という村をつくり、その宿泊施設として有料老人ホームを始めることにしました。「ひろんた村 母屋」との名前は、「ひろんた村作りの中での母屋」という意味合いを込めたネーミングとなっています。

自然豊かな土地の中心部に位置する「母屋」

自然豊かな土地の中心部に位置する「母屋」

3.施設で作っているもの

――自給自足で食べ物を用意することは難しいと思いますが、施設ではどのようなものを作っているのでしょうか。

食べ物に関しては、できる限りのものは作るようにしています。敷地内には4つの畑のほか、豚・鶏が走り回る放牧場、ハムやお菓子の加工所などがあり、一部の野菜や豚肉・鶏肉、卵などは自給できています。そのほかには、味噌や醤油、椿油などを作っていますね。当施設では野菜の天ぷらを揚げる際に椿油を使用しているのですが、椿油で揚げた天ぷらを食べられる施設はなかなか無いのではないかなと思っています。

ただ自給自足とはいっても、全部を自分たちで賄うことはできていません。小規模の施設とはいえ、スタッフや入居者さんの食材を全て用意するのは難しいからです。お米や野菜はできるだけ施設で採れたものを使っているものの、自給率は50〜60%程度といえるでしょうか。豆腐なども人数分全てを用意することは難しいため、豆腐をはじめとした加工品も購入していますね。

小麦や大豆などの穀物と季節の野菜を、農薬や化学肥料を使わずに育てている

小麦や大豆などの穀物と季節の野菜を、農薬や化学肥料を使わずに育てている

4.入居者さんの過ごし方

――入居者さんは普段どんなことをして過ごしているのですか。

自立できる方々は施設の周辺に自分の畑をつくり、畑を耕したり、野菜を育てたりしています。晴れた日は一日中畑に出ている方もいらっしゃいますね。また介護度のある方にも、農に関する作業を手伝っていただくようにしています。たとえば収穫した大豆を選別する、採ってきた野菜を洗ってきれいにするといった作業です。

ほかにも、醤油を作る際には毎日かき混ぜる必要があるので、醤油を混ぜたり、味噌を皆で一緒に作ったりすることもあります。当施設では農に関わる生活をリハビリと呼んでいるのですが、正に「自給の村の母屋」にふさわしいリハビリを行っていますね。

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タケウチ ノゾミ(Nozomi Takeuchi)

ライター・編集者

福岡市在住のフリーライター・編集者。介護、医療、ビジネスを中心に幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は観劇と美術鑑賞、猫を揉むこと。

タケウチ ノゾミの執筆・監修記事

EGGO(イージーゴー)

イージーゴーは東京・九州を拠点にWEBコンテンツ、紙媒体、動画等の企画制作を行う編集制作事務所です。ライターコミュニティ「ライター研究所」も運営しています。

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