#インタビュー#サービス付き高齢者向け住宅#デイサービス#気になるあの介護施設
お寺が運営する介護施設はどんなところ?デイサービス・サ高住「お寺の介護 はいにこぽんのいえ」の設立背景|気になるあの介護施設
取材・文/タケウチ ノゾミ(イージーゴー)
大阪市西淀川区にある「お寺の介護 はいにこぽんのいえ」は、その名の通り、お寺が運営するデイサービスとサービス付き高齢者向け住宅(以下サ高住)です。施設は浄土真宗単立 泰心山 西栄寺のすぐ隣に位置しており、施設内では一般の介護スタッフに混じって、法衣をまとったお坊さんの姿が見受けられます。お寺が介護施設を運営することになったきっかけについて、「お寺の介護 はいにこぽんのいえ」の介護福祉部長 吉田敬一氏に話を聞いてみました。
1.「はいにこぽんのいえ」ってどんな施設?
――「お寺の介護 はいにこぽんのいえ」の施設紹介をお願いいたします。
大阪市西淀川区にあるデイサービスとサ高住です。西栄寺のすぐ隣に位置する3階建ての建物全てが介護施設となっており、1階をデイサービス、2階と3階をサ高住として使用しています。この建物は西栄寺が介護事業を始めた後に、1年半ほどかけて建築しました。デイサービスの1回の定員は35名で、2023年現在の述べご利用人数は95人です。そしてサ高住は2階と3階に7居室ずつ、計14居室あり、現在は満室となっています。平均介護度は、デイサービスが要介護2、サ高住が要介護3程度です。ちなみに施設の名前の「はいにこぽん」とは、昔からあるお寺の教えを元にしており、「はいと返事、ニコッと笑顔、ぽんとすぐ行動」という意味です。施設名の「はいにこぽんのいえ」は、「"はいにこぽん"の精神を持ったスタッフがたくさん在籍している家」という意味を込めて名付けました。
2.お寺が介護事業を手掛けることになったきっかけ
――お寺が介護事業を手掛けることになったきっかけを教えてください。
大きく2つあります。1つは、「お寺離れを食い止めたい」という思いです。お寺の活動といえば、お坊さんが檀家さんのお家に伺い、仏壇の前でお経を唱えてご先祖供養をしたり、ゆっくりお話を伺ったりすることが一般的です。しかし近年は檀家さんの高齢化による、檀家離れが問題視されています。そこで西栄寺としても、「お寺離れを食い止めるために、何か新しいことにチャレンジしなければ」という気持ちがありました。
もう1つのきっかけは、私自身が育児により福祉に興味を持ったことです。結婚して授かった長女が重度障害を患って生まれてきたことにより、育児の過程で様々な福祉サービスを受けることになりました。残念ながらその子は亡くなってしまったのですが、娘の亡き後、「娘と同じように福祉サービスを必要とする人のお手伝いをすることが供養になるのでは」と考えたのです。そして高齢者施設でのボランティア活動を通じ、自分も介護力を身に着けたいと感じて、ヘルパー2級(現在の介護職員初任者研修)を取得することにしました。
こうして受講することになった、ヘルパー2級の講習初日。「私はお寺で僧侶をやっている者です。今日はお寺から来ました。僧侶としてヘルパー2級を取得しようと思います」と自己紹介をしたところ、講師の方が「あんたお坊さんヘルパーかいな」という言葉を投げかけてくれたのです。その「お坊さんヘルパー」という言葉のインスピレーションに大変大きな衝撃を受け、お寺が介護事業を手掛ける可能性を感じました。その言葉が、現在の西栄寺の介護事業に繋がっています。

施設は西栄寺の真横に位置している
――お坊さんとヘルパーを融合しようとの考えは、ヘルパー2級を取得する以前からあったのでしょうか。
事業に直結させようといった明確な考えはありませんでしたが、資格の取得以前から、お坊さんと介護の仕事には似ている部分があると感じていました。毎日どこかのお家に行ってお経を読み、ご供養をするお坊さんの行動と、お家に訪問して介護が必要な方のケアを行うヘルパーの行動パターンには、親和性があるのではと感じていたのです。もしかしたら、我々お坊さんも読経やお話を伺うだけでなく、生活援助や介護もできるのではないかと思っていました。
3.お坊さんとヘルパーの仕事には似たものがある
――介護事業をスタートしてから、現在までの道のりを教えてください。
先述の通り、お坊さんとヘルパーの仕事には似たものがあると感じていたので、まずは訪問介護からスタートしました。これが2014年7月のことです。そして同年の11月には、障害福祉サービスの事業を、翌年の2015年9月には居宅介護支援事務所を立ち上げました。これらの事業や事務所を立ち上げた理由は、訪問介護と居宅介護を一体化して運営した方が、より充実した介護計画を立てられるのではと感じたためです。ありがたいことに、訪問介護は割と早い段階で軌道に乗ったため、その後のケアマネジャーの採用や事務所の運営にあたって特に障害はありませんでした。
そして少し落ち着いた頃に持ち上がったのが、デイサービスの設立です。「訪問介護だけでなくデイサービスも運営した方が、より充実した介護計画を立てられるのでは」との考えから、デイサービスの設立を決めました。そして、デイサービスのために専用の建物を建設することになります。また、その当時はお泊まりデイやショートステイを繰り返す「ショートロング」などが流行しており、自宅と施設を往復する利用者さんが多くいらっしゃいました。そこで、せっかく新しい建物を用意するならサ高住も追加しようという流れになり、現在のデイサービスとサ高住をあわせた「お寺の介護 はいにこぽんのいえ」が誕生したのです。

デイサービスにて利用者さんと交流するお坊さん
4.壁は文化庁? 宗教法人として運営許可を取るまでの道のり
――お寺が介護事業を手掛けるにあたって、大変だったことや苦労したことはありますか。
最も大変だったのは、施設の運営にあたって国や市から許可をいただくことです。西栄寺は他県を含め多くの事務所を持っているため、宗教法人 西栄寺を監督する部署は文化庁になります。そのため文化庁に許可を貰えなければ、介護事業をスタートさせることはできませんでした。また文化庁の許可だけでなく、大阪市福祉局からの許可も必要だったため、両方のやり取りを同時に行うことになったのです。
この許可の取得に頭を悩まされた理由は、介護事業は大阪市福祉局の許可がないと始められないにも関わらず、文化庁には、実際に事業を行ったうえで、事業の必要性を証明する必要があったためです。そもそも、お寺はお布施収入が主体になるため、収益事業をあまり行いません。そのため介護事業を始めるには、実際に事業を行ってみて、必要性を証明するようにと告げられたのです。一方で大阪市福祉局からは、「文化庁の許可がないと介護事業の運営は認められない」と言われました。
「幼稚園などの施設を運営しているお寺もあるのだから、そこまで許可の取得は難しくないのでは」と感じるかもしれませんが、幼稚園を運営しているお寺は、お寺が別法人として社会福祉法人を運営していることが一般的です。またお寺の代表である住職が社長になり、株式会社を興して別の事業を営むケースもあります。しかし我々は宗教法人として介護事業の認可を取りたかったので、険しい道のりとは分かっていても、新しく法人は作りませんでした。
当時、宗教法人が介護事業に関する許可を取得した前例はなかったため、文化庁も大変慎重になっていたのだと思います。最終的には、お寺が介護事業を営むことによる檀家さんへの影響や、宗教活動への活性化への繋がりについてレポートにまとめ、それを提出することで介護事業の必要性を立証しました。宗教法人として許可を取りたいという強い思いがあったので、こうして介護事業を手掛けられることは本当にありがたいと感じています。
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