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仕事・スキル 介護施設・職場 2023/08/18

#インタビュー#サービス付き高齢者向け住宅#デイサービス#気になるあの介護施設

お寺が運営する介護施設ならではの取り組みは?デイサービス・サ高住「お寺の介護 はいにこぽんのいえ」|気になるあの介護施設

取材・文/タケウチ ノゾミ(イージーゴー) thumb_2.jpg

大阪市西淀川区にある「お寺の介護 はいにこぽんのいえ」は、その名の通り、お寺が運営するデイサービスとサービス付き高齢者向け住宅(以下サ高住)です。施設は浄土真宗単立 泰心山 西栄寺のすぐ隣に位置しており、一般の介護スタッフに混じって、法衣をまとったお坊さんの姿が見受けられます。お寺が運営している介護施設ならではの取り組みや、お寺が介護施設を運営するメリットについて、「お寺の介護 はいにこぽんのいえ」の介護福祉部長 吉田敬一氏に話を聞いてみました。

1.在籍している僧侶の半分が介護資格を所持

――2023年現在、介護資格を持っている僧侶は何名在籍しているのでしょうか。

介護福祉士が4名、介護職員初任者研修が8名の計12名です。現在在籍している僧侶は24名なので、ちょうど半分が介護資格を所持していますね。ただし12名全員が日常的に介護施設に出入りしている訳ではなく、主だったものがお寺と介護の仕事を兼務している形になります。ここ数年は新型コロナウイルスの影響もあり、お寺と介護の業務をほぼ分離していたのですが、今後はまたお坊さんたちに介護の業務に戻ってきてもらいたいと考えています。

2.「お寺の介護」ならではの取り組み

――お寺が運営していることを活かした取り組みがあれば教えてください。

「お寺の介護」との名前の通り、お寺が運営していることを可能な限り活かしています。当デイサービスでは身体のリハビリと心のリハビリの両方を行っているのですが、身体的なものとしては、お寺の境内を散歩するリハビリを取り入れています。介護施設の真隣にお寺があるので、境内を散歩して本堂まで行き、手を合わせるといったものです。またお寺で定期的に行われている法話会に、デイサービスの利用者さんが参加されることもあります。

心のリハビリとしては、お寺であることを活かした落ち着いた空間づくりに取り組んでいます。これは理屈では説明できないものですが、お坊さんがいたり、仏像が置いてあったりするだけで、どこか落ち着ける空間が広がると感じています。そのため僧侶が介護の仕事を担当する際には、必ずお坊さんの衣装である「法衣」を着て現場に立つようにしています。またデイサービスのフロアの中心部に大きなお釈迦様の仏像を設置する、お彼岸やお盆などの仏教行事を大切にするなど、お寺だからこそできることもたくさん取り入れていますね。

デイサービスでの法話の様子

デイサービスでの法話の様子

3.お寺が介護施設を運営する3つのメリット

――お寺が介護施設を運営するメリットは何でしょうか。

お寺が介護施設を運営するのは、良いことばかりだと感じています。なかでも大きな3つのメリットについてお話すると、まずは檀家さん(檀信徒)との関係性が深まることが挙げられます。近年は檀家さんの高齢化が進んでいるため、お坊さんとしてお家に訪問した際に、「段々膝が痛くなってきた」「重いものを持つのが辛くて買い物がしんどい」などのお話をじっくり聞かせていただき、生活支援に繋げることもあります。また他にも、介護をしている檀信徒の方と介護の大変さを共有できることもメリットだと感じています。介護の大変さは、ある程度知識がないと難しいものです。そのため介護の資格を持ったお坊さんが訪問することで、介護に関するお話をじっくりと聞くことができるのです。

2つ目は、お寺やお坊さんのイメージアップができることです。一般的にお坊さんというと、堅苦しかったり気難しかったりして、口を開けば説教ばかりするイメージがあるかと思います。しかし当院には庶民的なお坊さんが多く、今では介護スタッフも、お坊さんに対して親近感を持ってくれるようになりました。介護という無くてはならない仕事を通して、お寺やお坊さんをより身近な存在として感じていただけることは非常に嬉しいと感じています。

3つ目は、お寺が活性化することです。当然ですが、介護事業を始めるまでは、お寺で働いているスタッフはお坊さんだけでした。しかし今ではケアマネジャーや歯科衛生士、栄養士など様々な専門職の方が働いているので、多様性によってお寺が活性化し、組織としての力や連帯感が生まれるようになったと感じています。これはお寺にとって、本当に大きなプラスになっていますね。

4.介護拒否にお坊さんが役立つケースは多い

――利用者さんからの反応はいかがですか。

介護拒否にお坊さんが役立つケースは多いので、その点は喜んでいただけています。認知症の方で介護を拒否されたり、介護職の方とうまくコミュニケーションが取れなかったりするケースも多いのですが、お坊さんが介入するとスムーズに受け入れてくださることも多いのです。

ただ、お坊さんであるが故のお叱りを受けてしまったこともあります。以前、訪問介護にてある利用者さんの入浴介助をしている際に、この後でお通夜に出席する予定があることを口走ってしまったのです。すると利用者さんが「縁起でもない!」と言って怒り出し、サービスが途中で中止になってしまったことがありました。また「お坊さんなら何でもしてくれそうだ」と過度な期待をされ、対応外のサービスを要求されたこともあります。丁寧にお断りすると、「お坊さんなのにそんなこともできないのか」とお叱りを受けたこともありました。上手くいかないこともありますが、これからも多くの方に喜んでいただけるように、お坊さんであることを活かした介護ができればと考えています。

施設の周囲を散歩するお坊さんと利用者さん

施設の周囲を散歩するお坊さんと利用者さん

5.今後は他のお寺のサポートもしていきたい

――今後の展望を教えてください。

この西栄寺は大阪市内に7ヶ所、それから兵庫県に3ヶ所、東京都に1ヶ所あるのですが、できればこの各拠点に訪問介護や居宅支援事務所などを併設していければと考えています。また、これから介護事業にチャレンジしたいお寺のお手伝いもしたいです。現在宗教法人格を持っているお寺は全国に7万5,000軒ほどあると言われており、これは約6万軒あると言われているコンビニよりも多い数字です。お寺にはそれなりに広い敷地や趣のある建物、時間に余裕のある宗教者がいるので、これを上手に活用すれば大きな社会資源になると感じています。しかしそれをどのように活用して良いか分からないと感じているお寺は多いため、そういったお寺のサポートができれば嬉しいですね。

取材・文/タケウチ ノゾミ 編集/イージーゴー

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タケウチ ノゾミ(Nozomi Takeuchi)

ライター・編集者

福岡市在住のフリーライター・編集者。介護、医療、ビジネスを中心に幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は観劇と美術鑑賞、猫を揉むこと。

タケウチ ノゾミの執筆・監修記事

EGGO(イージーゴー)

イージーゴーは東京・九州を拠点にWEBコンテンツ、紙媒体、動画等の企画制作を行う編集制作事務所です。ライターコミュニティ「ライター研究所」も運営しています。

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