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仕事・スキル 介護施設・職場 2024/09/04

介護医療院とは?特徴や人員配置・介護職員の役割などを解説

文/山本史子(介護福祉士) thumb_0904.jpg

2018年に設立された介護医療院は、2024年3月末の廃止される療養型医療施設の主要な移行施設として位置づけられています。しかし、介護医療院の存在は知っているものの、具体的な特徴や他の介護施設との違いについて、よくわからない方もいるのではないでしょうか。本記事では、介護医療院の特徴やかかる費用などについて解説するとともに、介護職員として働く際の役割や業務内容について詳しく紹介します。施設について理解を深め、必要な知識や技術を身につけていきましょう。

1.介護医療院とは?

病室

介護医療院とは、医療と介護のケアが必要な方に対して、総合的なサービスを提供する施設です。医師や看護師・介護職員などが24時間体制で常駐しており、定期的な診察や医療処置はもちろんのこと、緊急時の対応も可能となっています。まずは、介護医療院の概要について解説します。

介護医療院が開設された背景

介護医療院ができる前までは、医療が必要な人は「医療療養病床」で、介護が必要な人は「老人保健施設」でケアを受けることになっており、介護療養病床は2011年に廃止される予定でした。しかし、介護療養病床から老人保健施設への移行がうまくいかず、2017年まで期間を延長しています。また、2014年の調査では医療処置やターミナルケアなどは、介護保険施設での対応が難しいこともあり、医療も介護も必要な高齢者のニーズに応えられる「介護医療院」が設立されました。次から、介護医療院の特徴や種類・利用料の目安について詳しく解説しています。

介護医療院の特徴

介護医療院は、長期にわたる医療サービスと介護サービスを統合した形で提供しているのが大きな特徴です。高齢者が自立した生活を送るための支援を目的とするもので、日常生活のサポートから専門的な医療ケアまで、利用者さんの一人ひとりに合ったサービスが多岐にわたって提供されます。そのため継続した治療が必要な要介護者が、安定した生活の質を維持しながら過ごせる施設といえるでしょう。また、介護医療院では利用者さんが「可能な限り、自宅に近い環境で過ごせる」生活施設としての機能をもっています。

介護医療院の種類

介護医療院には大きく分けてⅠ型とⅡ型の2つがあり、Ⅰ型は、主に要介護者で医療的ケアが必要な利用者さんを対象として、医師や看護師などの医療スタッフによるケアが行われます。一方、Ⅱ型は医療的ケアよりも介護ケアが必要な利用者さんが対象で、主に介護や機能訓練などのサービスが提供されます。

Ⅰ型、Ⅱ型ともに、要介護1〜5の介護認定を受けていることが入所の基本要件です。なお、Ⅰ型は「看取りやターミナルケア」を含めた医療的ケアの対応基準が設けられています。40歳から64歳未満の方でも、特定疾病による要介護認定を受けた場合に利用可能ですが、要支援1・2の方は利用できません。

特徴 入所対象者
介護医療院Ⅰ型 ・介護療養病棟相当のサービスが提供される ・看取りやターミナルケアができる ・要介護度1~5の方 ・40歳~64歳の方のうち、特定疾病で要介護1~5の認定を受けた方
介護医療院Ⅱ型 ・介護老人保健施設相当以上のサービスが提供される ・比較的容体が安定している方が利用できる

介護医療院にかかる1日の利用料

介護医療院の1日に必要な利用料は、介護度や居室のタイプ・利用者さんの負担割合によって異なります。2024年4月時点の介護度別基本利用料の目安は次の通りです。

介護度 個室 居室定員2名以上 (多床型) ユニット型
要介護1 714円 825円 842円
要介護2 824円 842円 951円
要介護3 1,060円 934円 1,188円
要介護4 1,161円 951円 1,379円
要介護5 1,251円 1,171円 1,171円

※表内の料金は自己負担額1割の方の場合(2024年4月時点)
参考:介護医療院|WAMNET(独立行政法人福祉医療機構)

上記の基本利用料に加えて、食費や居住費・日常生活費が別途必要です。ただし、施設や地域などによって具体的な料金は異なります。利用を検討している場合には、希望する施設に問い合わせ、事前に確認しておきましょう。

2.介護医療院とほかの介護施設との違い

介護

介護医療院は、医療と介護の双方を提供できる施設であり、この点がほかの介護施設と大きく異なります。しかし、似たような役割をする施設も多く、違いがわかりにくいかもしれません。類似するイメージのある施設として、以下の3つがあります。

  • 介護療養型医療施設
  • 介護老人保健施設
  • 特別養護老人ホーム

それぞれの施設の特徴を知って、介護医療院との違いを理解しておきましょう。

介護療養型医療施設との違い

「介護療養型医療施設」は、長期間にわたる療養が必要で、日常的に介護サービスが必要な方を対象としています。介護療養型医療施設は介護医療院とは異なり、医療的なケアを重点に置いているのが特徴で、レクリエーション活動やイベントなどの実施はありません。

ただし、医療的ケアが必要な方と必要でない方が混在しているという理由から、2024年3月末で介護療養型医療施設は廃止となりました。前述の通り、介護療養型医療施設から介護医療院に移行し、介護医療院は今後、比較的介護度の安定した方から看取りやターミナルケアが必要な方まで、幅広いサポートを提供する施設として機能していくことになります。

介護老人保険施設との違い

「介護老人保健施設」は、医療と介護の両方を必要とする高齢者の回復をサポートし、利用者さんの自宅復帰を目指すための施設です。要介護1~5の認定を受けた方を対象としており、医療管理の下でリハビリテーションや食事や入浴といった日常生活の介助を提供します。介護医療院との大きな違いは、在宅復帰を目標としたリハビリテーションが実施される点です。主に、短期的なリハビリテーションを目的とした短期入所と、より長期的なケアが必要な場合の長期入所があります。

特別養護老人ホームとの違い

特別養護老人ホームは、生活の質の維持や向上を目的とした生活施設です。身体的・精神的な理由で常時介護が必要で、自宅での生活が難しい方が対象です。特別養護老人ホームでは定期的に医師が訪問し健康管理が行われるものの、医療的ケアは介護医療院の方が充実しています。基本的に要介護3以上の認定が必要ですが、地域や施設によっては要介護1から2の方でも特例で入所できる場合もあります。

3.介護医療院で介護職員として働くには

介護

介護医療院では、日常生活における医療ケアから看取りやターミナルケアまで幅広いサービスが提供されます。利用者さんにとっては一般的な介護施設よりも手厚い医療ケアが受けられる施設といえるでしょう。その一方で、介護職としては、対応する業務が多岐にわたります。なお、介護医療院では、介護においては一般的な施設と同等のサービスが提供されているため、日常生活の介護をはじめ、レクリエーションや機能訓練なども実施されます。介護職員として勤務する場合には、食事や入浴の介助のほか、医療や機能訓練の補助など幅広い業務に携わるかもしれません。介護医療院での働き方を考えるうえで、人員配置基準や仕事内容を確認しておきましょう。

介護医療院の人員配置基準

介護医療院の人員配置基準は以下の通りです。

人員配置基準 Ⅰ型 Ⅱ型
医師 利用者48人に対し1人 (施設で3人以上) 利用者100人に対し1人 (施設に1人以上)
薬剤師 利用者150人に対し1人 利用者300人に対し1人
看護職員 利用者6人に対し1人
介護職員 利用者5人に対し1人 利用者6人に対し1人
介護支援専門員 利用者100人に対し1人 (施設に1人以上)
リハビリテーション専門(OT/PT/ST) 適当数
栄養士/管理栄養士 定員100人以上に対し1人
診療放射線技師 適当数 適当数
調理員/事務員等 適当数 適当数

参考:介護医療院 公式ホームページ|厚生労働省

上記のように、Ⅱ型よりもⅠ型の方が、多い人員数が配置されています。Ⅰ型はより医療ケアが重視されているため、薬剤師やリハビリテーション専門職・放射線技師といった専門職が多く配置されているのも特徴です。介護職は、他職種と連携しながら業務に携わることになります。

介護職員の役割と仕事内容

介護医療院の介護職は、一般的な介護施設と同様に、食事や入浴・着替えなどの日常生活の支援や環境整備・レクリエーションの実施などが主な仕事内容です。また、医療従事者との連携を図り、リハビリテーションや医療の補助に至るまで、利用者さんのニーズに応じたサービスを提供するための支援業務もあります。

介護医療院で働く場合、単に身体的な支援にとどまらず、利用者さんを総合的に支える役割があります。そのため、利用者さん一人ひとりの希望に添った生活をサポートすることが求められます。介護医療院は、医療と介護の両方のスキルを生かせる魅力的な職場です。責任は重大ですが、やりがいのある仕事となるでしょう。

4.介護医療院で働くために必要なこと

介護

介護医療院に関わらず、介護施設で働く場合は基本的な介護の知識と技術が求められます。医療と介護の双方を兼ね備えた施設に勤務することで、介護職員は医療や介護に関する知識を広範囲に習得できる機会があるでしょう。とはいえ、基本的な知識として、介護職員初任者研修をはじめとする、研修の受講や資格取得が必要になるかもしれません。また、医療に関する知識を身につけたい場合は、介護福祉士や看護師などの資格取得もおすすめです。ただし、ターミナルケアや看取りは、精神的な負担を感じるかもしれません。

介護医療院で働くことで高度な専門知識やスキルを身につけられる機会を得られ、将来のキャリアやスキルアップに役立つでしょう。また、医師や看護師・リハビリテーション専門職など、他職種と協力し合う必要があるため、コミュニケーション能力が高まり、現場のチーム強化につなげられるようになると考えられます。介護職員は利用者さんの日常生活を豊かにし、その人らしい生活が送れるようにサポートする重要な役割を担っています。そのためには、技術的なスキルアップはもちろん、思いやりと尊重をもって接することが大切です。

まとめ:介護医療院は要介護者が医療ケアと介護を受けられる施設

介護

介護医療院は医療と介護の両方のサービスを統合して提供する施設です。介護医療院にはⅠ型とⅡ型の2種類があり、医療がより必要な人が利用するのか、介護を中心としたサポートが必要な人が利用するのかによって区分されています。ほかの介護施設と比べると、医療と介護のサービスを長期にわたって提供されるのが大きな違いです。介護職員として働くためには、まずは介護職員初任者研修を受講して、基本的な介護知識と技術を学んでおくとよいでしょう。医療職と連携し協働していけば、ターミナルケアや看取りの経験を通じて、高度なスキルを身につけられるのではないでしょうか。

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山本史子(Fumiko Yamamoto)

介護福祉士

デイサービスで約20年現場職員として経験。2007年に介護福祉士の資格を取得。「この施設にいると楽しい、また行きたい」と笑顔で帰ってもらえるデイサービスにしたいという思いで20年間利用者様のケアをしている。知的障害のある自閉症の息子がいるため、介護現場で働きながら、母親の立場から障がい者福祉にも関わっている。

山本史子の執筆・監修記事

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